利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.02】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23IT0036

利用課題名 / Title

EBLによるブルズアイ構造(同心円状の溝が掘られた構造)の作成

利用した実施機関 / Support Institute

東京工業大学 / Tokyo Tech.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

微粒子捕捉,電子線リソグラフィ/ EB lithography


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

吉野 雅彦

所属名 / Affiliation

東京工業大学工学院機械系

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

梅本髙明

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

IT-038:電子ビーム露光装置
IT-002:電子ビーム露光データ加工ソフトウェア
IT-024:触針式段差計
IT-027:ダイシングソー及びダイシング補助装置
IT-014:ダイヤモンド用ICPリアクテブイオンエッチング装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

表面に微細構造を有する金属基板にレーザーを照射すると、反射、散乱、プラズモンなどによって基板表面近傍に局所的な強電場が発生する。その強電場に微粒子が干渉する光ピンセット効果によって吸引力が発生し、捕捉されることが期待される[1]。このような微細構造を金属基板上に多数配列することに依り、多数の微粒子を同時に所定の位置に捕捉することが可能になり、微粒子やウイルスの分析、細胞手術など各種の微細操作デバイスとして有用と期待されている[2-5]。本研究ではこのような光トラッピングを実現する微細構造基板を開発することを目的とした。 まず、光を照射した際に電場増強が得られることが知られているブルズアイ構造を対象として、その構造の最適化を行った。有限要素法解析(COMSOL)をベイズ最適化法に連成し、電場増強効果を最大化する構造パラメータを決定した。その結果、Au基板およびAl基板で最大55倍の電場強度が生じることがわかった。そこで設計したブルズアイ構造を実際に製作し、この構造が実際に微粒子の光トラップ基板として有効であることを検証した。

実験 / Experimental

東工大ナノ構造造形支援事業により、設計したブルズアイ構造をSiウエハにEBLで作製した。図1に作製したブルズアイ構造のSEM像を示す。これを用いて、以下の2通りの方法で金属製のブルズアイ構造基板を作成した。一つ目の方法は、Siウエハ基板表面に金薄膜をコ―ティングすることにより金属製ブルズアイ構造基板を作製した。二つ目方法は、熱ナノインプリント法でSiウエハのブルズアイ構造をCOPフィルムに転写し、そのフィルムに金薄膜をコーティングした上で、金薄膜をコーティングしたガラス基板にブルズアイ構造を転写するナノトランスファ法により金属製ブルズアイ構造基板を製作した。図2にその工程を図示する。 次いで、図3に示すようにこれらの基板に蛍光微粒子を含む水溶液を滴下し、レーザー光を照射した時の粒子の動きを顕微鏡で観察した。

結果と考察 / Results and Discussion

 図4にSiウエハ基板表面に金薄膜をコ―ティングした基板にレーザー光の照射・遮断した場合の、基板上の微粒子の移動速度の変化を示す。ブルズアイ構造から外れた位置の微粒子はレーザー光を照射しても溶液の対流により平均約4μm/secの速度で移動している。それに対して、ブルズアイ構造上の微粒子はレーザー光照射時に約1μm/secに速度が低下するが、レーザー光を遮断すると溶液の対流速度約4μm/secで移動が再開しているのが判る。これにより、微粒子はレーザー光の効果によりブルズアイ構造上で捕捉されていることが確認された。
一方、ナノトランスファ法により作製したブルズアイ構造基板では、レーザー照射によりブルズアイ構造上に気泡が発生したため、粒子がブルズアイ構造上に到達できず粒子を捕捉することはできなかった。ナノトランスファ法で作成した基板はブルズアイ構造が歪んでおり、局所的な集中より基板近傍への熱エネルギー拡散が大きく、溶液の昇熱が大きかったためと考えられる。 以上により、EBLで製作した微細ブルズアイ構造に金薄膜をコーティングした基板を用いることにより光トラッピングが可能であることが実証できた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1



図2



図3



図4


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

東工大ナノ構造造形支援事業により、微細ブルズアイ構造基板による光トラッピングを実証することが出来ました。微細ブルズアイ構造の作製にご協力頂いきました梅本様並びに本事業スタッフの皆様に感謝申し上げます。
参考文献
[1]A. Ashkin, J. M. Dziedzic ,T. Yamane, “Optical trapping and manipulation of single cells using infrared laser beams,” 330, pp. 769-771, 1987.
[2]A. R. Wheeler, W. R. Throndset, R. J. Whelan, A. M. Leach, R. N. Zare, Y.H. Liao, K. Farrell, I. D. Manger, I. D. Manger and A. Daridon, “Microfluidic Device for Single-Cell Analysis,” Anal. Chem, 75,14, pp. 3581-3586, 2003.
[3]Folch, J. R. Rettig and A., “Large-Scale Single-Cell Trapping And Imaging Using Microwell Arrays,” Anal. Chem, 77, 17, pp. 5628-5634,2005.
[4]D. Di Carlo, N. Aghdam and L. P. Lee, “Single-Cell Enzyme Concentrations, Kinetics, and Inhibition Analysis Using High-Density Hydrodynamic Cell Isolation Arrays,” Anal. Chem,78, 14, pp. 4925-4930, 2006.
 [5]W. Liu, Z. Li, Y. Liu, Q. Wei, Y. Liu, L. Ren, C. Wang and Y. Yu, “One step DNA amplification of mammalian cells in picoliter microwell arrays,” RSC Adv, 9, 5, pp. 2865-2869, 2006.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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