利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.26】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NM0025

利用課題名 / Title

赤外線カメラを用いた微細流路内の沸騰熱伝達の非定常測定

利用した実施機関 / Support Institute

物質・材料研究機構 / NIMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

スッパタリング(スパッタ), 光露光(マスクアライナ), ウェットエッチング, CAD, エネルギー関連技術, 沸騰熱伝達, 赤外線カメラ,リソグラフィ/Lithography,膜加工・エッチング/Film processing and Etching,スパッタリング/Sputtering,赤外・可視・紫外分光/Infrared and UV and visible light spectroscopy,蒸着・成膜/Evaporation and Deposition


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

吉田 雅輝

所属名 / Affiliation

防衛大学校

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NM-607:スパッタ装置 [CFS-4EP-LL #3]


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

冷凍空調機器などの熱交換器では微細流路の流動沸騰が利用されており,機器の性能や信頼性向上のためには,沸騰気泡の挙動に対応した熱伝達変動を定量的に把握することが必要である.今回,赤外線カメラを用いた微細流路内の沸騰熱伝達の非定常測定を目指し,NIMS微細加工プラットフォームの設備を利用してITOの成膜を実施し,作成したサンプル越しに矩形微細流路内の水の沸騰挙動の可視化とITO表面の沸騰熱伝達変動の同時計測ができるかを検証した.

実験 / Experimental

沸騰熱伝達変動を計測するため,赤外線と可視光を透過するフッ化カルシウム(CaF2,φ30mm×t2mm)の片面に,酸化インジウムスズ(ITO,t700nm)をスパッタ成膜したサンプルを作成した.ITOスパッタはAr:13.3sccm,O2:0.7sccm,圧力:0.25Pa,DCパワー:200W の条件で行った.図1に示すように,成膜したITOは可視光を十分に透過し,赤外線をほとんど透過しない(透過率1%以下).そのため,サンプル越しに可視画像の撮影と赤外線カメラによるITO表面の温度変動の計測を行うことができる.さらに,サンプルに成膜したITO膜の形状を流路の形状に合わせるため,ウェットエッチングを行った.サンプルのITO膜面にレジスト(AZ1500,38cp)を成膜(3μm)し,流路の形状(辺長2mm)に合わせたフォトマスクを被せて露光し,現像を行うことで,レジストパターンを作成した.このサンプルをITOエッチング液(ITO-07N)でウェットエッチングすることで,ITOパターンを作成した.サンプルのITO成膜面を流路壁とし,流路の外部からITO膜を通電加熱するため,ITO成膜面から裏面にかけてスパッタでAu電極(t200nm)を成膜した(図1参照).AuスパッタはAr:15sccm,圧力:0.25Pa,DCパワー:200W の条件で行った.図2に実験装置の概要を示す.今回は,平均流速v=0.134m/sの水(脱気した純水)をプレヒータで温度Tpre=102.8℃に加熱することで気体プラグを発生させた.図3に示すように,水平に設置したポリカーボネート製の矩形ミニチャネル(断面2mm×2mm)の下面の一部に作成したサンプルを設置した.サンプルのITO膜を熱流束qin=80.6 kW/m2で通電加熱し,その上面に加熱した水流を通過させた.水流の沸騰挙動を2台の高速度カメラ(2000fps)で真上および斜め下方から撮影し,加熱面(ITO膜)の温度変動を高速度赤外線カメラ(2000fps,0.2mm/pix)で測定した.さらに,赤外線カメラで測定したITO膜の温度分布Tw(x,z,t)を境界条件とした窓材内の三次元非定常伝導解析を行い,加熱面から水流への熱流束qw(x,z,t)を算出した[1].

結果と考察 / Results and Discussion

図4の左図に気体プラグ先頭が通過する瞬間(t=0ms)における気泡の様相および加熱面の熱流束分布qw(x,z,t)を示す.図4の右図には,流路中央で流れ(x)方向に平均した熱流束(qw)xと流路中央における局所熱流束qwの時間変動を示す.(qw)xの時間変動から,気体プラグの通過に伴って周期的な熱流束変動が現れることが確認できた.さらに,局所熱流束qwの時間変動から,気体プラグにより薄液膜が形成されることで熱流束が急上昇することが確認できた.今後は,高速(2000fps)かつ高空間分解(25μm/pixel)な赤外線カメラによる計測を行い,沸騰気泡のどのような挙動が伝熱に寄与するのかをより詳細に明らかにしていく.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1  Sample for boiling experiment (ITO deposited on CaF2).



Fig.2 Schematic of the experimental setup.



Fig.3 Schematic of the test section.



Fig.4  Visualizations (left) and temporal fluctuation of qw (right).


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

謝 辞  本研究の一部は,科研費(No.21K03908)の助成及び文科省「ARIM」(JPMXP1222NM0025)の支援を受けた.
参考文献 [1] 吉田雅輝ほか, 日本冷凍空調学会論文集, 38(2) (2021), 145-153.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Masaki Yoshida, Spatiotemporal resolutions in the measurement of heat transfer fluctuations on a thin film formed on a window material via an optical method, International Journal of Heat and Mass Transfer, 189, 122723(2022).
    DOI: https://doi.org/10.1016/j.ijheatmasstransfer.2022.122723
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 吉田雅輝,山田俊輔,船見祐揮,中村元,伝熱面の熱物性値が沸騰熱伝達計測に及ぼす影響,第59回日本伝熱シンポジウム(2022-5).
  2. M. Yoshida, S. Yamada, Y. Funami and H. Nakamura, Visualization of transient heat transfer by a droplet bouncing on a heated surface via thermography, The 13th Pacific Symposium on Flow Visualization and Image Processing (2022-6).
  3. 吉田雅輝,山田俊輔,船見祐揮,中村元,矩形微細流路における沸騰挙動と熱伝達変動の同時計測の試み,2022年度日本冷凍空調学会年次大会(2022-9).
  4. 吉田雅輝,山田俊輔,船見祐揮,中村元,沸騰による壁温変動の予測に関する基礎的検討,日本機械学会2022年度年次大会(2022-9).
  5. 吉田雅輝,山田俊輔,船見祐揮,中村元,矩形ミニチャネルにおける流動沸騰挙動と熱伝達変動との対応,日本機械学会熱工学コンファレンス2022(2022-10).
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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