【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.10】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NM5284
利用課題名 / Title
マルテンサイト鋼における水素脆性破壊
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
電子顕微鏡/ Electronic microscope,集束イオンビーム/ Focused ion beam,電子回折/ Electron diffraction,高度素材識別技術/ Advanced material identification technology
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
Shibata Akinobu
所属名 / Affiliation
物質・材料研究機構
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
諸永 拓,中村 晶子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NM-301:広空間・高分解能分析電子顕微鏡
NM-302:微細組織三次元マルチスケール解析装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究では,X線CT,FIB-SEMシリアルセクショニング,STEM観察などによるマルチスケール解析によって,高強度マルテンサイト鋼における水素脆性破壊挙動を調べた.X線CTを用いたマクロレベル3次元解析の結果から,水素濃度が増加するにつれてクラックの伝播形態はより連続的になる傾向が確認された.FIB-SEMシリアルセクショニングによるミクロレベル3次元解析により,水素脆性クラック上に微細な非破壊リガメントが小角粒界セグメントにおいて形成されていることが明らかとなった.そしてSTEMによりクラック伝播に伴ってクラック先端近傍領域において変形微視組織が顕著に発達していることが明らかとなった.
実験 / Experimental
引張強度1.2GPa級の焼入れマルテンサイト鋼を用いた.陰極電界により水素をチャージした試料を用いて破壊力学試験を行い,破壊力学試験後の試料に対して,クラック3次元伝播形態をX線CT・FIB-SEMシリアルセクショニングにより調べ,クラック近傍領域のミクロ組織をSTEMにより解析した.
結果と考察 / Results and Discussion
破壊力学試験から,水素チャージ材は非常に小さなJ積分値でクラックが伝播し始めるが,クラック伝播開始後に不安定破壊はすぐには生じないことがわかった.X線CTによるマクロレベル3次元解析の結果,粒界クラックであっても,クラックは一様に伝播しているわけでなく,非破壊リガメントを多く残すような形で不連続・断続的に伝播していることが明らかとなった.また,水素濃度が増加するにつれてクラックの伝播形態はより連続的になる傾向が確認された.
FIB-SEMシリアルセクショニングにより水素脆性粒界クラックの3次元形態を再構築したところ,主な破壊様式は旧オーステナイト粒界での粒界破壊であったが,ミクロ組織レベルではクラックが旧オーステナイト粒界から外れ,粒内を擬へき開クラックとして伝播している領域が多く観察された.また,サブミクロンオーダーの微小な非破壊リガメントが多く観察された.このような不連続な粒界クラック形態は旧オーステナイト粒界が様々な粒界性格を有するセグメントから構成された不均一構造を呈していることに由来していると考えられる.
擬へき開クラックとして伝播している領域をSTEMにより解析したところ,クラック先端には低エネルギー転位構造が形成しており,クラック先端から1um以内の領域で大きな方位変化が確認された.そのため,クラック先端での局所的な塑性変形を伴う擬へき開クラックが混在する不連続なクラック伝播が,巨視的な安定クラック成長の要因の一つであると考えられる.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Akinobu Shibata, Relationship between Three-dimensional Crack Morphology and Macroscopic Mechanical Properties of Hydrogen-related Fracture in Martensitic Steel, ISIJ International, 64, 660-667(2024).
DOI: 10.2355/isijinternational.ISIJINT-2023-316
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件