利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22HK0045

利用課題名 / Title

水-岩石相互作用における鉱物の化学組成と結晶構造の変化

利用した実施機関 / Support Institute

北海道大学 / Hokkaido Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/Electron microscopy,イオンミリング/Ion milling,集束イオンビーム/Focused ion beam,電子回折/Electron diffraction,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,資源循環技術/ Resource circulation technology,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,資源循環技術/ Resource circulation technology


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

菊池 亮佑

所属名 / Affiliation

北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門資源循環工学分野 環境地質学研究室

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

西木悠人,Chaerun Raudhatul Islam,Pramesti Prihutami,松川春樹

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

鈴木啓太,大多亮,原田真吾,内田悠,澤厚貴,遠堂敬史,王永明

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

HK-101:ダブル球面収差補正走査透過型電子顕微鏡
HK-201:X線光電子分光装置
HK-202:オージェ電子分光装置
HK-301:環境セル対応透過電子顕微鏡
HK-302:電界放出形走査電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

岩石中に記録された水―岩石相互作用の痕跡を明らかにするために、国内外の各地の岩石および反応を模擬した室内実験後の試料を対象に、鉱物相・元素分布・化学組成・化学状態を調べた。

実験 / Experimental

岩石薄片あるいは研磨片の表面をFE-EPMAによって観察し、鉱物(磁鉄鉱・火山ガラス・粘土鉱物など)の化学組成の定量および粒子間・粒子内での元素分布を調べた。また、乾式研磨された粘土岩の薄片表面をクライオクロスイオンポリッシャ(CCP)によって研磨時のダメージ層を取り除いた上で、オージェ分光装置で観察し、EBSDパターンによるSiO2相の多形の識別を行った。XPS装置を用いて、ジオポリマー中に取り込まれたHgおよびCdの化学状態を分析した。さらに、岩石中から数μmサイズの標的鉱物をFIB-SEM(JIB-4600F/HKD)を用いてピンポイントで薄膜試料に加工し、TEM(JEM-2010)およびSTEM(Titan G2)を用いて透過像・HAADF像・制限視野電子回折像を撮影、EDSによる元素分布・化学組成の定量評価を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

図1に粘土岩中に含まれるSiO2相から得られたEBSDパターンを示す。CCPでの加工条件と加速電圧によって得られたパターンの鮮明度が変化していく様子が確認できる。100 μm程度の粗大な石英粒子から得られたEBSDパターンについてはCCPによる鉱物表面のダメージ層の除去を十分に行うことで鮮明さが向上し、石英 >> クリストバライト・トリディマイトの妥当な識別結果を得ることが可能となった。一方で、粘土岩中に同時に含まれる数μmサイズのSiO2粒子についてはパターンの鮮明さが足りず、信頼できない識別結果に留まった。乾式研磨の最終過程における研磨方法やCCPによる仕上げ加工の条件の最適化が安定したEBSDパターンの取得とSiO2微粒子の多形の定量化のためには必要だと考えられる。図2にオフィオライト由来の高pH(~11)地下水による変質を被った火山ガラスのFIB-SEMおよびSTEMによる観察事例を示す。樹脂包埋・乾式研磨された火山砕屑物を含む堆積物の表面に見られる、バブルウォール状の特徴的な形状を示す火山ガラスとその周囲に生じた二次鉱物をFIB-SEMによってマイクロサンプリングし、薄膜化、TEMおよびSTEMによって二次鉱物の鉱物組成や化学組成、ガラス界面近傍の元素分布を明らかにした。ガラス界面近傍ではアルカリ元素の溶脱を示すプロファイルは確認できず、界面のおける調和的溶解と、溶出元素と周囲の超苦鉄質堆積物から供給されるMgやFeによってスメクタイトが二次鉱物として形成していることが確認された。約4000年に渡る高pH地下水との反応を経てもガラス界面は比較的よく保存され、ガラス周囲に形成する膨潤性粘土鉱物が保護膜として機能することで溶解速度が抑制されることが示唆された。 その他、インドネシアのニッケル(Ni)ラテライト鉱床でのNi濃集に寄与する風化生成物、特にスメクタイトの化学組成・鉱物学的特性を明らかにした。ジオポリマー中の元素分布をEPMAで明らかにし, セシウムの固定化やジオポリマー固化メカニズムの解明を行った。また、HgやCdを固化中に添加したジオポリマーについてXPSによる化学状態分析を行った。Hg, Cdを0.05wt%添加した試料では濃度が低く、無添加のジオポリマーとのXPSスペクトルの差が確認出来なかったが、3wt%添加した試料ではHg2+、Cd2+の状態でジオポリマー中に存在することが分かった。酸性鉱山廃水から生じる微細な沈殿物を観察し、鉄水酸化物のコロイド粒子の産状や微生物が関わっていると思われる鉱物形成を観察することができた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1. CCPでの表面加工条件および加速電圧によるEBSDパターンの鮮明性変化 (上段)CCPでの加工条件 [加速電圧4 kV_照射時間15 min_照射角度70 deg] でのEBSDパターン。それぞれ加速電圧が10 kV (a)、20 kV (b)、25 kV (c)で測定。(下段)加工条件 [4 kV_8 h_85 deg] でのEBSDパターン。それぞれ加速電圧が25 kV (d, e)、30 kV (f)で測定。



図2. アルカリ変質を受けた火山ガラス粒子のマイクロサンプリング及びSTEM観察 (a) 堆積物中のバブルウォール状の火山ガラス粒子のSEM組成像とマイクロサンプリング位置 (b) FIB-SEMで切り出したガラス界面の薄膜化作業 (c) ガラス表面に形成している層状ケイ酸塩鉱物のHAADF像


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

・科学研究費助成事業(JSPS, 19H00878)・ニアフィールド評価確証技術開発 (METI, Grant Number: JPJ007597).・TRU廃棄物処理・処分技術高度化開発 (METI, Grant Number: JPJ007597)・英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業 (JAEA, Grant Number: JPJA19F19211936)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 大矢 裕介, CHAERUN Islam, 山田 裕久, 工藤 勇, 黒木 竜海, 関根 伸行, 谷口 雅弘, 菊池 亮佑, 大竹 翼, 佐藤 努、”溶融飛灰をバインダーとして用いたアルカリ刺激固型化体の作製とその設計”、JpGU 2022(国内)、令和4年5月31日
  2. 杉浦 遼平, 大竹 翼, 大友 陽子, 佐藤 努, SHIN Ki-Cheol、”南アフリカ・バーバトン緑色岩帯ムーディーズ縞状鉄鉱層における鉄とマグネシウムの地球化学的挙動”、JpGU 2022(国内)、令和4年6月2日
  3. 大友 陽子, 松居 達也, チカンダ フランセス, セレイロイス タム, 大竹 翼, 佐藤 努、”Iron precipitation and associated microbial activities in acid mine drainages of Ainai and Shojin river mine”、JpGU 2022(国内)、令和4年6月2日
  4. 松川 春樹, 大友陽子, 大竹 翼 ,昆 慶明, 佐藤 努 ,掛川 武 、”南アフリカ・ムーディーズ層群中の縞状鉄鉱層に産する磁鉄鉱の微量元素組成”、第71回資源地質学会年会講演会(国内)、令和4年6月30日
  5. D. V. Sari, T. Otake, R. Kikuchi, T. Sato, and G. Cock、”Mineralogical and geochemical characteristics of weathering profiles at Weda Bay Nickel laterite deposit, Halmahera, Indonesia”、第71回資源地質学会年会講演会(国内)、令和4年6月30日
  6. 野並 亨祐, 大竹 翼, 相川 公政, 伊藤 真由美, 佐藤 努 、”海底熱水鉱床鉱石に含まれる易溶性鉱物:Hakureiサイトとごんどうサイトの比較”、第71回資源地質学会年会講演会(国内)、令和4年6月30日
  7. 鈴木 覚, 後藤 考裕, 佐藤 努, 菊池 亮佑, 藤村 竜也, 大竹 翼, Patrik Sellin, Daniel Svensson, H. Albert Glig, Ulf B. Andersson, Raphael Schneeberger, Olivier X. Leupin, Simon Norris, W. Russell、”キルナ鉱山におけるベントナイトのナチュラルアナログ国際共同研究について”、第65回粘土科学討論会(国内)、令和4年9月8日
  8. Samuel Abebe, Ryugo Kaneda, Yuto Nishiki, Ryosuke Kikuchi, Tsubasa Otake, Akira Ueda, Tsutomu Sato、”Formation of Mg-silicate scales and inhibition of their scale formation at injection wells in geothermal power plant”、第65回粘土科学討論会(国内)、令和4年9月8日
  9. 浅井 春菜, 菊池 亮佑、”花崗岩のカオリン化に伴う元素の移動 ー瀬戸地域における堆積性カオリン鉱床下部のカオリン質サプロライトでの調査事例ー”、第65回粘土科学討論会(国内)、令和4年9月8日
  10. R. Kikuchi, M. Horiuchi, M. Saito, T. Ishiwata, Y. Nishiki, T. Sato, Y. Takayama, S. Mitsui、”Natural evidence for the cementation in bentonite buffer based on transmission electron microscopy observation of bentonite ores”、International Clay Conference 2022(国外)、令和4年7月26日
  11. T. Otake, A. Murofushi, T. Daimon, R. Kikuchi, T. Sato、”Formation of Ni-rich smectite in the Tagaung Taung Ni laterite deposit, Myanmar”、Goldschmidt 2022(国外)、令和4年7月15日
  12. Y. Ohtomo, T. Matsui, F. Chikanda, S. Tum, T. Otake, T. Sato、”Iron precipitation and associated microbial activities in Ainai and Shojin river mine drainages, Japan”、Goldschmidt 2022(国外)、令和4年7月11日
  13. T. Otake、”Sustainable development of mineral resources in Indonesia”、The 17th Hokkaido Indonesian Student Association Scientific Meeting 2022(国外)、令和4年6月11日
  14. Francisco, P.C.M., Matsumura, D., Kikuchi, R., Ishidera, T. and Tachi, Y.、”Selenide [Se(−II)] Immobilization in Anoxic, Fe(II)-Rich Environments: Coprecipitation and Behavior during Phase Transformations”、Environmental Science & Technology(国外)、令和4年3月
  15. Ohtomo, Y., Yang, J., Nishikata, M., Kawamoto, D., Kimura, Y., Otake, T., and Sato, T. 、”Low-temperature hydrothermal synthesis of chromian spinel from Fe-Cr hydroxides using a flow-through reactor. Minerals”、Minerals(国外)、令和4年8月
  16. Kikuchi, R., Sato, T., Fujii, N., Shimbashi, M., & Arcilla, C. A.、”Natural glass alteration under a hyperalkaline condition for about 4000 years.”、Scientific reports(国外)、令和4年9月
  17. Chaerun, R.I., Soonthornwiphat, N., Toda, K., Kuroda, K., Niu, X., Kikuchi, R., Otake, T., Elakneswaran, Y., Provis, J.L., Sato, T. 、”Retention mechanism of cesium in chabazite embedded into metakaolin-based alkali activated materials. Journal of Hazardous Materials”、Journal of Hazardous Materials(国外)、令和4年10月
  18. Nishiki, Y., Cama, J., Otake, T., Kikuchi, R., Shimbashi, M., and Sato, T.、”Formation of magnesium silicate hydrate (M-S-H) at pH 10 and 50ºC in open-flow systems”、Applied Geochemistry(国外)、令和5年1月
  19. 星蒼空、”北海道下川鉱床における複数の鉱化ステージが母岩の変質に与えた影響”、卒業論文(国内)、令和5年3月
  20. Dwi Vidya Sari、”Mineralogical and geochemical characteristics of weathering profiles at Weda Bay Ni laterite deposit, Halmahera, Indonesia”、修士論文(国内)、令和5年3月
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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