利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.25】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23RO0005

利用課題名 / Title

Bone-BBB (blood-brain barrier)連関マイクロ流体デバイスの作製:マイクロ流体デバイスを用いたblood-brain barrierの新規作製

利用した実施機関 / Support Institute

広島大学 / Hiroshima Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

SU-8レジスト,膜加工・処理,PDMS調合,熱処理,プラズマ処理,形状・形態観察,分析,接合,流路デバイス/ Fluidec Device,細胞培養デバイス/ Cell Culture Device


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

吉本 哲也

所属名 / Affiliation

広島大学病院 口腔検査センター

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

黒木 伸一郎,岡田 和志,水野 恭司

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

RO-131:レイアウト設計ツール
RO-113: マスクレス露光装置
RO-121:スピンコータ
RO-602:PDMS加工装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

口腔の機能が低下すると, 認知機能に影響を与えることは広く認識されている。しかし, その実態や分子制御機構について明確な解答は得られていない。本研究では, 顎骨組織が口腔内機械受容性感覚の主体であると考え, 骨組織と認知機能には重要なネットワークがあるのではないかと仮説を立てた。しかしながら, マウス等を用いたin vivo研究では, 全身が複雑に関連するため骨組織と脳との連関を直接観察することは難しい。また従来の2D細胞培養を用いた研究では, 生体と大きくギャップがある。そこで, マイクロ流体デバイスを用いた研究を実現するため, 広島大学ARIM支援室に提案したデバイスの作製を依頼した。具体的には, 本共同研究において, 骨組織が脳ニューロンに与える影響に着目し, これまでに確立されていない新規Bone-BBB(blood-brain barrier, 血液脳関門)連関流体デバイスの確立を目指した。

実験 / Experimental

【実験方法】広島大学ARIM支援室にて, 血液脳関門を再現する2層流路マイクロ流体デバイス作製のフローチャートを確立した。まずマスクレス露光装置を用いて4インチSi基板にSU-8レジスト (エポキシ厚膜レジスト) を塗布後、リソグラフィーにて2層流路用の鋳型(上層, 下層)を作製したのち, スピンコータにて離型材を塗布した(図A)。作製した鋳型にPDMS調合液(主剤:硬化剤を10:1あるいは14:1)を自・公転ミキサーにより撹拌(20秒)脱泡(20秒)し, 真空吸引機にて脱気後, 加熱処理により硬化させた(80℃, 1時間)。硬化したPDMSブロックはPDMS加工装置により上層, 下層それぞれ切り出された。PDMS下層ブロックは, クリーニングのため卓上真空プラズマ装置によりプラズマ照射されたのち, スライドガラスと加熱接着された(PDMS下層ブロック−スライドガラスユニット)。上層ブロックは, まずインレット・アウトレットチューブ装着のため穴あけ治具により加工された。メンブレンフィルターはSterlitech社製のPolycarbonate Membrane Filters (0.4 Micron, 13 mm, PCT0413100)を用いた。まずメンブレンを卓上真空プラズマ装置によりプラズマ照射したのち, 1.5%APTES (3-Aminopropyltriethoxysilane)希釈液に浸漬することでカップリング処理した。メンブレンを上層ブロックに静置した後, 張り合わせ装置によりPDMS下層ブロック−スライドガラスユニットと加熱接着させた。インレット, アウトレット加工部にチューブの装着を行い, 目的とするメンブレンフィルター内蔵2層流路デバイスの完成とした(右図B)。完成したデバイスの形状を確認した。デバイスの機能的な検証を行うため, デバイスを申請者研究室へ持ち帰り, 上層に赤インク, また下層に青インクを流し込んだ。液漏れ等の損傷がないことを確認したのち, 実際の細胞培養を実施した。  

結果と考察 / Results and Discussion

計画していたデバイスの作製は大きな問題なく達成された。上層流路と下層流路の平行性を確認したところ, 約10mm長の距離を50 μm程度の平行度での貼り付けを可能にした(図2)。メンブレンフィルターを中間層に配置するため, フィルター厚の10 μmの段差が生じ, フィルター外周付近に未接着の部分が生じることが判明した。この隙間は毛細管現象により液漏れが予測される。対応策として, 適度な量のPDMSを中間に流すことで解決した。次に, 上層に赤インク, また下層に青インクを流し込むことで機能的な検証を行ったところ大きな液漏れ等の問題はないことが確認された(図3)。このデバイスを用いて実際に細胞培養ができるか検討した。ヒト由来の線維芽細胞を用いて,デバイス内に播種し,24時間後に確認したところ少量の細胞接着にとどまっていた。
以上の結果から, 計画していた形状・機能性を持つデバイスが作製できたと考える。今後は, 更なる培養の確立を目指し, デバイス表面にコラーゲンあるいはフィブロネクチンをコーティングしたのち培養を行う。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1



(図2)上層と下層流路の拡大図



(図3)上層:赤インク, 下層:青インク


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究の遂行にあたり, 共同研究者として終始多大なご指導を賜った広島大学ナノデバイス研究所黒木伸一郎教授に深謝致します。また同研究所ARIM支援室の先生皆様方には, 本研究の遂行にあたり適切なご助言, ご協力頂きました。ここに感謝の意を表します


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 第2回革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル領域シンポジウム(東京)2024年1月23日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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