【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.31】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23MS3003
利用課題名 / Title
フラーレン誘導体LB薄膜の表面観察と光電気化学測定
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
硫酸化フラーレン, CNC, LB膜, 光電気化学反応, 電子受容性
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
日野 和之
所属名 / Affiliation
愛知教育大学 教育学部 自然科学系 理科教育講座
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
竹田 海美,柏木 飛佑,伊藤 一志,石川 慎之介
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
菊地 拓郎
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
フラーレンを基板に1層から数層堆積させた薄膜は、電子デバイスや光学材料としての利用をはじめ、潤滑性能等の力学的特徴を生かした応用等も含む、多彩な用途での利用が検討されている。しかしフラーレンは成膜の際に凝集しやすく、またその整列・配向の制御も困難であり、品質の安定性の確保や、性能発現機構の詳細な検討は不充分であった。凝集性を克服するアプローチとしては、脂肪酸などの両親媒性分子にフラーレンを混合させる手法と、疎水性のフラーレンに親水基を導入して両親媒性分子とする手法がある。いずれも、フラーレンを含む薄膜の作製によって二次元的なフラーレンの分散を試みている。昨年度、アニオン性滴下分子との相互作用や高分子による薄膜への新たな特性の付与などを期待して、カチオン性高分子であるCNC-Cationic(セルロースナノクリスタル)とPDMDAAC(Poly-dimethyldiallylammonium chloride)を新たに導入した。混合系および硫酸化フラーレンの各種組み合わせにおける薄膜の特性について評価し、考察した。今年度は、特にCNCの電荷当量を硫酸化フラーレンのそれと近づけたときの光電流量に着目した。
実験 / Experimental
本研究では、膜転写の最適条件が確立されているステアリン酸、フラーレン-ステアリン酸混合系、硫酸化フラーレンを滴下試料として、下層液にMilli-Q水、NaOHaq、CNCaq、PDMDAACaqをそれぞれ使用し、π‒A等温曲線の測定、LB膜のZygoによる膜厚測定(設備ID:MS-102)および電気化学測定を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
π‒A等温曲線の測定により、各滴下液の分子占有面積が文献値に近い値であること、およびその再現性を確認した。膜厚測定では、下層液に高分子を加えることで針状の突起が減少し、より大きなスケールの凹凸が支配的になることを確認できた。高分子の転写によって基板表面の平滑性が失われることが分かる。一方、硫酸化フラーレンを用いた場合には、数百µmスケールの集合や針状の凹みが確認でき、フラーレン骨格同士で二次元の集合が生じるとともに、硫酸基部分は均一に基板に吸着していることが予想された(図1)。電気化学測定において、ITO基板の表面反応に由来する電流密度の増加が確認できた。この光電流の増加は、未転写の場合と比較して硫酸化フラーレンでは約30倍、CNCでは約3倍であり、電子移動の促進におけるこれらの物質の優位性が示された。しかしながら、高分子の存在下では光電流の増加が、電子移動の向きが逆行することにより抑制されてしまう可能性がある。CNCの電荷当量が光電流量へ及ぼす影響については、硫酸化フラーレンのそれと近づけた条件(0.36 mg/L)では、3.6 mg/Lの場合とほとんど変わらないことが分かった(図2)。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 硫酸化フラーレンLB膜の膜厚測定
図2 70~80 sおよび110~120 sに光照射したときの クロノアンペロメトリーによる各LB膜の光電流測定
図2 70~80 sおよび110~120 sに光照射したときの クロノアンペロメトリーによる各LB膜の光電流測定
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
-
Haruki YURI, Surface Characteristics and Photoelectrochemical Reactions of Fullerene-Mixed Thin Films Fabricated with CNC or PDMDAAC as an Underlayer, Journal of the Japan Society of Colour Material, 96, 223-227(2023).
DOI: 10.4011/shikizai.96.223
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 由利春樹, 須藤優美, 日野和之, “CNCおよびPDMDAACを下層として作製したフラーレン混合系薄膜の表面特性と光電気化学反応” 第17回分子科学討論会 2023大阪, 令和5年9月13日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件