【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.14】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22NU0049
利用課題名 / Title
アモルファス薄膜の電子線照射による結晶化メカニズムの解明
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
アモルファス, 結晶化, 電子線照射,電子顕微鏡/Electron microscopy,集束イオンビーム/Focused ion beam,電子回折/Electron diffraction
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
徳永 智春
所属名 / Affiliation
名古屋大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
棚橋 俊介
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NU-102:高分解能電子状態計測走査透過型電子顕微鏡システム
NU-104:直交型高速加工観察分析装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
様々なアモルファス薄膜において電子線照射による照射領域の結晶化が報告されている。この手法は、被照射体の微小領域を選択的に結晶化させることができ、新たな微細加工技術への応用も期待されている。一方で、電子線を照射すると、材料内部では弾性散乱によるスパッタリング、非弾性散乱による照射領域の加熱・イオン化など様々な現象が引き起こされるが、どの散乱過程により結晶化に至るのか明らかにされていない。そこで、アモルファス薄膜表面に走査型電子顕微鏡(SEM)で電子線を照射し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた構造解析により、結晶化機構の解明を試みた。
実験 / Experimental
照射対象として、ALD法(原子層堆積法)によりSi(100)基板にam-AlOx膜を成膜した。原料ガスとしてAl(CH3)3、酸化ガスにH2OそしてキャリアガスにN2を選択し、成膜中の基板温度は200 ℃に設定した。また、汎用SEMを用いて加速電圧2.5 kV、照射電流密度48 mA/mm2で膜表面に電子線を照射した。 照射領域の構造を明らかにするため、収束イオンビーム装置,イオンミリング装置を用いて薄片試料を作製し,TEM(JEOL JEM-ARM200F Cold)を用いて照射領域の断面構造を観察した。
結果と考察 / Results and Discussion
加速電圧2.5kVで電子線を照射したところ、結晶化領域は膜表面から96nmまで結晶化しており、基板付近にアモルファス層が残存した層状構造がみられた。また、この結晶化領域から取得した制限視野電子線回折図形(SAEDパターン)を解析すると、この領域はg-Al2 O3 構造を有していた。
電子線未照射のAlOx 膜および市販の粉末g-Al2 O3 粉末のEDSスペクトルからO/Al比を比較すると、未照射の膜ではO/Al=1.30であったのに対し、g-Al2 O3 粉末はO/Al=1.46となったことから、もとの膜は酸素不足であるとともに、結晶化には照射領域近傍からの酸素導入が必要であることが考えられた。
そこで、酸素の導入経路探索のため下部のアモルファス層からEELSスペクトルを取得・解析したところ、もとの膜より酸素6配位Alが減少・4配位Alが増加する傾向を示した。この配位数変化からアモルファス層の酸素が照射前より減少し、結晶化に必要な酸素がアモルファス層から拡散したことが示唆された。
酸素の拡散には熱的もしくは電気的作用の影響が推測されるが、照射領域の温度は2.5Kでわずか7Kの上昇に留まり、熱による拡散は考えにくい。そこで、入射電子の散乱過程をモンテカルロシミュレーションしたところ、入射電子は最大95nmまで到達し、その深さは結晶化領域と同一であった。この結果はエネルギーを有する電子がam-AlOx を結晶化させることを示しており、入射電子は電子励起により試料をイオン化、正に帯電させるが、この帯電場によりam-AlOx 中のO2-がクーロン力により拡散したと考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件