【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.22】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23BA0031
利用課題名 / Title
ナノ加工を用いたプラズモニックデバイスの作製
利用した実施機関 / Support Institute
筑波大学 / Tsukuba Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
表面プラズモンポラリトン,スパッタリング/ Sputtering,フォトニクス/ Photonics
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
久保 敦
所属名 / Affiliation
筑波大学数理物質系
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
菊池 陽々紀,豊澤 剛,元井 慧,加藤 颯
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
俵 妙,谷川 俊太郎,手塚 陽子,末益 崇,竹中 晴紀
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
BA-003:FIB-SEM
BA-002:スパッタリング装置
BA-008:電界放出型走査電子顕微鏡
BA-019:分光エリプソメータ
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本課題では、フォトニクス分野で近年研究が急速に進展するストラクチャード・ライト(SL)の概念を物質の表面波にあてはめた、構造化表面プラズモンポラリトンを生成・観察するための試料作製を行う。SLは光波の強度や位相、局所偏光状態などがビーム断面内の位置に依存して大きく変化するものを指し、非回折光ビーム、光渦、スキルミオンビーム等、多様な伝搬光モードが含まれる。
このようなSLの一種に、パルス光を光源に用いて生成され、極小サイズのビーム幅を保持する非回折伝搬やパルス形状の伝搬不変性などを特徴とする、space-time (ST)光波束がある。ST光波束はパルスを構成する振動成分毎に特定の波数ベクトルを当てはめて合成した特殊なパルス状態であるが、これをさらに金属表面に照射する事により、ST光波束と同様の物理的性質(非回折伝搬など)を有するST表面プラズモンポラリトン(ST-SPP)波束の生成を試みる。ST-SPP波束は伝搬に伴う波束の回折広がりのない表面プラズモン波束であり、光デバイスにおいて導波路などの微細構造の造り込みを必要としないパルス信号伝送を可能にするものである。本課題では、金(Au)の蒸着膜に微細加工した試料を作製することで、ST-SPP波束の生成・観察を行う。
実験 / Experimental
以下の手順で試料作製を行った。まずシリコンウェハーをカットした基板にBA-002 スパッタリング装置を用いAu/Cr層をスパッタ成膜した。Au膜表面に励起されるST-SPPを可視化するため、試料表面に蛍光薄膜層を形成した。さらに、BA-003 FIB-SEMを用い直線型ナノスリット構造を形成した。蛍光膜層の膜厚の評価はBA-019 分光エリプソメータで行い、スパッタ膜やナノスリット構造の観察・評価にBA-008 電界放出型走査電子顕微鏡を用いた。直線型ナノスリット構造を光照射した場合の応答特性、特に表面プラズモン波への結合効率や屈折現象については時間領域差分(FDTD)法による計算機シミュレーションであらかじめ評価を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
以上の工程で作製した試料に対し、フェムト秒レーザーと4f系により合成したST光波束を照射する実験を行った。ST光波束は直線型ナノスリット部で表面プラズモン波に結合し、Au表面にST-SPPを形成した。今回の実験ではST光波束の光源にスペクトル幅が100nmを超える広帯域のフェムト秒レーザーを用い、すべての振動数(波長)成分に値が一定の横波数を付与することで、光学場強度が横方向にcosine波状に変調された「ストライプ型ST-SPP」を生成した。Au表面のSPP場の空間分布は、試料表面の蛍光膜からの蛍光発光を光学顕微鏡とCCDカメラで検出することで画像化した。顕微像は、5µm幅のピッチで強度変調された多数のSPPビームが、回折広がりにより隣り合うビームと融合することなく、明瞭な強度コントラストを維持したまま伝搬する様子を明らかにした。この結果は、自由空間中を伝搬するST光波束がナノスリット上でSPPモードに結像する際にいわゆるSnellの法則が成立し、伝搬光とSPP波の間でスリット平行方向の波数に保存則が成立することで、ST光波束の有する複雑な振動数-波数関係がST-SPPにそのまま転写されたことにより生じたものと解釈できる。またこの結果は、FDTD法による計算機シミュレーションと無矛盾であった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Naoki Ichiji, Exciting space-time surface plasmon polaritons by irradiating a nanoslit structure, Journal of the Optical Society of America A, 41, 396(2024).
DOI: https://doi.org/10.1364/JOSAA.508044
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Naoki Ichiji, Transverse spin angular momentum of a space-time surface plasmon polariton wave packet, Physical Review A, 107, (2023).
DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevA.107.063517
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 久保 敦, "光の局在性・構造化・スピン" 第8回数理物質系学際セミナー(つくば), 2024年1月25日
- 久保 敦, "ストラクチャード・表面プラズモン波束" 「キラル光物質科学」領域会議 (仙台), 2023年12月4日-5日
- 久保 敦, "ストラクチャード・プラズモン:光の波面整形と表面プラズモンへの転写" 第25回プラズモニック化学シンポジウム(東京), 2023年12月4日-5日
- 久保 敦, 伊知地 直樹, 大上 能悟, Murat Yessenov, Kenneth L. Schepler, Ayman F. Abouraddy, "Transverse spin angular momentum of space-time surface plasmon polaritons" 第84回応用物理学会秋季学術講演会 JSAP-Optica Joint Symposia 2023(熊本), 2023年9月19日-23日
- 久保 敦, "Spin angular momentum and topological property of femtosecond structured surface plasmon polariton" ICP 2023, The 31st International Conference on Photonchemistry (Hokkaido), 2023年7月23日-28日
- 久保 敦, "構造化表面プラズモン波のスピン角運動量とトポロジカルチャージ" トポロジー領域CREST-さきがけ合同セミナー(つくば), 2023年5月30日
- 菊池 陽々紀, 伊知地 直樹, 久保 敦, Murat Yessenov, Kenneth L. Schepler, Ayman F. Abouraddy, "Space-time 表面プラズモンポラリトンの時間分解観察" トポロジー領域CREST-さきがけ合同セミナー(つくば), 2023年5月30日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件