利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.30】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT0048

利用課題名 / Title

レーザーアブレーションで作製した半導体ナノ微粒子の構造解析

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/Electron microscopy,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,ナノ粒子/ Nanoparticles


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

宮島 顕祐

所属名 / Affiliation

東京理科大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

原口遼,山口遼介

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-007:高分解能分析電子顕微鏡
UT-008:高分解能トップエントリー型透過電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

我々の研究室では,SiCのナノ構造化による発光効率増大を目指した研究を行っている.その発光機構の解明には,研究対象であるSiCナノ微粒子の結晶構造やサイズ分布の詳細を明らかにする必要がある.本課題ではレーザーアブレーション法で作製したSiCナノ微粒子の形状とサイズの観測を行った.主な研究内容は2つある.1つは液中レーザーアブレーションにおいて,SiCコロイド溶液をアブレーションすることによる微粒子特性の変化を調べた.アブレーションする前のSiCコロイド溶液には数ナノメートルから100ナノメートルオーダーの微粒子が含まれていることが分かっている.このコロイド溶液をアブレーションすることによって,コロイド溶液中の微粒子がアブレーションされ,粒径がさらに小さくサイズ分布が狭くなることが期待できる.2つ目は気中レーザーアブレーションにおいて,ターゲットからの距離に対する生成される微粒子の大きさと形状を測定した.この実験により,気中における微粒子の成長過程を明らかにすることを目的としている.

実験 / Experimental

SiCナノ微粒子の形態観察にTEM(日本電子製JEM2000EXとJEM2010F)を使用した.ここでは,TEMを用いた研究成果について報告する.

結果と考察 / Results and Discussion

アブレーションに用いたレーザー光はパルス幅~3 ps,繰り返し周波数1 kHz,波長800 nmである.ターゲット上でのスポットサイズは 34 mmであり,50 mm/sのスピードで照射位置を走査しながらアブレーションを行った.以下に2つの実験結果を示す.
i)液中レーザーアブレーション
アセトン中で4H-SiC基板(MPD < 2 cm-2)をレーザーアブレーションすることでSiCコロイド溶液を作製した.このコロイド溶液に対して,さらにレーザーアブレーションを行った.アブレーション光の照射密度は6.61 J/cm2で一定とした.今後,前者を1回アブレーションコロイド溶液,後者を2回アブレーションコロイド溶液と呼ぶ.作製したそれぞれの試料を遠心分離し,TEMグリッドに滴下してTEM観察を行った.Fig.1に1,2回アブレーションコロイド溶液それぞれのSiCナノ微粒子のTEM像を示す.形状は球形に近いものが多いが,歪んだ形の粒子も存在していることがわかる.作製した微粒子は大きい微粒子同士はあまり凝集せず散在している.一方で大きい微粒子の周りに観測される小さい微粒子は凝集して存在している.観測されたナノ微粒子の平均値は1回アブレーションコロイド溶液で14.6 nm,2回アブレーションコロイド溶液で7.89 nmであった.光学測定では,コロイド溶液をアブレーションすることでSiC由来の発光がブルーシフトし,発光強度も増大したという結果を得た.これらの光学特性の変化はコロイド溶液をアブレーションしたことによってコロイド溶液中のSiCナノ微粒子のサイズが小さくなったためであると考えられる.今後はコロイド溶液へのアブレーション時間によって微粒子特性がどのように変化していくのかということを調査していく予定である.  
ii)気中レーザーアブレーション
気中レーザーアブレーションは,自作の容器内にターゲットとTEMグリッドを設置して行った.TEMグリッドはターゲットから距離5~40 mmの間に並べて設置し,ターゲットからの距離に対する微粒子の変化が分かるようにした.容器内の圧力は100 Paであった.アブレーション光の照射密度は5.65 mJ/cm2で一定とした. Fig.2 にターゲットからの距離(捕集位置)に対するSiC微粒子のTEM像を示す.捕集位置が近いほどSiC微粒子が多いことが分かる.捕集位置が遠いほど,個々の微粒子が判別できるようになっている.作製されたSiC微粒子径の最頻値は約10 nmであり,捕集位置には依存しないという結果が得られた.一方,発光強度は捕集位置が離れるにつれて連続的に減少するといった結果が得られた.このことから雰囲気ガス圧が100 Paの環境下では捕集位置が離れるにつれて微粒子の堆積量が減少していることが分かった.雰囲気ガス圧を0.01 Paにすると捕集位置が離れると発光強度が増していくという結果が得られている.構造解析と組成分析を行い,作製された微粒子の分布が雰囲気ガス圧によってどのように変化するのかを明らかにしていく予定である.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Figure 1. アセトン中で作製したSiCナノ微粒子のTEM像.(a) 1回アブレーションコロイド溶液,(b) 2回アブレーションコロイド溶液.



Figure 2. 捕集位置(a)5mm, (b)15mm, (c)30 mm, (d)40mm でのTEM像.アブレーション時間は50 min. 


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 原口遼, 山口遼介, 石原淳, 宮島顕祐, 「SiCコロイド溶液へのレーザーアブレーションによる微粒子の光学特性の変化」第83回応用物理学会秋季学術講演会 (2022.9.20-23)
  2. 原口遼, 山口遼介, 石原淳, 宮島顕祐, 「Arガス中におけるレーザーアブレーション法によって作製したSiCナノ微粒子の特性の捕集位置依存性」ナノ学会第20回大会 (2022.5.20-22)
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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