【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.04.24】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22RO0007
利用課題名 / Title
マイクロ流体デバイスを用いたアストロサイトに対する骨組織の影響の検討
利用した実施機関 / Support Institute
広島大学 / Hiroshima Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
SU-8レジスト、膜加工・処理、PDMS調合、熱処理、プラズマ処理、形状・形態観察、分析、接合
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
吉本 哲也
所属名 / Affiliation
Indiana University School of Dentistry, Biomedical Sciences and Comprehensive Care
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
黒木伸一郎,岡田和志,水野恭司
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
RO-131:レイアウト設計ツール
RO-113: マスクレス露光装置
RO-121:スピンコータ
RO-602:PDMS加工装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
近年, 歯周病などに伴う慢性的な咬合機能障害による口腔内機械受容性感覚の低下が, 学習・認知機能低下に影響を及ぼすことが報告されてきた。これらの先行研究は 口腔感覚–高次機能という新規連関システムを確立し, 口腔健康管理の重要性を社会に周知させた。その一方で, 未だ「口腔内の機械受容性感覚障害」と「認知機能低下」という因果を示すにとどまっており, 実態や分子制御機構について明確な解答は得られていない。すなわち, 口腔-中枢間の基礎原理解明は, 不十分かつポテンシャルの高い分野であり, QOL向上や健康寿命の延伸と密接に関連する。本研究では, 顎骨組織が口腔内機械受容性感覚の主体であると考え, 骨組織と認知機能には重要なネットワークがあるのではないかと仮説を立てた。しかしながら, マウス等を用いたin vivo研究では, 全身が複雑に関連するため骨組織と脳との連関を直接観察することは難しい。また従来の2D細胞培養を用いた研究では,生体と大きくギャップがある。それゆえ, 広島大学ARIM支援室に, マイクロ流体デバイスを用いた研究を実現する為, 提案したデバイスの作製を依頼した。具体的には, 本共同研究において, 骨組織が脳ニューロンに与える影響に着目し, これまでに確立されていない新規Bone-BBB(blood-brain barrier, 血液脳関門)連関流体デバイスの確立を目指した。究極的には, 本デバイスを用いて骨組織−血液脳関門連関ネットワークの解明を目指す。
実験 / Experimental
以下の工程は全て広島大学ナノデバイス研究所で行われた。1.マウス生体内での骨組織作製を目的としたデバイス (Boneバイオタンク)作製フローチャートの確立マウス生体内で骨組織が再現可能なデバイス作製のフローチャートを確立した。具体的には, アルミで作製した鋳型に(右図A)に, Polydimethylsiloxane (PDMS)調合液(主剤:硬化剤 10:1, 自・公転ミキサーにより攪拌、脱泡)を流し込み, 真空脱泡装置にて脱気後, 加熱処理により硬化させた。離型したのち,余剰のバリをカットすることで計画したデバイスの作製に成功した (右図B)。 2. BBB (blood-brain barrier)を再現するためのメンブレンフィルター内蔵2層マイクロ流路デバイスの作製フローチャートの確立 血液脳関門を再現する2層流路マイクロ流体デバイス作製のフローチャートを確立した。まずマスクレス露光装置を用いてSU-8 (レジストエポキシ厚膜レジスト) を塗布後、リソグラフィーにて2層流路用の鋳型(上層, 下層)を作製したのち, スピンコータにて離型材を塗布した(図A)。作製した鋳型にPDMS調合液(自・公転ミキサーにより攪拌、脱泡)を流し込み, 真空吸引機にて脱気後, 加熱処理により硬化させた。硬化したPDMSブロックはPDMS加工装置により上層, 下層それぞれ切り出された。PDMS下層ブロックは, クリーニングのため卓上真空プラズマ装置によりプラズマ照射されたのち, スライドガラスと加熱接着された(PDMS下層ブロック−スライドガラスユニット)。上層ブロックは, まずインレット・アウトレットチューブ装着のため穴あけ治具により加工された。メンブレンフィルターはSterlitech社製のPolycarbonate Membrane Filters (0.4 Micron, 13 mm, PCT0413100)を用いた。まずメンブレンを卓上真空プラズマ装置によりプラズマ照射したのち, 1.5%APTES (3-Aminopropyltriethoxysilane)希釈液に浸漬することでカップリング処理した。メンブレンを上層ブロックに静置した後, 張り合わせ装置によりPDMS下層ブロック−スライドガラスユニットと加熱接着させた。インレット, アウトレット加工部にチューブの装着を行い, 目的とするメンブレンフィルター内蔵2層流路デバイスの完成とした(右図B)。
結果と考察 / Results and Discussion
計画していたデバイスの作製は大きな問題なく達成された。しかし, メンブレンフィルターを中間層に配置する為フィルター厚の10 μmの段差が生じ, フィルター外周付近に未接着の部分が生じることが判明した。この隙間は毛細管現象により液漏れが予測される。対応策として, ①PDMSの層厚を薄くして柔軟性を稼ぐ。②PDMSの調合を主剤10:硬化剤1の配分に対して14:1程度にしてPDMS硬度を低下させる。③位置合わせ固定後に真空引きにて空気を抜いて密着後, 加熱接着 ④真空引き+同時加熱接着する。 ⑤PDMSをフィルターのエッジ部に注入し真空引き+同時加熱接着(流路間の仕切りとしてPDMSを注入)を考えており, そのいくつかは現在遂行中である。今後, 本共同研究で樹立した各デバイスを用いて(1) マウス生体内における骨組織の再現と(2) マウス由来の細胞を用いたBBB-on-a-chipを確立する。各項目の達成後, それぞれを連結また組み合わせることにより, 最終目的とするBone-BBB-on-a-chip連関デバイスを確立する。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
0007_図1(A)(B)
0007_図2(A)(B)
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究の遂行にあたり、共同研究者として終始多大なご指導を賜った、広島大学ナノデバイス研究所黒木伸一郎教授に深謝致します。また同研究所ARIM支援室の先生皆様方には, 本研究の遂行にあたり、適切なご助言, ご協力頂きました。ここに感謝の意を表します。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件