利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2024.03.25】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22HK0033

利用課題名 / Title

ナノ構造体電極触媒の合成と構造理解

利用した実施機関 / Support Institute

北海道大学 / Hokkaido Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/Electron microscopy,電子分光,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,ナノ粒子/ Nanoparticles


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

加藤 優

所属名 / Affiliation

北海道大学大学院地球環境科学研究院物質機能科学部門

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

八木一三

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

鈴木啓太,山﨑 郁乃,森有子,平井直美

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

HK-401:収差補正走査型透過電子顕微鏡
HK-202:オージェ電子分光装置
HK-402:走査型透過電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

肥料の過剰使用や工業廃水の排出等により地下水や土壌に放出された硝酸イオンは微生物による脱窒過程により硝酸イオン(NO3),亜硝酸イオン(NO2),一酸化窒素 (NO),亜酸化窒素 (N2O),そして,無害な窒素 (N2) へと変換される.この過程を人工的に,温和な条件 (大気圧,室温) で促進可能なのが電気化学硝酸イオン還元反応 (eNO3RR) である.eNO3RRは自然エネルギーとの相性もよいため,持続可能かつ環境負荷の小さい社会を実現させるためには有望な技術である.eNO3RRは貴金属であるPt-Pd合金触媒の表面をSnで修飾することにより,円滑に触媒されることが知られている.しかしながら,eNO3RRでは上述のとおり様々な生成物が得られるため,Sn/Pt-Pd触媒がどの反応過程に有効であるかが明らかとなっていなかった.
 そこで本研究では,モデル電極としてSnを含有するフッ素ドープ酸化スズ (FTO) 基板表面にPt-Pdナノ粒子を蒸着させた電極を作製し,NO3,NO2,NO,N2Oの電気化学還元活性を調べることで,Pt-Pd/FTOが特にどの窒素酸化物の還元過程において高活性を示すのかを検証した.

実験 / Experimental

 アークプラズマ蒸着法によりPtナノ粒子およびPdナノ粒子をFTO基板に蒸着した.得られたナノ粒子の粒径観察は走査型透過電子顕微鏡 (STEM, JEM-2000FXやJEM-ARM200F) を用いて,元素分布はSTEM-エネルギー分散型X線分光 (EDS) マッピング (JEM-ARM200F) にて調べた.各反応基質の電気化学還元活性は,3極式電気化学セルとポテンシオスタットを用いたサイクリックボルタンメトリーにより実施した.電解質水溶液としては0.1 M過塩素酸水溶液を用いた.FTOとPt-Pdナノ粒子界面形成による電極触媒活性への影響を調べるために,比較のため,Pt/FTO,Pd/FTO,そして,FTOの代わりにグラッシーカーボン (GC) 基板を用いたPt-Pd/GC電極を作製し,同様に電気化学測定を実施した.

結果と考察 / Results and Discussion

PtとPdナノ粒子を共にFTO基板表面にアークプラズマ蒸着法により固定化したところ,直径約2.3 nm程度の粒子が得られることが明らかとなった.また,STEM-EDS観察の結果から,PtとPdが粒子中に共存していることが確認できた.Pt-Pd/FTO,Pt/FTOおよびPd/FTOのeNO3RR活性を調べた結果,Pt-Pd/FTOが最も高い活性を示すことが明らかとなった.比較のためにPt-Pd/GCのeNO3RR活性を調べた結果,Pt-Pd/FTOの方がより高活性であったことから,Pt-Pd/Sn界面が少なくともeNO3RRの初発のNO3からNO2への還元過程において有効であることが明らかとなった.電気化学NO2,NO,N2O還元反応も同様に調べた結果,N2O還元反応においてはPt-Pd/FTOがPt-Pd/GCよりも高い触媒活性を示したが,NO2とNOの還元反応においては,両電極における触媒活性の差はほとんど見られなかった.これらの結果から,Pt-Pd/Sn界面がeNO3RRの反応律速過程であるNO3からNO2への還元過程と,CO2の約300倍の温室効果を持つだけでなく,オゾン層も破壊するN2OからN2への還元過程の2つの過程を促進していると考えている.
 今回のモデル電極系で得られた知見を実触媒に活用することができれば,高活性かつ高選択性を示す硝酸イオンや亜酸化窒素除去触媒が開発できると期待している.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

A.C. Sarker, M. Kato, I. Yagi, Electrochim. Acta, 425, 140628 (2022).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Abinash Chandro Sarker, Electrocatalytic nitrate and nitrous oxide reduction at interfaces between Pt-Pd nanoparticles and fluorine-doped tin oxide, Electrochimica Acta, 425, 140628(2022).
    DOI: 10.1016/j.electacta.2022.140628
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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