利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NM0026

利用課題名 / Title

ポリロタキサン誘導体の合成確認と反応条件の適正化

利用した実施機関 / Support Institute

物質・材料研究機構 / NIMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials

キーワード / Keywords

核磁気共鳴/Nuclear magnetic resonance,バイオアダプティブ材料,細胞・組織再生誘導材料,ウエアラブルデバイス,コンポジット材料


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

窪田 陸

所属名 / Affiliation

株式会社高研

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

該当者なし

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

該当者なし

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NM-001:NMR


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

生体高分子を主成分とするバイオマテリアルの強靭化·柔軟化は、組織再生が可能な医療足場材料などへの応用が期待される。ポリロタキサン (PR) は、直鎖状ポリエーテル及びシクロデキストリン (CD) からなる高分子であり、そのSlide-ring特性により材料の強度·柔軟性が向上することが知られている [Ref.1]。 コラーゲンは生体親和性の高いタンパク質であり、これまでにゲル·薄膜状態におけるPR架橋が試行されてきた。しかし、腱などの強靭かつしなやかな臓器の再生医療を実現するためには、コラーゲン糸に対するPR架橋も重要課題と言える。本研究ではアルデヒド基を架橋点とするPRを合成し、還元的アミノ化により作製したPR強化型コラーゲン糸 (Col-PRβCD1) の力学特性を評価した (Fig.1)。

実験 / Experimental

ポリプロピレングリコール及びβCDからなるpseudo-PRをトリアジン誘導体でキャッピングし、次いでニトロキシラジカル酸化剤と反応させることでPRβCD1を合成した。Col-PRβCD1の作製では、まずコラーゲン溶液を中性化処理し、脱泡後、37°Cリン酸緩衝液 (pH 7) に押出した。次に、コラーゲン糸を弱塩基性緩衝液に浸漬させPRβCD1を添加後、還元剤 (NaBH3CN) 存在下37°Cで振とうした。最後に、糸の表面を洗浄し、自然乾燥後に枠体へ固定化することでCol-PRβCD1を作製した。作製した糸の力学特性は、島津マイクロオートグラフにより評価した。

結果と考察 / Results and Discussion

1次元NMR測定より、PRβCD1 1本当たりのβCD分子数は約25個と見積もられた。2次元NMR測定では、βCDとポリプロピレングリコール鎖との間に負のNOE相関が観測されたことから、PRβCD1合成が支持された。作製したCol-PRβCD1の力学特性を評価した結果をFig.2に示す。比較対照には、汎用的なタンパク質架橋剤であるグルタルアルデヒドで処理したコラーゲン糸 (Col-GA) を用いた。Col-GAは、未架橋糸 (Col alone) よりも破断応力が有意に上昇したが (Fig. 2a,b)、破断ひずみは低下した (Fig. 2a,c)。興味深いことに、Col-PRβCD1はCol aloneと比較して、破断応力・ひずみが共に上昇した (Fig.2a-c)。即ち、Slide-ring特性を有するPRβCD1の架橋によりコラーゲン糸の強度·柔軟性を共に高めることに成功した。本研究は、強靭性及び柔軟性を兼ね備えるバイオマテリアルの再生医療応用へ向けた足掛かりなると期待される[Ref.2]。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1 Molecular design of the novel PR composed of polypropylene glycol (Mn: 4,000) and βCD (PRβCD1) for the PRβCD1-reinforced collagen thread.



Fig.2 Mechanical properties of the fabricated collagen threads. (a) Representative stress-strain curves, (b) average fracture stress (kPa) and (c) average fracture strain (%). **p < 0.01 (Tukey’s test)


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[Ref. 1] J. Araki and K. Ito, Soft. Mater., 2007, 3, 1456-1473. [Ref. 2] R. Kubota et al., React. Funct. Polym., 2023, 182, 105462. 【謝辞】本研究を遂行するにあたりNMR測定でご協力頂きました(国研)物質材料研究機構ナノテクノロジー融合ステーション ナノバイオグループ服部晋也様にこの場をかりて厚く御礼申し上げます。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Riku Kubota, Synthesis of a stretchable polymer crosslinker for reinforced atelocollagen threads, Reactive and Functional Polymers, 182, 105462(2023).
    DOI: https://doi.org/10.1016/j.reactfunctpolym.2022.105462
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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