【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.11.21】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22NU0013
利用課題名 / Title
反応ガス中触媒活性サイトのオペランドTEM解析
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
自動車排気ガス浄化触媒,電子顕微鏡/Electron microscopy,質量分析/Mass spectrometry,電子分光,パワーエレクトロニクス/ Power electronics
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
田中 展望
所属名 / Affiliation
トヨタ自動車株式会社
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
吉永泰三,三浦真秀,林高弘,武藤俊介
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
荒井重勇
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NU-101:反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡システム
NU-102:高分解能電子状態計測走査透過型電子顕微鏡システム
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
環境負荷低減のため、より高性能な自動車排ガス浄化触媒の実現が求められている。触媒改良に繋がる知見を得るため、環境制御型超高圧電子顕微鏡を用いて、ガス反応状態と活性種/反応ガス界面構造の相関を調査し、浄化機能発現メカニズムを探る。
実験 / Experimental
JEM-1000K RSにて、触媒粉末試料を室温から600℃以上程度まで加熱しながら、模擬ガスを導入し、排ガス模擬環境下でのオペランド計測(ガス反応分析および原子レベルその場観察)を実施した。またオペランド観察後の試料を回収し,収差補正分析STEM JEM-ARM200Fによって相マッピングをおこなった。
結果と考察 / Results and Discussion
NOガス中600℃でZrO2 担持Rh微粒子の触媒反応のオペランド観察を行った結果を図1に示す。ここでは表面構造が準周期的に変化する(111)表面を採り上げ,理論的に予測されているNO分子の吸着サイト[1]を基にモデル構造を構築し,表面の原子分解能TEM像のシミュレーションを行った。表面原子によるコントラスト位置から金属または表面酸化物構造およびNO吸着分子を特定した。
また,観察後の試料を取り出し,STEM-EELSによって表面酸化物の分析を行った結果を図2に示す。その結果,還元処理前の微粒子はRh2O3 (絶縁体)である一方,オペランド観察中のNOガス雰囲気下で生成される表面酸化物がRhO2 (金属的)であることが判明した。以上から,本触媒システムによるNOの浄化反応は,従来言われてきた金属表面が露出した表面での吸着・再結合・脱離ではなく,図3にまとめたように,RhO2 酸化膜上で進行していることが明らかになった.特に500℃以上の温度では,表面金属状態→NO表面吸着→表面酸化(1原子層)→NO吸着及び乖離吸着→無害ガス分子に再結合・脱離→再び表面が金属状態へ還元,というサイクルで触媒反応が進むことがわかった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 NOガス中600℃でのZrO2 担持Rh微粒子(111)表面の原子分解能TEM像のシミュレーション.
図2 Low-loss領域の標準スペクトルによって微粒子のSTEM-EELSスペクトラムイメージデータをMLLSフィットした結果.
図3 本研究で明らかになったRh微粒子によるNO浄化メカニズム.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
[1] A. Ishikawa, Y. Tateyama, J. Phys. Chem. C, 122, 17378–17383 (2018). 本研究は名古屋大学未来材料・システム研究所 武藤俊介教授との共同研究として実施した。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 1) 唐龍樹, 前出淳志, 石川裕之, 田中展望, 荒井重勇, 樋口哲夫, 武藤俊介, "超高圧TEM-QMS-GCによるZrO2担持Rh微粒子触媒反応機構解析", 日本顕微鏡学会第78回学術講演会, ビッグパレットふくしま,ハイブリッド開催, May 11-13, 2022.
- 2) 武藤俊介, 前出淳志, 唐龍樹, 石川裕之, 荒井重勇, 樋口哲夫, "超高圧TEM-QMS-GCによるRh微粒子触媒反応のオペランド計測と反応機構解析", 日本顕微鏡学会第78回学術講演会, ビッグパレットふくしま, ハイブリッド開催, May 11-13, 2022.
- 3) 唐龍樹, 前出淳志, 石川裕之, 田中展望, 荒井重勇, 樋口哲夫, 武藤俊介, "超高圧TEM-QMS-GCによるZrO2担持Rh微粒子触媒反応機構解析", 日本金属学会2023年春期第172回講演大会, 東京大学駒場キャンパス, 東京都立産業貿易センター, Mar. 7-10, 2023.
- 4) 武藤俊介, "反応科学超高圧電子顕微鏡によるガス中反応観察の進展", 日本顕微鏡学会第79回学術講演会(くにびきメッセ), June 26-28, 2023.
- 5) 唐龍樹, 前出淳志, 石川裕之, 田中展望, 荒井重勇, 樋口哲夫, 武藤 俊介, "超高圧 TEM-QMS-GC による ZrO2担持 Rh 微粒子触媒反応機構解析", 日本顕微鏡学会第79回学術講演会(くにびきメッセ), June 26-28, 2023.
- 6) 武藤 俊介, "ガスクロマトグラフィー質量分析計搭載反応科学超高圧電子顕微鏡が語る化学反応その場観察/計測", 日本顕微鏡学会2023年研究討論会(大阪大学産業科学研究所+オンライン), Nov. 2, 2023.
- 7) 武藤 俊介, "質量分析計搭載反応科学超高圧電子顕微鏡による金属微粒子触媒のオペランド計測とキネティクス解析", 第33回キャラクタリゼーション講習会(名古屋大学東山キャンパス), Dec. 20, 2023.
- 8) L. Tang, A. Maede, H. Ishikawa, H. Tanaka, S. Arai, T. Higuchi, S. Muto, "Analysis of catalytic reaction mechanism of Rh nanoparticles using e-HVTEM-QMS-GC," The 20th International Microscopy Congress (IMC20), Busan Exhibition and Convention Center (BEXCO), Busan, Korea, Sep. 10-15, 2023.
- 9) S. Muto, S. Arai, T. Higuchi, "Development of ultra-high voltage S/TEM-GC-QMS for operando observation/measurement of catalytic gas reactions," The 20th International Microscopy Congress (IMC20), Busan Exhibition and Convention Center (BEXCO), Busan, Korea, Sep. 10-15, 2023.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件