利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.29】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NU0223

利用課題名 / Title

高度分離を目的とした機能性ナノファイバー膜の創製

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

ナノ粒子/ Nanoparticles,ナノワイヤー・ナノファイバー/ Nanowire/nanofiber


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

向井 康人

所属名 / Affiliation

名古屋大学大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

岳 云鵬,仲山 智琉

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-228:走査型電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

エマルション化した油分を含む廃液がしばしば問題となり、環境への排出基準を満たすため油分の処理が不可欠である。薬品を用いない物理処理法の一つで、有用油成分の回収・再利用を実現できるものにコアレッサー(油滴合一器)がある。コアレッサーは繊維充填層から成り、エマルションが通液されると、充填層内で油滴が合一し、充填層出口から粗大化した油滴が連続相の液とともに排出され、密度差により二層分離される。コアレッサーは一般に10 µm以下の微小油滴の合一分離には不適とされており、さらなる高精度化が切望されている。
本研究ではコアレッサーに用いる繊維層としてナノ繊維径、三次元ネットワーク構造、高空隙率という特長を有するナノファイバー膜を使用し、10 µm以下の微小油滴も高精度に合一処理する手法を提案する。微小油滴の合一機構を解明し、基礎的な合一分離特性を明らかにすることを目的とする。

実験 / Experimental

ナノファイバー材料には親油性のポリアクリロニトリルを選択し、図1に示す平均繊維径400 nmのナノファイバー膜を作製した。油にはドデカンを選択した。超純水1.5 Lに油を10 mL加え、20 kHzのホーン型超音波ホモジナイザーを用いて1 µmから10 µmまでの滴径分布をもつO/Wエマルションを調製した。
図2に実験装置を示す。フィルターホルダーに直径2.5 cmの円形に切り取ったナノファイバー膜を装着し、所定濃度に調整した供給液をチューブポンプによってホルダー下部から通液した。流入口に圧力計を設置してコアレッサー内部の圧力を測定し、供給液およびホルダー上部から採取した出口液に対し、油滴濃度および滴径分布の分析を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

ナノファイバー膜への通液により濁度の減少が視認でき(図3)、出口液から数 mmの油滴が得られ、実験終了時には出口液を受けるビーカー液面に油層が得られた(図4)。通液の初期段階において、親油性の繊維表面に油滴が付着し、繊維表面上で合一が生じて繊維表面に油膜が形成された。次段階として、この油膜に油滴が衝突することにより油膜が成長し、保持しきれなくなった油分が出口から粗大油滴として放出された。油分は出口液中を浮上して液面に油層を形成し、水層との二層分離が達成された。
以上より、本研究で考案した油水分離システムは10 µm以下の微小油滴をほぼ完全に分離可能な高精度コアレッサーとして機能することを明らかにした。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 ナノファイバー膜のSEM写真



図2 実験装置の概略



図3 通液前後の試料液(左:供給液,右:出口液の水層)



図4 出口液液面の油層


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は、JSPS科研費JP20K05191の助成を受けたものです。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Yunpeng Yue, Continuous coalescence and separation of oil-in-water emulsion via polyacrylonitrile nanofibrous membrane coalescer, Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, 657, 130626(2023).
    DOI: https://doi.org/10.1016/j.colsurfa.2022.130626
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. YUE Yunpeng, HARA Motoki, MUKAI Yasuhito: Continuous coalescence and separation of oil-in-water emulsion via polyacrylonitrile nanofibrous membrane, 49th Textile Research Symposium, Kyoto (Japan), 2022. 10. 9
  2. YUE Yunpeng, HARA Motoki, MUKAI Yasuhito: Highly efficient coalescence and separation of oil-in-water emulsion by polyacrylonitrile nanofibrous membrane, 6th International Conference on Materials Science & Engineering, Dubai (UAE), 2022. 11. 10
  3. 岳云鵬, 原幹, 向井康人: Continuous coalescence and separation of oil-in-water emulsion via polyacrylonitrile nanofibrous membrane, 化学工学会第53回秋季大会, 長野, 2022年9月15日
  4. 向井康人, 原幹, 岳云鵬: ナノファイバー不織布によるエマルション廃液中の微小油滴の合一分離特性, 第57回日本水環境学会年会, 松山, 2023年3月15日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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