【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.14】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22NU0061
利用課題名 / Title
電子ビーム制御技術の高度化およびその応用
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
スキルミオン, フォトカソード, 薄膜,電子顕微鏡/Electron microscopy,集束イオンビーム/Focused ion beam,電子回折/Electron diffraction,電子分光
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
齋藤 晃
所属名 / Affiliation
名古屋大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
米田昌泰,石田高史,桑原真人
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NU-102:高分解能電子状態計測走査透過型電子顕微鏡システム
NU-103:高分解能透過電子顕微鏡システム
NU-105:バイオ/無機材料用高速FIB-SEMシステム
NU-106:試料作製装置群
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
電子らせん波やパルス電子波に代表されるように今日電子波の時空間制御により特殊な電子ビームが生成可能である。本研究では、上記の電子波生成のための技術の高度化やその応用を目的に、集束イオンビーム装置によりスキルミオン材料とフォトカソード材料の断面試料の作製し、透過電子顕微鏡を用いて構造評価を行った。
実験 / Experimental
(1)スキルミオン材料の断面観察 サファイアc面上にエピタキシャル成長した Fe(1-x)PdxMo3 N 単結晶薄膜は、室温で磁気スキルミオンを発現することがQiangら(Appl. Phys. Lett. 117, 142401 (2020)) によって実験的に証明されている。
試料の膜厚は磁気スキルミオンにとって重要なパラメータの1つであるため、x=0.65の試料に対しFIB-SEM(NX5000 Ethos)によりTEM観察用の断面試料を作製し、透過電子顕微鏡(JEM-2100F/HK)を用いて膜厚の測定を行った。
(2)フォトカソード材料の断面観察 六ホウ化ランタン(LaB6)は電子顕微鏡の電子源材料としても使用される高融点で低仕事関数をもつ材料である。LaB6はフォトカソードとしても利用可能である。そこで、パルスレーザー堆積装置によりLaB6を成膜し、構造観察を行なった。
断面試料はFIB(FB-2100)により作製し、観察は収差補正走査透過電子顕微鏡(ARM 200F Cold)をもちいて行なった。
結果と考察 / Results and Discussion
(1)スキルミオン材料の断面観察
図1にFIB-SEMにより作製された断面試料のSEM像を示す。表面には薄膜を保護するカーボン膜をコーティングした。走査透過電子顕微鏡(STEM)での観察可能な厚さまで薄片化した。
図2にSTEMによりエネルギー分散型X線分光法(EDS)を行い、マッピングした結果を示す。STEM–EDSにより元素マッピングを行った結果、ADF-STEM像中の黄矢印の指す部分に
Fe, Pd, Moが分布することから、 Fe(1−x)PdxMo3N であることが明らかとなった。また、その膜厚が約25nmであることが確認できた。今後は平面試料を作製し、ローレンツ顕微鏡法により磁気スキルミオンの実空間観察を行う予定である。
(2)フォトカソード材料の断面観察 図3にLaB6 薄膜断面試料をADF-STEM法により観察した結果を示す。図3に示すように基板に沿った方向に結晶成長する領域も確認された。また元素分析からLaとBが膜中に観察され、結晶性のLaB6 が成膜していることがわかった。前年度作製した薄膜では基板と薄膜の界面にカーボンが析出していたが、今回作製した薄膜では基板の予備加熱温度を最適化したことによりカーボン層の除去に成功した。一方でカーボン層を除去後もエピタキシャル成長した単結晶薄膜の得られておらず、本結果から基板の表面荒さや酸素の離脱が影響している可能性がある。
今後は、単結晶薄膜の作製に向け蒸着条件を探索するとともにフォトカソードとしての性能を評価する予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 断面試料の作製の様子:(a)周辺加工のSEM像、(b)薄片化後のSEM像
Fig. 2 STEM-EDSマッピングの結果:(a)ADF-STEM像、(b)各元素マッピング
Fig. 3 MgO基板上に成膜されたLaB6薄膜の断面ADF-STEM像:(右上)FFTパターン
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 石田高史、桒原真人, 齋藤晃、 応用物理学会第70回春季学術講演会, 令和4年度年3月15日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件