【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2024.06.25】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22IT0017
利用課題名 / Title
表面プラズモンポラリトンと発光性ナノ結晶間のエネルギー移動
利用した実施機関 / Support Institute
東京工業大学 / Tokyo Tech.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
リソグラフィ
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
大曲 駿
所属名 / Affiliation
東京工業大学物質理工学院
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
IT-001:電子ビーム露光装置
IT-002:電子ビーム露光データ加工ソフトウェア
IT-006:走査型電子顕微鏡
IT-012:リアクテブイオンエッチング装置
IT-024:触針式段差計
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
物質間のエネルギー移動は光合成やエネルギーデバイスにおいて重要な役割を果たす。このエネルギー移動の効率を増強することは、人工光合成や高性能エネルギーデバイスの創出において必要不可欠である。これまで、局在表面プラズモン共鳴によるエネルギー移動の増幅が報告されてきているが、本研究では新しいアプローチとして、ナノホールアレイを有する金基盤を用いて表面プラズモンポラリトンを利用する。具体的には、量子ドット間エネルギー移動の表面プラズモンポラリトンによる増幅とその機構解明を行う。
実験 / Experimental
本支援事業に行った実験は以下の通りである:直径250 nm、深さ40 nmのナノホール、六方配置(ナノホール間距離500 nm)の金基板を電子ビームリソグラフィによって作成した。実験条件は以下の通りである:
・基板:ガラス基板に金薄膜を製膜した基板
・電子レジスト:厚さ1000 nmのZEP 520A(厚さ500 nmを二度塗り)をスピンコート、プリベーク、冷却
・露光条件:EB描画装置JBX6300SJ、100 kV、200 pA、Dose量250 μC/cm2
・現像とリンス:キシレン60 s、IPA 40 s、N2ブロー
・エッチング:Samco RIE-10NR、CF4による反応性イオンエッチング
また、自機関で行った実験は以下の通りである:
・リフトオフ:DMACとAcetoneでそれぞれ130℃ずつ
また、作成した基板に対して、CdSe/ZnSコア・シェル型量子ドットをスピンコートし、蛍光顕微鏡によってナノスケールの発光の様子を観察した。
結果と考察 / Results and Discussion
得られた金ナノホールアレイ基板の原子間力顕微鏡像をFig.1に示す。この結果より、多少のばらつきはあるものの、概ね直径250 nm、深さ40 nm、ナノホール間距離500 nmの六方配置の金ナノホールアレイ基板の作成に成功した。FDTDシミュレーション(Fig.2)によると、確かに表面プラズモンポラリトンによる電場がナノホールアレイの表面上に生じていることが明らかになった。また、用いる光の波長が450 nmと540 nmで電場の分布やその強度が異なることも分かり、540 nmの方が電場強度が高かった。この金ナノホールアレイ上に量子ドットを散布したものの発光の様子をFig.3(上段)に示す。それぞれの図について、左下側に明る角が観測されており、明るい部分はナノホールアレイがパターニングされた部位、暗い部分がパターニングされていない金基板である。このことから、ナノホールアレイ上で生じる表面プラズモンポラリトンの電場による発光増強が明確に観察された。Fig.3(下)には、発光強度のヒストグラムを示す。450 nmと540 nmの波長のいずれにおいても、暗い領域と明るい領域の二つの分布が観測された。ただし、540 nmの方が強い増強が見られており、これはFDTDシミュレーションの結果と一致する。本研究によって、表面プラズモンポラリトンによる量子ドットの発光増強を実現した。 今後の方針としては、正方配列した金ナノホールアレイ基板においても同様の検討を行う。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 金ナノホールアレイ基板の原子完了顕微鏡像(上)、および高さプロファイル(下)。
Fig.2 金ナノホールアレイの表面プラズモンポラリトンによる電場のFDTDシミュレーション。励起波長450 nm(上)、540 nm(下)。
Fig.3 金ナノホールアレイ基板上のCdSe/ZnS量子ドットの発光の様子。励起波長450 nm(左上)および励起波長540 nm(右上)の蛍光顕微鏡像。励起波長と量子ドットの発光増強。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・科研費挑戦的研究(萌芽)「Study and control of long-range exciton transport in organic and hybrid
nanostructures for future exciton-based electronics」、課題番号21K18927
・共同研究者:鈴木左文先生 田中大基先生 バッハ・マーティン先生
・技術代行の梅本高明様(東京工業大学ナノテクノロジープラットフォーム)に心より感謝申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件