利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.29】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NU0236

利用課題名 / Title

LNO基板上に成膜したCo薄膜の結晶配向性と磁気異方性の相関解明

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

X線回折/X-ray diffraction,スパッタリング/Sputtering,スピントロニクス/ Spintronics


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

山田 啓介

所属名 / Affiliation

岐阜大学工学部 化学・生命工学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

小野頌太,鹿野早希

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

加藤剛志,大島大輝,日陰達夫

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),共同研究/Joint Research


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-205:3元マグネトロンスパッタ装置
NU-203:薄膜X線回折装置
NU-204:原子間力顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 近年、スピントロニクス分野において、単結晶強誘電体基板であるニオブ酸リチウム(128°Y-cut LiNbO3:LNO)の歪みを活かした研究が盛んに行われている。特に、LNO基板/強磁性体/非磁性体薄膜において誘起されるスピン軌道トルク(SOT)に関する評価やLNO基板に電圧を印可しスピン流との相互作用を観測する研究が実施されている。私達の研究チームでは以前の報告で、LNO基板上に強磁性薄膜(ニッケルや鉄)をスパッタ成膜し、LNO基板によって強磁性体薄膜に誘起された面内一軸磁気異方性(Ku)の磁気特性評価や結晶構造解析を行った。薄膜作製時の基板加熱温度を変化させ、結晶配向面との関係を調べることで、誘起されたKuの大きさや発現機構を明らかにした。本研究では、磁歪定数の大きい強磁性体のコバルト(Co)を用いて、薄膜作製時の膜厚を変化させ、Kuと結晶配向面との関係を調べた。

実験 / Experimental

 マグネトロンスパッタ装置を用いて、LNO基板上にCo薄膜を作製した。基板サイズは10 mm角とした。スパッタ条件は、到達真空度が~4.7×10-4 Pa、室温下で成膜した。Coの膜厚t は、接触段差計で測定を行い、t = 2.1-23.1 nmの膜厚の異なる試料を5つ作製した。作製した試料の結晶構造は、薄膜X線回折装置を用いて行った(X線入射角度w = 0.4 度で測定した)。磁気特性は、室温下で振動試料型磁力計を用いて膜面内方向の磁化曲線を測定し、その磁化曲線を解析することでKuを算出した。また、第一原理計算による結晶配向面と磁気異方性エネルギーの計算を行った。  

結果と考察 / Results and Discussion

 Fig. 1(a)は、LNO の (01.2) 面に垂直な方向で測定を行った膜厚の異なるCo薄膜試料のXRD測定結果を示す。= 2.1 nm のサンプルでは膜厚が薄く、hcp Co に関連する回折ピークは確認されなかった。一方、t = 5.9, 10.3, 23.1 nmの試料では、hcp Co結晶面に関連する回折ピークが明確に観測できた。t = 5.9 および 10.3 nm の試料では、(112) 面が配向したCo膜の形成が確認できた。Fig. 1(b)は、VSMを用いてt = 5.9 nmのCo薄膜の磁化曲線を示した結果である。面内方向の印加磁場(H)は、LNOの(01.2)面に対して 0°, 30°, 45°, 60°および 90°の角度(χ)で行い、磁化曲線を測定した。χの変化に伴い、磁化曲線の形状が変化しており、角形比Mr/Msや飽和磁場HSAT の値は、χによって変化した。LNO の (01.2) 面に平行方向が、Co薄膜の磁化容易軸であることがわかった。
 測定した磁化曲線からそれぞれの膜厚のCo薄膜のKu値を算出した結果を図2に示す。t = 5.9 nmの時、Ku値は1.41×105 erg/cm3と最大となった。これは、バルク hcp-Co の異方性定数K1 (4.6×106 erg/cm3) の約3%の大きさであった。 Co 膜のKuの最大値は、今までに得られているNiのKu値より約 1.5 倍大きく、膜厚はNi膜の約3分の1の厚さであった。
 第一原理計算による結晶配向面と磁気異方性エネルギーの計算を行った。その結果、hcp-Coの(112)面は、面内方向の角度によって磁気異方性エネルギーに差異が生じ、実験結果と同様な一軸磁気異方性を示す結果が得られた。また、hcp-Co(112)面に鎖状のCo原子の並びがあり、この方向と平行な方向がKu方向であると示唆できた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1. (a) XRD patterns of Co films on LNO substrate at various t. The X-ray direction is perpendicular to the (01.2) plane of LNO. The black bars at the bottom represent the reference data for hcp-Co [JCPDS Card No. 01-071-4238, ICCD]. (b) Magnetic hysteresis loops of Co film on LNO at t = 5.9 nm.



Fig. 2. Ku as a function of t.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は、名大、加藤剛志教授、大島大輝助教、日陰達夫技術職員、熊沢正幸技術補佐員のご協力のもと、研究が行われました。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Masayoshi Ito, Uniaxial in-plane magnetic anisotropy mechanism in Ni, Fe, and Ni-Fe alloy films deposited on single crystal Y-cut 128° LiNbO3 using magnetron sputtering, Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 564, 170177(2022).
    DOI: https://doi.org/10.1016/j.jmmm.2022.170177
  2. Mikiya Yamamoto, Bismuth composition, thickness, and annealing temperature dependence of the spin Seebeck voltage in Bi-YIG films prepared using sol–gel solution and spin-coating method, Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 556, 169416(2022).
    DOI: https://doi.org/10.1016/j.jmmm.2022.169416
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. (1) 松居秀樹, 嶋睦宏 , 山田啓介, "共沈法とポリオール法で作製したYIG-Ptグラニュラー膜の 構造とスピンゼーベック起電力の相関解明" IEEE Magnetics Society 名古屋支部 若手研究会、令和5年2月2日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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