【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.08.27】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23JI0009
利用課題名 / Title
エキシマランプ前処理を施した高分子樹脂と無電解めっき層の密着性向上メカニズム解明のための密着界面評価
利用した実施機関 / Support Institute
北陸先端科学技術大学院大学 / JAIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials
キーワード / Keywords
表面処理,VUV, エキシマランプ,真空紫外線,表面改質,密着性,エレクトロデバイス/ Electronic device,高周波デバイス/ High frequency device,電子顕微鏡/ Electronic microscope,異種材料接着・接合技術/ Dissimilar material adhesion/bonding technology
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
有本 太郎
所属名 / Affiliation
ウシオ電機株式会社
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
東嶺孝一,小林祥子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
近年,プリント配線板に実装するパッケージ基板の後工程技術(More than Moore技術)の重要性が増している.次世代通信規格では,利用される高周波領域において伝送損失を低減させるために基板
樹脂の表面を平滑に維持したまま配線回線の密着性を保持することが課題になっている.エキシマランプ(λ=172 nm)を利用した紫外線照射によるドライプロセスの前処理では,樹脂表面を平滑に維持したまま,表面に官能基を導入でき,金属銅配線層との化学的な密着が可能になる.照射条件を変えることで樹脂と金属層との密着強度が変化することが確認できているが[1-2],密着のメカニズムは明らかになっておらず,密着性を上げるための方策がいまだ不明瞭のままである.その理由のひとつに,金属めっき層と高分子樹脂基板との界面における,微視的な構造に関する学術的な知見や,これを調査するための技術が不足していることがあげられる.これまでに,VUV照射によって表面の前処理を行った樹脂基板と,その樹脂基板上 に堆積した金属銅めっき層との接合界面には,HRTEM観察,電子回折,EDS,および,EELSの結果から,Cu2Oの存在が示唆されている[3-4].また,VUV照射後の樹脂基板表面には,酸素を含む官能基が形成されていると考えられるが,その分布に関しては明確になっていない.今回, ARIM事業を利用することにより,VUV処理により樹脂表面に生じる変化を観察することで,密着性に寄与している要因を明らかにできることが期待される.
本研究では,VUV照射したシクロオレフィンポリマー(COP)樹脂基板表面の,ヨウ素イオン染色法[5]による染色条件を検討し, COP表層に形成されていると考えられる酸素を含む官能基の分布の可視化を試みた[6].これらの評価技術が確立されることにより,密着性向上のためのエキシマランプ処理条件の指針も明確になり,半導体パッケージ工程への応用が期待される.平滑性を維持した密着技術の確立は,プリント基板実装業界に大きなインパクトを与え,エレクトロニクス産業
全体にとっても有用な技術になる得ると考えている.
実験 / Experimental
以下,サンプルは75μm厚のシクロオレフィンポリマー(以下COP)フィルムを用い
た.VUV照射(λ=172 nm)にはウシオ電機製の照射装置を用いて実施した.
実験工程としては以下の工程を実施した.
①VUV照射によりサンプルフィルムを表面改質処理(ウシオ電機)
②ウルトラミクロトームにより観察用試料作製(JAIST)
③ヨウ素イオン染色法により改質層を観察(JAIST)
結果と考察 / Results and Discussion
図1に,表面にVUV照射したCOPと包埋樹脂との界面の断面TEM像を示す.A: COP表面(0 nm)~150 nm, B: 150 nm~300 nm,および,C: 300 nm~700 nmのおよその深さ領域で,それぞれ異なるコントラストを示すTEM像が得られた.得られたTEM像から,VUV照射による改質層は,やや明るい領域とやや暗い領域とが混在して いるA層と,暗い領域が存在しているB層があることを示唆している.いずれも酸素を有する官能基がヨウ素イオンにより染色されたことを示しているが,A層とB層の染色の様子には差異が観られる.前報[4]で報告したVUV照射COPのEELS-SI測定と多変量解析の結果では,COP表層から約500 nmの深さ領域でやや形状の異なるC K端が得られており,今回の結果は前回のEELS結果とつじつまが合っていると考えられる.今回のヨウ素イオン染色法による観察の結果,VUV照射されたCOPの表面から数百ナノメートルの深さ領域B層に,酸素含有官能基が比較的多く存在することを示唆していることが分かった.今回,VUV照射されたCOP表層の断面TEM観察を行い,ヨウ素イオン染色法による酸素含有官能基の分布の可視化に成功した.今後,同手法を評価にとりいれることで,表面改質のメカニズムを明らかにするばかりでなく,密着強度向上施策に活用できると期待している.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 Cross-sectional TEM image of COP stained with Iodine ions.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
謝辞
本研究を実施するにあたり東嶺研究員には評価全般にわたり多大な協力を頂きまし
た.また,小林研究員には染色条件の条件出し,観察サンプルの前処理加工でご協力頂きました.感謝いたします.
参考文献
[1] 有本太郎,三浦真毅,竹元史敏,表面技術協会 第145回講演大会要旨集 20A-08,
(2022)
[2] 有本太郎,三浦真毅,竹元史敏,第37回エレクトロニクス実装学会講演大会
13B-21, P21 (2023)
[3] 有本太郎, 三浦真毅, 竹元史敏, 東嶺孝一.接着学会第61回年次大会, 47 (2023)
[4] 東嶺孝一,有本太郎.日本顕微鏡学会第79回学術講演会,P-M_29 (2023)
[5] 白神昇, 小島啓太郎. 繊維と工業 49(4), 140 (1993)
[6] 小林祥子,東嶺孝一,有本太郎,日本顕微鏡学会第80回学術講演会,TBD (2024)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Taro Arimoto, Improvement of Adhesion between High-Frequency-Compatible Substrates with Low Dielectric Constants and Electroless Plated Copper Films Using a Vacuum Ultraviolet Treatment, 2023 18th International Microsystems, Packaging, Assembly and Circuits Technology Conference (IMPACT), , 247-250(2023).
DOI: 10.1109/IMPACT59481.2023.10348633
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Taro Arimoto, Surface Modification of Cyclo Olefin Polymer film for Electronic Packaging by Vacuum Ultraviolet Irradiation, 2023 International Conference on Electronics Packaging (ICEP), , 109-110(2023).
DOI: 10.23919/ICEP58572.2023.10129756
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 有本 太郎,”エキシマランプを用いた高周波基板向け樹脂材料に対する 表面改質及び無電解銅めっきへの応用 ”第32回ポリマー材料フォーラム,令和5年11月30日
- 小林祥子,東嶺孝一,有本太郎,"真空紫外線照射による樹脂表面改質層のヨウ素イオン染色法を用いた可視化の試行"日本顕微鏡学会第80回学術講演会,令和6年6月3日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:1件