【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22BA0021
利用課題名 / Title
TEM/AFMを用いた超高速計測技術の研究
利用した実施機関 / Support Institute
筑波大学 / Tsukuba Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
CVD,PVD,リソグラフィ/Lithography,EB,膜加工・エッチング/Film processing and Etching,電子顕微鏡/Electron microscopy,イオンミリング/Ion milling,集束イオンビーム/Focused ion beam
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
藤田 淳一
所属名 / Affiliation
筑波大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
鄭 サミュエル,楊港 YANG GANG,赤田 圭史,LI ZHIKAI,岸部 義也,榊 優樹,東谷 圭祐,井上 寛隆
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
BA-002:スパッタリング装置
BA-004:電子線蒸着装置
BA-005:電子線描画装置
BA-009:パターン投影リソグラフィシステム
BA-011:微細パターン形成装置群(スピンコーター、マスクアライナー)
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
AFM/TEMを用いた表面プラズモン現象などの高速現象可視化に向けた研究に取り組んでいる。試料として用いる表面プラズモン共鳴デバイス作製を行うために、筑波大学の設備を利用した。表面プラズモン共鳴を誘起するためには、照射する光の波長程度の長さを持つ周期構造が必要とされる。本課題では、電子線リソグラフィ、スパッタ装置、電子線蒸着装置などを用いてナノメートル~マイクロメートルスケールの周期的な構造を加工した。作製したデバイスを用いて光学特性を評価した結果、表面プラズモン共鳴(SPR)による光学特性の向上を確認した。
実験 / Experimental
石英ガラス板を基板として、蒸着装置を用いてチタン10 nm、金50 nmを堆積させた。その後、スピンコーターを用いて電子線レジスト(ZEP520A)を塗布した。電子線リソグラフィ装置を用いて、ブルズアイパターンとして知られる光アンテナ構造を作製した。本課題においては、中央に直径500 nmの穴があり、その周辺に同心円状に幅500 nmのリングが1 μm周期で連なる構造を設計し作製した。このとき、近接効果を補正するために、電子線ドーズ量の異なる2領域を設定し、ドーズ量を最適化し描画を行った。電子線描画後にはキシレンとIPA溶液を用いて現像した。その後、電子線蒸着装置を用いて、金を50 nm厚堆積させたのち、アセトンによるリフトオフを行いレジストを除去した。加工したデバイスをSPRデバイスとして、本研究室が所有する光学顕微鏡を用いた集光特性及び、分光光度計を用いた光学特性を取得した。集光特性は、SPRデバイスの背面から光を照射した際に、表面における共鳴光集光について光学顕微鏡像の明度から解析した。分光光度計を用いてSPRデバイスと、平坦なデバイスにおける光吸収特性を評価した。
結果と考察 / Results and Discussion
実際に設計したSPRデバイスをFig. 1(a)に作製したデバイスのSEM像をFig. 1(b-c)に示す。全領域にわたって同じ電子線ドーズ量で描画を行った場合、中央穴の領域が近接効果によってつぶれてしまう(Fig. 1(b))。そこで、デバイスの中央穴領域(Fig. 1(a)中の赤い領域)と、その他の領域(Fig. 1(a)中の青い領域)でドーズ量を変調し、設計通りの加工精度が得られるように最適化を行った。その結果、中央部は50 μC/cm2周辺部は、50 μC/cm2のドーズ量のとき、パターンの加工精度が高いことがわかった(Fig. 1(c))。この時の加工精度は設計値に対して±20 nm程度であった。このように、近接効果を補正しすることで、任意の設計パターンを正確に描画できた。
本課題において作製したSPRデバイスの穴の直径(200 nm ~ 800 nm)に依存した光の集光特性をFig. 2に示す。SPRデバイスでは、照射光の波数を、リング部の回折格子波数を組み合わせて表面プラズモンの分散関係を一致させる。すると、照射光と表面プラズモンがカップリングし表面プラズモン共鳴が誘起される。生成された表面プラズモンがパターン上を伝搬していき、中央部の穴の領域で強く共鳴しあうことで強い光輻射を発生する。まず、中央穴がない場合は中央部に光は集光しない。一方、中央穴が存在する場合は穴の領域で強い光輻射が観測された。穴の直径を800 nmから500 nmに変化させるにつれ中央穴の集光度は増加するが、中央穴の直径が500 nm未満に減少すると、集光度は低下した。集光度が最大になるのは、中央穴が直径500 nmのときで、このとき、一番外側のリング領域の明るさに比べ、中央穴領域では3倍以上明るい領域が現れた。中央穴の直径を500 nmとして、5 mm四方にFig.
1aのSPR構造を敷き詰めたデバイスを作製し、分光光度計を用いて光吸収特性を調べた結果をFig. 3に示す。平坦デバイスと比較してSPRデバイスは可視光領域全般に割って吸収特性が増加していることがわかった。これは、表面プラズモン共鳴によって、SPRデバイスの方に照射光のエネルギーがより効率的に吸収された結果であると考えられる。
以上の結果から、電子線リソグラフィ装置を用いたサブマイクロスケールのデバイス加工によって、表面プラズモン共鳴を誘起することに成功した。本手法を発展させ表面プラズモン導波路を作りこみ、AFMやTEMを用いて表面プラズモン伝搬過程の可視化に向けて本研究室の装置開発を進めている。また、SPRデバイスによる光吸収特性の向上は可視光を用いた光触媒反応への応用が可能と考えている。実際に、本研究室ではSPRデバイスを用いて可視光光触媒反応を実証しており、エネルギー変換デバイスとしての発展も期待される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 (a)設計した作製したパターンデバイスと、(b)(c)実際に作製したSPRデバイスのSEM像。(b)中央穴とリング部を同じドーズ量(70 μC/cm2)でドーズした結果、(c)中央穴を50μC/cm2、周辺リング部を60 μC/cm2となるようにドーズ量を最適化した結果。図中のスケールバーはすべて1 μm。
Fig. 2 SPRデバイスの集光特性評価。上段が実際の光顕像で、下段が中央穴を横断する領域の明度プロファイル。
Fig. 3 分光光度計を用いた光吸収特性。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
筑波大学マテリアル先端リサーチインフラの谷川俊太郎様、筑波大学神田研究室友利ひかり助教に感謝します。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 楊 港、 鄭 サムエル、 嵐田 雄介、 赤田 圭史、 伊藤 良一、 藤田 淳一 “[22p-A101-9] 表面プラズモン共鳴デバイスを用いた近接場光による光触媒反応”第83回応用物理学会秋季学術講演会, 令和4年9月22日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件