利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.18】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NM0012

利用課題名 / Title

金属半導体接合における界面状態の新機能開発

利用した実施機関 / Support Institute

物質・材料研究機構

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions

キーワード / Keywords

蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,スパッタリング/Sputtering,リソグラフィ/Lithography,EB,ナノエレクトロニクスデバイス,量子効果デバイス,原子薄膜,表面・界面・粒界制御,超伝導


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

石黒 亮輔

所属名 / Affiliation

日本女子大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

井上美里,杉崎仁美,松本夏季

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NM-604:マスクレス露光装置 [DL-1000/NC2P]
NM-609:電子銃型蒸着装置 [ADS-E86]
NM-610:電子銃型蒸着装置 [RDEB-1206K]
NM-607:スパッタ装置 [CFS-4EP-LL #3]


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本研究は金属と半導体との接合界面における障壁と界面状態における新機能の開発を目的とする。本研究では、半導体として二硫化モリブデンMoS2やMoTe2等の遷移金属ダイカルコゲナイド層状物質を用いた二次元半導体のほか酸化亜鉛(ZnO)などを用い、金属として常磁性金属であるTi、強磁性金属であるNi、反強磁性金属であるCr、また超伝導物質であるNbやNbNを用い、これらの半導体と金属の間に形成される界面状態の性質を明らかにすること、界面状態と障壁の制御、界面状態と障壁を利用した新規デバイスの開発を目指している。このため本研究では電気二重層トランジスタ構造を持つデバイスを作製し、チャネルにおける電流パスを制限することで、これまでの研究とは異なった視点で界面状態の研究利用を行っている。

実験 / Experimental

本研究では、主に遷移金属ダイカルコゲナイト層状物質を劈開法によって数原子層程度まで薄くた小片をアドレスマークを付けた基板上に転写し、転写された二次元半導体の小片に電子ビームリソグラフィーやフォトリソグラフィーによって電極を形成し、少量のイオン液体を試料上に付着させることで、液体トップゲートをもつ電気二重層トランジスタ構造を作製した。超伝導金属以外は電子ビーム蒸着法を用いたが、超伝導物質であるNbは高融点金属であるためスパッタ法を用い、NbNは反応性スパッタ法により電極形成を行った。作製した試料は同じように作製しても接触抵抗値が3桁以上の違いが出るため、アニールによって接触抵抗の改善を試みた。接触抵抗がある程度改善した試料についてはトップゲート依存性、バックゲート依存性、室温から5K程度までの温度依存性、バイアス電圧依存性等により界面状態と障壁の性質について検証した。また、今回の本施設を利用した試料作製における問題についてここに記す。本試料作成ではグラフェンと同様のスコッチテープ法を用いた劈開法を用いたが、転写前のアドレスマークを付けた基板をクリーニングするアッシャー装置が更新されたことを期に、スコッチテープの糊が基板上に大量に付着し残留するようになり試料作製に対する障害となった。アッシャー装置の仕様上の条件は同じではあるが、装置の更新の他の原因は考えにくい。しかしながら装置を元に戻すことはできないため、劈開法の見直しを行い、スコッチテープにかわる適度な粘着性をもち、糊がシリコン基板上に残留しないテープ等を見つけるためにかなりの試行が必要になった。

結果と考察 / Results and Discussion

二次元半導体としてMoTe2とMoS2、金属としてNi、Cr、Ti、超伝導金属としてNbとNbNを用いた固体バックゲートとイオントップゲートを併用可能な電界効果トランジスタ構造の作製と動作の実証に成功し、またいずれの試料においても界面状態が確認された。この界面状態は半導体側にあり面内伝導性を持つ。金属半導体界面における界面状態は特に面直方向の電気伝導、つまり接触抵抗に関する膨大な研究が有るが面内伝導生も持つことについてはほとんど研究がなく、本研究結果の大きな特徴である。また研究の初期で懸念された、極めて薄いMoTe2上へのNbのスパッタ、NbNの反応性スパッタ成膜の影響はTiなどの電子ビーム蒸着と比較して特に差は見られなかった。これは今後の微細加工プロセスの自由度を広げるという点で意義深い。MoTe2試料のゲート依存性は、NbとNbNどちらのサンプルも両極性動作が確認された。NbとNbNは仕事関数が異なるが電極金属の違いによるMoTe₂チャネルの動作の差は無いと考えられえる。また、これらの試料について、それぞれホール伝導、電子伝導状態で温度変化について調べたところ、どちらの試料も高温における電気伝導は熱電界放出機構の影響が大きく接合抵抗は高い。接合伝導におけるNbやNbNの超伝導の影響を観測するためには、接合抵抗を十分低くし量子トンネル機構による電気伝導を大きくする必要があるが、本研究では十分に低い接合抵抗を実現するまでには至らなかった。ただしアニール効果なども確認されたため、このアニール条件の最適化などを行うことで接触抵抗を改善する可能性がある。 またNi/MoS2接合の電子状態においても、Ti/MoS2接合と同様に「界面状態」と「2種類の障壁」が存在することが示された。この様な接合構造は金属/TMDC接合では一般に共通する性質の可能性がある。また、これまでは接合抵抗を低減するには金属/MoS2接合にあるエネルギー障壁の高さを小さくするためにTiのような仕事関数が小さい金属が選択されていた。しかし接合抵抗を低減するにはエネルギー障壁の高さをあえて高くすることで障壁の幅を狭め、量子トンネリング機構を大きくすることができる可能性を示した。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Natsuki Matsumoto, Aya Hamamoto, Ryosuke Ishiguro, A Small Tunnel Junction and Coulomb Blockade realized by using an Ion-gated MoS2-based Field Effect Transistor, LT29, Poster, 20 August 2022.
  2. Aya Hamamoto, Akira Endo, Shingo Katsumoto, Ryosuke Ishiguro, Measurement of in-plain conductivity of the interface state formed at the junction between metal and multi-layered MoS2, LT29, Poster, 19 August 2022.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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