利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.18】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22BA0035

利用課題名 / Title

ナノ微細加工を用いたプラズモニック構造の作製

利用した実施機関 / Support Institute

筑波大学 / Tsukuba Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,スパッタリング/Sputtering,膜加工・エッチング/Film processing and Etching,電子顕微鏡/Electron microscopy,集束イオンビーム/Focused ion beam,フォトニクス/ Photonics,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

久保 敦

所属名 / Affiliation

筑波大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

伊知地 直樹,大島 一真,有富 洸人,菊池 陽々紀,加藤 颯,豊澤 剛

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

BA-003:FIB-SEM
BA-002:スパッタリング装置
BA-008:電界放出型走査電子顕微鏡
BA-019:分光エリプソメータ


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

1.金属-誘電体界面の電磁波モードである表面プラズモンポラリトン波は、平坦な金属表面を直接光照射することでは励起できず、グレーティングやスリットなどのナノ構造を金属表面に加工し「光-表面プラズモン結合構造」を形成する必要がある。今回、波形整形したフェムト秒レーザー光を励起光源に用い、金(Au)薄膜にスリットを形成した試料表面に照射することにより、特殊な波面形状を持つ表面プラズモン波の励起を試みた。
2.金属膜表面に、表面プラズモンの波長と同程度の周期でナノ構造を配列することにより、表面プラズモン波の持ち得る波数・振動数の関係がバンド構造を形成する「プラズモニック結晶」が作製できる。今回、金(Au)薄膜表面にナノスケールのAuプリズム構造を配列した「Auプラズモニック結晶」を作製し、光照射に伴って表面に励起される表面プラズモン場の観察を試みた。

実験 / Experimental

1.Au薄膜の作製は、Siウェハーから切り出したチップ基板上にスパッタリング装置を用いてCr接着層およびAu層を連続して堆積させることにより行った。次に集束イオンビーム(FIB)装置を用い、Au膜堆積チップに長さ~500 µmのスリットをエッチング形成した。この試料に対し、フェムト秒レーザーパルスのパルス整形技術を用いて生成した構造化光パルスの一種である「space-time(ST)光波束」を照射することで、スリット構造を起点としてAu表面を伝搬する構造化された表面プラズモンである「ST表面プラズモンポラリトン」を励起した。
2.Au薄膜表面にナノスケールのAuプリズム構造が三角格子状に配列された「Auプラズモニック結晶」を、電子ビームリソグラフィー法を用いて作製した。試料の仕上がり具合や形状の詳細は走査型電子顕微鏡による観察で評価した。試料表面にフェムト秒レーザーを照射して励起される表面プラズモン場の空間構造を、光電子顕微鏡を用いて顕微的に可視化した。

結果と考察 / Results and Discussion

1.ST表面プラズモンの一種である、細線化した多数のビーム状に整形された「ストライプ型表面プラズモン」を励起し、Au表面における電場分布形状を顕微的に画像化することに成功した(Fig. 1)。この成果は、光パルスの振動数成分毎の波数ベクトルの精密制御を特徴とするST光波束を励起光源に用いることで、空間伝搬に伴う回折広がりが抑止されたST光パルスと同様の伝搬特性を有する構造化表面プラズモンである、「ST表面プラズモンポラリトン」の生成が実際に可能であることを示したものである。
2.Auプラズモニック結晶に対し波長可変フェムト秒レーザーの出力パルスを入射し、試料表面から放出される光電子の空間分布を光電子顕微鏡により顕微的に観察した。光電子の放出強度には照射レーザーパルス波長への依存性が観測され、FDTD法によるプラズモニックバンド構造との比較により、バンド構造との対応関係が認められる結果を得た。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 ナノスリットを形成した金(Au)薄膜のSEM像(左)、および、Au薄膜に励起したストライプ型ST-SPPの顕微像(右)


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Naoki Ichiji, Observation of Ultrabroadband Striped Space-Time Surface Plasmon Polaritons, ACS Photonics, 10, 374-382(2023).
    DOI: 10.1021/acsphotonics.2c00296
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 有富 洸人, 久保敦, 福本恵紀, Chen-Bin Huang, "単一指向性・波長依存性を有する伝搬型表面プラズモンビームの生成" 2023年第70回応用物理学会春季学術講演会, 2023年3月15日-18日
  2. 伊知地直樹, 菊池陽々紀, Murat Yessenov, Kenneth L. Schepler, Ayman F. Abouraddy, 久保敦, "Space-time SPP 波束の時間分解観測" 2023年第70回応用物理学会春季学術講演会, 2023年3月15日-18日
  3. 久保敦, "表面プラズモン波のスピン、トポロジー、構造化" 日本光学会 ナノオプティクス研究グループ 第29回研究討論会, 2023年1月30日
  4. 大島一真, 久保敦, 福本恵紀, "フェムト秒レーザー励起PEEMによるAuプラズモニック結晶の観察" 2022年第83回応用物理学会秋季学術講演会, 2022年9月20日-23日
  5. 菊池陽々紀, 伊知地直樹, Murat Yessenov, Kenneth L. Schepler, Ayman F. Abouraddy, 久保敦, "Space-time SPPの顕微観察と光学系開発" 2022年第83回応用物理学会秋季学術講演会, 2022年9月20日-23日
  6. 伊知地直樹, 菊池陽々紀, Murat Yessenov, Kenneth L. Schepler, Ayman F. Abouraddy, 久保敦, "Diffraction free space-time SPP waveの励起及び観測" 2022年第83回応用物理学会秋季学術講演会, 2022年9月20日-23日
  7. 伊知地直樹, 菊池陽々紀, Murat Yessenov, Kenneth L. Schepler, Ayman F. Abouraddy, 久保敦, "Excitation and observation of the striped space-time surface plasmon polaritons" The 13th Asia-Pacific Conference on Near-Field Optics (APNFO13), 2022年7月29日-31日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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