利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.31】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23MS5017

利用課題名 / Title

キラリティーと結合した新奇量子伝導ナノデバイスの作成

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者)/Internal Use (by ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

キラル構造体, CISS効果, 機能性デバイス


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

佐藤 拓朗

所属名 / Affiliation

分子科学研究所協奏分子システム研究センター(山本G)

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

Malatong Ruttapol,Urban Adrian Joe,Wu Dongfang,山本 浩史

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-101:マスクレス露光装置
MS-102:3次元光学プロファイラーシステム
MS-103:電子ビーム描画装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本課題は、対称性と結合した新奇な伝導現象を検出し、そのミクロな起源を明らかにするとともにデバイスへの展開を目指したものである。特に、近年注目を集めているキラルな対称性に注目し、キラル構造体を電子が通過した際に生じる自発的な巨大スピン偏極現象(CISS効果)の実験的な観測と制御に向けて、キラル結晶・キラル分子をデバイスとして加工することに取り組んだ。CISS効果を高効率に検出するためには基板や電極作成条件といったデバイス作成プロセスの最適化が必須であり、利用申請した装置を用いて条件検討を行い、μmおよびnmスケールの微小デバイスの構築を進めた。

実験 / Experimental

CISS効果の同定には、伝導電流が持つスピンの情報を高感度に検出する必要である。そこで、フォトリソグラフィー(ID:MS-101)や電子線リソグラフィー(MS-103)を用いた微細加工を駆使し、対象とする物質に合わせて電極の種類やその配置を最適化した。

結果と考察 / Results and Discussion

今回は、Si基板や各種プラスチック基板の上に、フォトリソグラフィーや電子線リソグラフィーを用いてパターニングを行った。CISS効果を検証するための伝導実験では、異なる複数の電極材料を、配置を制御しながら複数回パターニングした基板を用意する必要があるため、高度なリソグラフィー技術が要求される。専門スタッフのサポートやアドバイスもあり、所望の構造を高精度に用意することができた。作成した基板を用いて、主にキラルな有機結晶やアキラルだが結晶構造の良く似た有機結晶の磁気伝導度測定や非相反伝導度測定へと効率的に移行することができた。特にキラル超伝導体であるk-(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2に関しては、非自明なスピン・電荷結合を反映した巨大な非相反伝導・超伝導ダイオード効果を観測することに成功し、さらに、アキラルな有機結晶であるk-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN) 2]Clに関しては、近年注目を集めている交替磁性の観点で、新しいスピントロニクス実験に着手している。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Hiroki Aizawa, Enantioselectivity of discretized helical supramolecule consisting of achiral cobalt phthalocyanines via chiral-induced spin selectivity effect, Nature Communications, 14, (2023).
    DOI: 10.1038/s41467-023-40133-z
  2. Ruttapol Malatong, Highly Durable Spin Filter Switching Based on Self‐Assembled Chiral Molecular Motor, Small, 19, (2023).
    DOI: 10.1002/smll.202302714
  3. Yoshitaka Kawasugi, Strain-induced massless Dirac fermion state of the molecular conductor α-(BEDT-TTF)2I3, Applied Physics Letters, 122, (2023).
    DOI: 10.1063/5.0141023
  4. Adrian Joe Urban, Strong and Tunable Near‐Infrared Circular Dichroism in Helical Tetrapyrrole Complexes, Chemistry – A European Journal, 29, (2023).
    DOI: 10.1002/chem.202300940
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 佐藤 拓朗, 山本 浩史“カイラルな有機超伝導体における巨大非相反伝導と超伝導ダイオード効果”日本物理学会2024年春季大会オンライン
  2. Takuro Sato and Hiroshi M. Yamamoto“Emergent spin-momentum locking and triplet-mixed Cooper pairs in a chiral organic superconductor” International Symposium on Quantum Electronics, 2024年2月13日, Ito International Research Center, The University of Tokyo
  3. 佐藤 拓朗“有機キラル超伝導におけるスピン三重項混成”ISSPワークショップ デバイス活用で臨む有機伝導体の未来, 2024年3月26日, 物性研究所
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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