【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.07.31】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22AE0025
利用課題名 / Title
パラジウムイオン間の相互作用を活用した新たなパラジウムイオン認識沈殿剤の開発
利用した実施機関 / Support Institute
日本原子力研究開発機構 / JAEA
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
白金族分離プロセス,XAFS,金属錯体
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
鈴木 智也
所属名 / Affiliation
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
粕谷 亮,本間 諒,成田弘一
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
小林 徹,塩飽秀啓
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
白金族金属は希少且つ高価であり、産業に不可欠な元素であるため、使用済み製品から分離精製を経て、再資源化されている。現行の分離精製プロセスでは、選択性の高さから溶媒抽出法が主に用いられているが、沈殿法に選択性が付与できれば、コンパクトな白金族金属の分離精製プロセスの構築が可能になる。このような背景から、ピリジンをベースにしたパラジウムに選択性を有する沈殿剤の開発を進めている。
これまでに、オルト位にアミド基を持つピリジンを、塩酸溶液に加えることで、Pd(II)に選択的な沈殿現象を確認している。しかし、その選択性発現のメカニズムについては、不明である。そこで、本研究では、2-ピコリンアミドにより、生成する塩化パラジウム錯体の構造について、XAFS法を用いて検討した。
実験 / Experimental
測定に塩化パラジウム錯体は、Pd(II)を含む塩酸溶液に2-ピコリンアミドを加えることで合成した。得られた錯体は、ろ過とエタノールによる洗浄を行った。乾燥した塩化パラジウム錯体は、Pd濃度が最大で10mass%になるように窒化ホウ素で希釈し、ペレット化することで、測定試料とした。また、0.1 MのPd(II)を含む塩酸溶液を塩化パラジウム錯体の比較用のサンプルとして測定した。Pd K edge(24.35 keV)XAFSは透過法によりBL-22XUにて測定した。 XAFSスペクトルの解析にはARTHEMIS(ソフトウェア,version 0.8.012)を用いた[1]。
結果と考察 / Results and Discussion
図1(a)に0.1 M Pd(II) 0.9 M NaClを含む0.1 M塩酸溶液から沈殿させたPd錯体のXANESスペクトルを示す。塩酸溶液中のPd(II)の濃度に対し等倍量と二倍量の配位子を加え、合成した錯体のスペクトルを比較すると、形状が違うことから配位子の添加量により沈殿するPd錯体の形態が異なることを示唆している。図1(b)(c)にEXAFSスペクトルとそのフーリエ変換図を示す。2.0 Å付近のピークは、塩酸溶液中のPdの形態は[PdCl4]2-であることから、Pd-Clの結合に帰属できる[2]。[L]/[Pd] = 1.0の条件で沈殿した錯体のスペクトルは、1.6 Åと2.0 Å付近にピークが見られることから、Pdに対し配位子と塩化物イオンが配位した形態での沈殿形成が示唆される。一方、[L]/[Pd] = 2の条件で沈殿した錯体のスペクトルは、[L]/[Pd] = 1.0の条件に比べ、2.0 Å付近のピークに減衰が見られる。これは、[L]/[Pd] = 2.0の条件で沈殿した錯体の塩化物の配位数が[L]/[Pd] = 1.0よりも少ないことを意味している。[L]/[Pd] = 2.0のPd錯体では電荷の中和のために、塩化物イオンの代わりとなるアニオンが必要であることから、配位子である2-ピコリンアミドの脱プロトン化による錯体形成が起こることが本結果より示唆される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. Pd錯体の(a) XANES,(b) EXAFS及び(c)フーリエ変換スペクトル,-:0.1 M Pd及び0.9 M NaClを含む 0.1 M HCl水溶液,-:Pd-2-ピコリンアミド錯体(沈殿剤添加条件,[L]/[Pd] = 1.0),-: Pd-2-ピコリンアミド錯体(沈殿剤添加条件,[L]/[Pd] = 2.0),L: 2-ピコリンアミド
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献:[1] B. Ravel, M. Newville, J. Synchrotron Radiat., 2005, 12,
537.
[2] T. Suzuki, R. Kasuya, H. Narita, J. Jpn. Inst.
Met. Mater., 2021, 85, 305.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Tomoya Suzuki, Selective adsorption of Pd(II) over Ag(I) in nitric acid solutions using nitrogen-donor-type adsorbents, Separation and Purification Technology, 308, 122943(2023).
DOI: https://doi.org/10.1016/j.seppur.2022.122943
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件