【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.09】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NI5301
利用課題名 / Title
次世代マンガン系電池電極材料の開発
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋工業大学 / Nagoya Tech.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
マンガン系リチウムイオン電池正極材料,二次電池/ Secondary battery,電極材料/ Electrode material,エネルギー貯蔵/ Energy storage,全固体電池/ All-solid battery,X線回折/ X-ray diffraction,易循環型材料設計技術/ Recycling-friendly material design technology
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
園山 範之
所属名 / Affiliation
名古屋工業大学大学院工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
種村眞幸
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
リチウムイオン電池はポータブル機器や電気自動車など様々な機器に搭載されているが、さらなる普及に伴い低コストかつ高性能な正極材料の開発が求められている。LiMnO2はLiCoO2と類似した層状岩塩型構造を有し高い理論容量を持つことから資源豊富で安価なマンガン系酸化物正極の一つとして注目されている。一方で充放電に伴う構造変化が原因でサイクル特性が十分ではなく、さらなる長寿命化が必要不可欠である。この構造変化はマンガンの電解質への溶出などが原因で引き起こされることが知られている1)。本研究ではマンガンと電気化学的な活性がないスカンジウムを置換した材料を合成し、構造安定性を向上させることによりサイクル特性の向上を試みた。またこの材料は高電位までの充電により酸化物イオンの酸化に起因する構造変化が起こり、安定性が失われると危惧される。そこで構造安定化のために電極表面を導電性のカーボンやポリピロールでコーティングすることで酸素の脱離を防止することによるサイクル特性の向上を試みた。
実験 / Experimental
MnO2、Sc2O3、LiOH・H2O、炭素源であるアセチレンブラックを固相混合した後、不活性雰囲気下、温度500℃で焼成することでLiMn0.95Sc0.05O2を得た。焼成時間は10時間ごとに一度取り出して粉砕混合し合計30時間焼成した。得られた試料とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムをエタノールに加え5分間超音波拡散させ、2時間攪拌を行ったのち、FeCl3を投入しさらに1時間攪拌を行った。その後ピロールを滴下し室温で12時間攪拌を行い、ポリピロールコート試料を得た。試料はエタノールでの洗浄、遠心分離後80℃で一晩乾燥させた。電気化学特性評価は試料と導電助剤として用いたケッチェンブラックを混合し、バインダーにPTFEを用いて電極を作成した後、対極にリチウム箔、電解質に1MのLiPF6を含むEC:DEC=1:1の混合液を使用し電流密度20 mA/gで定電流充放電試験を行った。また、炭素系負極材料の作成には、中規模カーボンナノファイバー室温合成装置(NI-104)を用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
Fig.1に合成したLiMn0.95Sc0.05O2のXRDパターンを示す。合成試料は無機結晶構造データベースの単斜晶LiMnO₂のピークパターンと一致した。この試料を用いて定電流充放電試験を行ったところ212 mAh/gの初期放電容量が得られたが13サイクル目の充電過程で突然充電が停止してしまう現象が見られた。そこで導電性高分子であるポリピロールを電極表面にコーティングした試料を用いて、同様の条件で定電流充放電試験を行った。結果をFig.2およびFig.3に示す。結果から190 mAh/gの初期放電容量が得られ、サイクル特性も向上していることが確認された。Fig. 4にSEMに装着されたEDSにより測定したScドープ試料の原子マッピング図を示す。若干の不純物もみられるが、MnとScが均一に分布していることから、Scが固溶していることを確認できた。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 XRD patterns of LiMn0.95Sc0.05O2.
Fig. 2 Charge/discharge curves of LiMn0.95Sc0.05O2 coated with polypyrrole.
Fig. 3 Cycle characteristics of LiMn0.95Sc0.05O2and LiMnO2 coated with polypyrrole.
Fig 4 SEM-EDS mapping for Sc-doped sample.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献1) T. Ohzuku, J. Kato, K. Sawai, T. Hirai, J. Electrochem. Soc., 138, 2556 (1991).E. Ni, T. Tsukada, Q. Wen, and N. Sonoyama, J.Electrochem. Soc., 166 (3) A5226-A5230 (2019).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Wei Ming Lin, In Situ Transmission Electron Microscopy Observation of Electrochemical Process Between Li–C Nanocomposites and Multilayer Graphene, Advanced Materials Technologies, 9, (2024).
DOI: 10.1002/admt.202301564
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Patrick Dedetemo Kimilita, Keggin Bicapped-Type Polyoxovanadate as Cathode Material for High-Performance Quasi-Solid-State Zinc-Ion Batteries, ACS Applied Energy Materials, 7, 629-638(2024).
DOI: 10.1021/acsaem.3c02561
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 小林 昂平、大山 健斗、園山範之、"リチウムイオン電池正極材料のSc固溶リチウムマンガン酸化物の合成と電気化学特性"第64回電池討論会(大阪)、令和5年11月29日
- 谷川 慎、稲垣 春那、阿部 博泰、Kalita Golap、種村 眞幸、"層状複水酸化物、金属担持グラフェン複合ナノシートを電極触媒として用いた酸素の酸化還元"第64回電池討論会(大阪)、令和5年11月29日
- 園⼭ 範之、糟⾕啓仁、内村 俊介、⼭⼝ 弦希、"イオン⽋陥導⼊による層状複⽔酸化物中の⽔酸化物イオン移動過程の考察",第49回固体イオニクス討論会(札幌)、令和5年202311月17日
- 野田 尚亮、園山 範之、唐沢 明、黒田 啓斗、層状複水酸化物を含む高分子ポリマーゲルの特性と光亜鉛空気電池への応用、第54回 中部化学関係学協会支部連合秋季大会(津)、令和5年11月12日
- 糟谷 啓仁、園山 範之、山口 弦希、内村 俊介、構造を変更した層状複水酸化物の作成とそのイオン伝導機構の考察、第54回 中部化学関係学協会支部連合秋季大会(津)、令和5年11月12日
- 阿部 博泰、園山 範之、長谷川 慎、稲垣 春那、LDHナノシートや金属添加窒素ドープグラフェンを用いた複合電極触媒による酸素発生反応・酸素還元反応、第54回 中部化学関係学協会支部連合秋季大会(津)、令和5年11月11日
- 園山範之,山口弦希,糟谷啓仁、層状複水酸化物のイオン導電機構、第66回粘土科学討論会(仙台)、令和5年9月13日
- 内村 俊介、園⼭ 範之、糟⾕啓仁、⼭⼝ 弦希、Mg-Al系層状複水酸化物のイオン導電性に及ぼす構造的影響、電気化学会第91回大会(名古屋)、令和6年3月16日
- 阿部 博泰、園山 範之、長谷川 慎、稲垣 春那、ドープグラフェンと電析法により作成したLDHを用いた複合電極触媒による酸素発生反応・酸素還元反応、電気化学会第91回大会(名古屋)、令和6年3月15日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件