【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.05】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23JI0039
利用課題名 / Title
液中局所電位分布計測技術を用いたAl合金表面におけるナノスケール腐食機構解析
利用した実施機関 / Support Institute
北陸先端科学技術大学院大学 / JAIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
走査型オージェ電子分光分析装置/Scanning Auger Microscope,電子顕微鏡/ Electronic microscope
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
福間 剛士
所属名 / Affiliation
国立大学法人金沢大学ナノ生命科学研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
小西沙和,糀谷彰謙,山本伸之介
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
富取正彦,東嶺孝一,伊藤真弓
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
JI-011:走査型オージェ電子分光顕微鏡
JI-008:原子分解能走査透過型電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
Al6000系試料表面の腐食進行中における形状変化及び電位変化を観察し、Al合金面内で生じる腐食機構の解明を目的として行う。
その際、Al6000系に存在する晶出物(AlFeSi)の腐食機構理解のため、SAMやTEMを用いてAlFeSiの組成分析、結晶構造解析を行う。
実験 / Experimental
SAMを用いて、本合金の晶出物AlFeSi表面の元素分析を行った。
SAM搬入前に、イオンミリングを2kVで10分かけた。SAM搬入後、Al合金表面の酸化被膜及び有機系コンタミネーションを除去するためにチャンバー内でArスパッタリングを行いながら元素分析した。その後、元素マッピングを行いAlFeSi内部の元素分布について調べた。
また、TEMを用いて、AlFeSi内部の厳密な元素分析と原子配列の解析を行った。
本合金から、ターゲットとなるAlFeSiが含まれる形で、TEM観察用の薄片に切り出すことで計測を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
SAM計測を行った結果を以下に示す。図1にSAMで作成した元素マッピングの結果を示す。図には 2 つの2-4 µm程度の晶出物が見え、どちらもFeのはっきりとした反応が見られる。Si は母相中にも多く存在するためか、晶出物上はうっすらとかたどられている様子が見える。MgやCuの反応は特に見られず、このIMPはどちらもAlFeSi系晶出物であると考えられる。またFeのマッピングを見てみると、下の晶出物において内部でFeの分布があるように見えていた。しかし、本実験では一つ慎重に考えなければならないことが生じていた。それは操作後に生じるCの増加である。本来、超高真空中による電子線照射等のアクションにおいて、コンタミネーションの再付着は盛大に発生するとは考えにくい。それほどまでにチャンバー内の環境は無駄な水分やガスが取り除かれた状態になっていると考えられる。しかし、本実験中、Arスパッタを行うもしくは電子線を照射することでC量が増加する傾向が見られた。以上より、Arスパッタリングと電子線照射によってCの堆積が疑われるが、同様の条件下でSiウェハー、タングステン線、Al板(Al6000 系とは異なる組成)で実験を行ったところCの増加傾向は見られなかった。本実験は2度別のAl6000系サンプルを搬入し行っており、どちらでも同様の結果が得られている。C量の増加は原因が現在不明であり、Al6000系の試料が作製・加工された段階でCが混入してしまった可能性がある。この点に関しては今後も検討が必要である。今後、原因を追究するにあたり、データの有用性を確認していきたいと考える。
TEM-EDSの結果を図2に示す。晶出物自体にはAlの他、Si、Feの反応がくっきり見られるため、この晶出物はAlFeSi系晶出物であると考えられる。また母相と同レベルでMgやOの反応も見られた。しかし、晶出物内部で特に際立って分布に偏りがある元素は見られなかった。
次に図3(a)に示されるエリアのABF像を図3(b)に示す。このABF像は母相と晶出物の境界付近における晶出物の原子配列を反映しており、比較的はっきりとしたコントラストが捉えられている。この像から、図3(c)に示されるように原子の配列に繰り返し構造が見られた。しかし、母相との境界付近においては異なった繰り返し構造が見られた。またABF像から考えられる原子配列の模式図を図3(d)に示す。晶出物内部で見られる繰り返し構造をAとして、母相境界付近に見られる繰り返し構造をBとして示している。Aはコントラストが比較的濃い原子が2つ横並びになり、その下にコントラストが比較的薄い原子が4つ、ひし形状に2組並ぶ構造が見られた。その繰り返し構造の長さはおおよそ1.128nmであった。Bはコントラストが比較的薄い原子が4つ、ひし形上に1組並ぶ構造が見られ、それが繰り返されていた。その構造の長さはおおよそ0.534nmであった。これらの結果は、晶出物内部において結晶構造が異なる2つの相の存在を示唆する。もしこの2つの相に耐食性の差があれば、当然腐食中に耐食性が低い相から順に腐食が経過することになり、不均一な腐食が生じる原因になりうるだろう。よって今後、この晶出物の元素比を導き、そこから考えられる構造を決定し、それらの耐食性・不安定性を調査したうえで議論する必要があると考える。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1: SAM元素マッピング
図2: TEM-EDSの結果
図3: ABF像と予想される原子配列
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 糀谷彰謙 他、”液中オープンループ電位顕微鏡を用いたAl-Mg-Si合金表面の晶出物周辺におけるナノスケール腐食機構の解明”、第71回応用物理学会春季学術講演会(東京)、2023年3月23日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件