【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.24】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23HK0165
利用課題名 / Title
光学的人工知能システムのための回折光学素子の試作
利用した実施機関 / Support Institute
北海道大学 / Hokkaido Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions
キーワード / Keywords
表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,光デバイス/ Optical Device,電子線リソグラフィ/ EB lithography,フォトニクス/ Photonics
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
杉坂 純一郎
所属名 / Affiliation
北見工業大学 地域未来デザイン工学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
松尾保孝,石旭,佐々木仁,ピョーテンダーテン,遠堂敬史,大西広,細井浩貴,中村圭佑,浮田桂子,小島俊哉,福本愛
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
HK-603:超高速スキャン電子線描画装置(130kV)
HK-620:ICP高密度プラズマエッチング装置(フッ素)
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
人工知能(AI)は現在、電子計算機のプログラムとして実装されている。AIの処理能力が発展していく中で、その消費電力が非常に大きいことが問題となっている。本研究はレンズと回折光学素子を利用して、電子計算機による演算と同等の処理を光学的に行い、AIの低消費電力化と高速化を目指す。回折光学素子の表面には、レーザー光を任意の波面へと回折させるための微細構造が必要であり、北海道大学の微細加工機器を利用して施策を行った。
実験 / Experimental
回折光学素子はフォトンシーブホログラム[1]を応用した素子である。作製工程を図1に示すまず、厚さ1mm、24mm四方の正方形石英基板に、厚さ190nmのタングステンシリサイドをスパッタ蒸着した(図1(a))。この薄膜は不要なレーザー光を遮断する遮光膜として機能する。次に、遮光膜の上に電子線レジスト(ZEP520A原液)をスピンコートした後、140℃のホットプレートでプリベークした(図1(b))。その後、電子ビーム描画装置(エリオニクス ELS-F130HM)で直径548nmの円形パターン(ピンホール)を描画し、現像、ポストベークを経て(図1(c))、SF6プラズマによるドライエッチング(サムコ RIE-101-iPH)にてパターンを遮光膜に転写した。最後にレジストを除去し、洗浄して回折光学素子を完成させた(図1(d))。完成した素子の表面写真を図2に示す。作製した素子を図3(実際の光学系は図4)の光学系に組み込み、測定を行った。この光学系は4次元ベクトルAとBの内積演算αAtB(αはレーザー光源の強度やカメラの感度に依存する定数)を行うもので、パターン判別等の演算の基礎となるものである。ベクトルAは入力面にある4個の開口で表され、例えば2番目の開口が塞がれていれば、ベクトル(1,0,1,1)tを表すとする。他方のベクトルBの要素は固定で、回折光学素子のパターンとしてエンコードされている。今回作製した素子は、およそ103万個のピンホールを用いて、ベクトル(1,1,-1,-1)tを表現している。
結果と考察 / Results and Discussion
観測面Sに現れる像は、アクロマティック複レンズペアを用いてCMOSカメラ表面に結像させ、撮影した画像を図5に示す。図5は(a) A=(1,0,0,0)t、(b) A=(1,1,0,0)t、(c) A=(1,0,1,0)t、(d) A=(1,1,1,1)tに対する像で、内積の値は観測面の黄色枠線内の明るさで示される。それぞれの画素値は(a) 34、(b) 72、(c) 7、(d) 20となった。定数α=0.0294とすると、4パターンに対する内積値はそれぞれ(a) 1.0、(b) 2.1、(c) 0.21、(d) 0.59となる。理論値[(a) 1、(b) 2、(c) 0、(d) 0]と比較すると実験結果は概ね一致しているが、(d)の誤差が大きくなっている。(d)は4開口全てからの入力があるためアライメントのずれの影響を受けやすく、レンズと回折光学素子、カメラの位置関係が正確でなかった可能性がある。今回の実験では、レンズを設計とは異なる位置にした方が内積演算の精度が高いことなども明らかとなり、数値シミュレーションの結果とも比較しながらより良い光学系のアライメントを設計する予定である。アライメントの問題が解決次第、また、ベクトルの次元を上げて、図形や文字といった入力画像のパターン識別を行う予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. 回折光学素子の各作製工程における素子の断面図。(a)石英基板にタングステンシリサイド薄膜をスパッタ成膜。(b) 電子線レジスト塗布。(c)電子ビーム描画と現像。(d) プラズマエッチングとレジスト剥離。
図2.作製した回折光学素子の表面写真
図3.内積演算用光学系。I:入力画像、L:平凸レンズ、D:回折光学素子、S:観測面(アクロマティック複レンズペアを用いてCMOSカメラに結像)
図4. 実際の内積演算用光学系
図5. (a) A=(1,0,0,0)t、(b) A=(1,1,0,0)t、(c) A=(1,0,1,0)t、(d) A=(1,1,1,1)tに対する観測面の像。黄色枠線内の画素値が内積の値を表す。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
文献[1] J. Sugisaka and K. Onishi, "Lensless computer-generated hologram with wavelength-order resolution consisting of photon sieves," J. Opt., vol. 22, pp. 105606 (2020).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件