【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.04.25】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22NM0004
利用課題名 / Title
超伝導ダイヤモンドソースドレインと2DHGダイヤモンドによる超伝導FETの実現
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
カーボン系材料/ Carbon related materials,リソグラフィ/Lithography,膜加工・エッチング/Film processing and Etching,蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,EB,超伝導
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
若林 千幸
所属名 / Affiliation
早稲田大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
橋本裕太郎,竹内雅治,太田康介
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NM-601:電子ビーム描画装置 [ELS-F125]
NM-604:マスクレス露光装置 [DL-1000/NC2P]
NM-609:電子銃型蒸着装置 [ADS-E86]
NM-616:シリコンDRIE装置 [ASE-SRE]
NM-632:ワイヤーボンダー [7476D #2]
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
超伝導ダイヤモンドはNbやAlに代表される他の超伝導材料で課題となる耐酸化性に優れ、堅牢な超伝導材料として注目いる。また、ダイヤモンドは他材料で困難である、同一材料による超伝導体と半導体のハイブリッドデバイスの作製が可能である。そこで、その優れた界面特性を生かして超伝導ダイヤモンド電極から、超伝導体のキャリアであるクーパー対のしみだしをゲート電界よって制御し、半導体中に超伝導電流を誘起する超伝導FETの実現を目指す。超伝導FETは、超伝導量子コンピュータと組み合わせた量子ビットの読み出しを行う古典コンピュータや、超高速、超低消費電力でのFET動作への応用が期待される。超伝導FET実現に向けて、本研究ではまず、チャネル長を65nmまで微細化したFETを作製し、極低温環境(1.6 K)でのFET動作を実証した。
実験 / Experimental
最初に、電極となるボロンドープダイヤモンド成膜用のTi/Auマスク蒸着のために、125kV電子ビーム描画装置と高速マスクレス露光装置により、パターンを形成し、6連自動蒸着装置によってTiを30 nm、Auを50 nm蒸着した。また、この時、125kV電子ビーム描画装置では、レジストとしてPMGI-SF6Sとの二層レジストを使用し、電子のドーズは340µC/cm2とした。また、高速マスクレス露光装置では、レジストとしてLOR5AとAZ MiR802の二層レジストを使用し、ドーズは とした。その後、これをマスクとして、シリコンDRIE装置によって、O2プラズマを用いて75 nmエッチング後に、研究室所有のマイクロ波プラズマ化学気相堆積装置によって、ボロンドープダイヤモンドを150 nm成膜した。マスク除去後、表面全体を水素終端化し、高速マスクレス露光装置にAZ MiR802の単層レジストを用いて素子分離用パターンを形成後、大学所有のO2プラズマリアクターによって酸素終端することで素子分離を行った。そして、大学所有のALD装置によってAl2O3を30 nm堆積後、高速マスクレス露光装置でAZ MiR802の単層レジストにより、電極露出用パターンを形成、TMAH 2.38%により、Al2O3のウェットエッチングを行った。最後に、高速マスクレス露光装置でLOR5AとAZ MiR802の二層レジストを使用し、ゲート電極形成用パターンを形成後、ゲート電極として6連自動蒸着装置によってAlを100 nm蒸着した。
結果と考察 / Results and Discussion
上記の実験の結果、チャネル長LSDを65, 140 nmまで微細化したデバイスの作製に成功した。ボロンドープダイヤモンドを成膜した後のSEM像を図2,3にそれぞれ示す。極低温環境下(1.6 K)FET動作を実証した。LSD = 65 nmの結果を図4に、LSD = 140 nmの結果を図5にそれぞれ示す。しかしながら、超伝導FETの動作実現には至らなかった。この原因として二つ考えられる。一つ目は、超伝導ボロンドープダイヤモンドと半導体ダイヤモンドチャネルの間にエネルギー障壁があり、この障壁の存在によって、超伝導体から半導体へのキャリアのしみだし確率が減少してしまうことが挙げられる。二つ目は、低温での移動度低下である。h-BNをゲート絶縁膜とした水素終端ダイヤモンドでは、150 K以下で移動度が減少している様子が観測されている[1]。これは低温で不純物散乱による影響が顕著となるためである。このため、低温での移動度低下を抑制するために、不純物を低減する必要がある。以上より、チャネルのさらなる微細化及び不純物低減による低温での移動度向上を目指すことによって、超伝導FET実現を目指す。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 デバイス断面図
図2 SEM像(LSD = 65 nm)
図3 SEM像(LSD = 140 nm)
図4 IDS – VDS 特性(LSD = 65 nm)
図5 IDS – VDS 特性(LSD = 140 nm)
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
[1] Y. Sasama,T. Yamaguchi et
al., Nature Electronics 5, 37–44 (2022).
[謝辞]NIMS 微細加工 PF の皆様には実験への助言をいただき大変感謝しております。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 竹内 雅治,若林 千幸,太田 康介,成田 憲人,蔭浦 泰資,高野 義彦,立木 実,大井 修一,有沢 俊一,川原田 洋,“C-Si-Oチャネルと超伝導ソースドレインを用いたダイヤモンドクライオMOSFETの極低温環境下における動作”, 第70回応用物理学会春季学術講演会、ハイブリッド開催(上智大学四谷キャンパス(東京)+オンライン)、2023年3月15日-18日 (口頭, 2022年3月16日)
- C. Wakabayashi, Y. Takahashi, T. Kageura, Y. Takano, M. Tachiki, S. Ooi, S. Arisawa, H. Kawarada,"1.6K Operation of Diamond FETs with Superconducting Diamond Sources and Drains targeting JoFET or SCFET operation", 2022 MRS Fall Meeting &Exhibit, Boston, USA, Nov 27-Dec 2, 2022. (Oral, Nov. 30, 2022)
- C. Wakabayashi, Y. Takahashi, T. Kageura, Y. Takano, M. Tachiki, S. Ooi, S. Arisawa, H. Kawarada, "Low Temperature Operation of 2DHG Diamond FETs with Superconducting Diamond Sources and Drains aiming at JoFET or SCFET operation," 2022 International Conference on Solid State Devices and Materials (SSDM2022), Sept. 26-29, 2022 (Online-Oral, Sep. 27, 2022)
- 竹内雅治, 若林千幸, 高橋泰裕, 太田康介, 蔭浦泰資,高野義彦,立木実,大井修一,有沢俊一, 川原田洋, "近接効果型の超伝導ダイヤモンドFET実現に向けた極低温(1.6 K)動作検証", 第36回 ダイヤモンドシンポジウム, 慶應義塾大学矢上キャンパス(神奈川)(11月18日のみオンライン開催), 2022年11月16日-18日(口頭, 2022年11月17日)
- 竹内雅治, 若林千幸, 高橋泰裕, 太田康介, 蔭浦泰資, 高野義彦, 立木実, 大井修一, 有沢俊一, 川原田洋, "超伝導ソース•ドレイン間のチャネル微細化と極低温(1.6K)でのドレイン電流変調", 第83回 応用物理学会秋季学術講演会, 東北大学 川内北キャンパス(宮城), (口頭, 2022年9月23日)
- 若林千幸, 高橋 泰裕, 太田 康介, 新倉 直弥, 荒井 雅一, 蔭浦 泰資, 高野 義彦, 立木 実, 大井 修一, 有沢 俊一, 川原田 洋, "超伝導ソースドレインを有する2DHGダイヤモンドMOSFETの低温動作", 第69回応用物理学会春季学術講演会, ハイブリッド開催(青山学院大学 相模原キャンパス+オンライン), 2022年3月22日-26日(口頭, 2022年3月25日)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件