利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23NU0252

利用課題名 / Title

トンネル接合の作製およびナノ物質成長制御

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

リソグラフィ/ Lithography,光リソグラフィ/ Photolithgraphy,電子顕微鏡/ Electronic microscope,トポロジカル量子物質/ Topological quantum matter,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,超伝導/ Superconductivity,センサ/ Sensor,スピントロニクスデバイス/ Spintronics device,量子効果デバイス/ Quantum effect device


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

柏谷 聡

所属名 / Affiliation

名古屋大学大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

矢野 力三,谷口 晴香,林 時温,角谷 郁,奥田 大貴

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-231:マスクレス露光装置
NU-223:フォトリソグラフィ装置群
NU-227:走査型電子顕微鏡
NU-261:段差計
NU-226:RIEエッチング装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

トポロジカル絶縁体は表面に質量をもたない高易動度の電子が存在し、その表面状態を使った電子機能の解明や活用にこの10年精力的に研究がされてきた。さらにその特異な表面状態に超伝導電流と流すと通常では発現しないような超伝導状態が出現し、マヨラナ粒子などの未確認粒子が出現すると期待されている。本研究ではそのような特異な超伝導状態の解明や活用を目指し、トポロジカル絶縁体の超伝導接合の作製と評価を行っている。超伝導接合は物質と超伝導体の界面制御が重要であり、特異な超伝導状態の発現や測定に適した接合の作製プロセスを確立が不可欠である。本研究ではトポロジカル絶縁体の中でも磁性をもつと期待されるトポロジカル物質に着目し、接合プロセスの確立を試みた。バルク単結晶の微小結晶を基板上にへき開塗布し、フォトリソグラフィーを用いて超伝導電極を作製した。今回、まずはバルクの磁性トポロジカル物質の特性を反映した輸送特性の観測ができることを確認できたため、今後の超伝導特性の評価を行っていく予定である。

実験 / Experimental

磁性をもつと期待されるトポロジカル絶縁体としてFe-doped BiSbTe2Se(Fe-BSTS)[1]のバルク単結晶を使用し、Si基板上にへき開して微小結晶を固定した。そこへフォトリソグラフィー技術を用いて電極を作製した。昨年度までは電極材料としてAuを使用していたが、超伝導接合を見越して今回は低温で超伝導になるNbを選択した。得られたNb/Fe-BSTS接合をまずは4端子測定でバルク結晶の特性が大きく変化していないかの確認を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

得られた接合は図1(a)中にあるように4端子測定で縦抵抗とホール抵抗を同時測定できるような電極配置にした。抵抗の温度依存性を見ると、高温部では降温に伴って抵抗が増大する半導体的振る舞いである一方、低温では抵抗率が減少する金属的振る舞いへと変化している(図1(a))。これはトポロジカル絶縁体の典型的な特徴(バルク(物質の中身)は半導体で表面が金属的に高易動度な電子が存在しているという特徴)を反映しているものと解釈できる。似たような振る舞いはバルク結晶を測定したときにも表れている[1]。抵抗率値そのものは剝片化した今回の結晶のほうが小さくなっている。これは薄い結晶にするほど表面の寄与率が高くなるためで抵抗率にすると小さくなることを反映しており、電極がAuの時と同様な結果となっている[2]。抵抗率の磁場依存性を見ると、高温では典型的な放物線的な振る舞いであるのに対して低温ではカスプ状の鋭い変化となっている(図1(b)。これは表面状態由来の弱反局在という現象で、バルクのFe-BSTSと同様の振る舞いである[1]。したがって、今回確立した作製プロセス中に結晶特性を大きく劣化させるような問題は生じていないことが分かった。今後はこの超伝導電極界面で表面状態を反映した特異な超伝導状態が発現していないかを検証していく。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 (a) Fe-BSTSの抵抗率の温度依存性. 内挿図は作製したFe-BSTS/Nb接合の写真. (b) 各温度における磁気抵抗率の磁場依存性.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] R. Yano et al., Journal of Physical Chemistry Letters 12, 4180-4186 (2021).   
[2] Tsuyoshi Tanda, Rikizo Yano, et al., JPS Conf. Proc. 38, 011180 (2023). 


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Tsuyoshi Tanda, Transport Properties of Magnetically Doped Topological Insulator Fe-BiSbTe2Se, Proceedings of the 29th International Conference on Low Temperature Physics (LT29), , (2023).
    DOI: doi.org/10.7566/JPSCP.38.011180
  2. Naoki Matsubara, Two-Band Model and Point Contact Spectroscopy of Nodal-Line Semimetal CaAg0.9Pd0.1P, Proceedings of the 29th International Conference on Low Temperature Physics (LT29), , (2023).
    DOI: doi.org/10.7566/JPSCP.38.011028
  3. Hironori Teshima, Andreev Bound States and Doppler Shift in La1.85Sr0.15CuO4/Au Junctions, Proceedings of the 29th International Conference on Low Temperature Physics (LT29), , (2023).
    DOI: doi.org/10.7566/JPSCP.38.011041
  4. Rikizo Yano, Evidence of unconventional superconductivity on the surface of the nodal semimetal CaAg1−xPdxP, Nature Communications, 14, (2023).
    DOI: doi.org/10.1038/s41467-023-42535-5
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 矢野力三, “磁性体単結晶に着目した新奇電子機能の開拓”, 2023年度NFRW・応用物理学会東海地区若手チャプターWS(静岡), 招待講演6,令和5年10月20日
  2. 岩瀬 勝彦, 田口 勝久, 柏谷 聡, 矢野 力三, “Co2MnGaの異常ホール効果の結晶作製条件依存性”, 第84回応用物理学会秋季学術講演会(熊本), 22a-P01-16, 令和5年9月22日
  3. 矢野力三, 高橋智紀, 奥田大貴, 谷口晴香, 笹川崇男, 柏谷聡, ” 擬一次元構造を持つ遷移金属カルコゲナイドの単結晶育成と物性評価”, 日本物理学会 第78回2023年次大会(宮城), 19aA404-10, 令和5年9月19日
  4. 反田剛, 矢野力三, ○谷口晴香, 林時温, 中河西翔, 廣瀬陽代, 笹川崇男, 柏谷聡,” トポロジカル絶縁体FeドープBiSbTe2Seの磁場中輸送特性と表面電子状態”, 日本物理学会 第78回2023年次大会(宮城), 18aA202-9, 令和5年9月18日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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