【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.25】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NM5303
利用課題名 / Title
超伝導材料の高性能化
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
超伝導材料,電子顕微鏡/ Electronic microscope
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
伴野 信哉
所属名 / Affiliation
物質・材料研究機構
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
諸永 拓
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
コヒーレンス長が約3nmのNb3Sn超伝導層では、結晶粒界が有効なピンニングサイトとして機能する。従って、結晶粒の微細化はNb3Sn層の超伝導臨界特性に直接影響する本質的な問題である。近年、TaをドープしたNb3Sn線材にHfを共添加することで、結晶粒を数十nmまで微細化する方法が注目されている。Hf添加におけるNb3Snの結晶粒形態を詳細に評価することは、微細構造と磁束ピン止め特性を相関させるために極めて重要である。本研究では、Ti-HfおよびTa-HfドープNb3Sn層の結晶形態を、走査型透過電子顕微鏡(STEM)およびTEMベースの自動結晶方位マッピング(ACOM-TEM)によって明らかにした。STEM/エネルギー分散型X線分光法(EDS)により、試料中に顕著な酸化物析出は見られなかった。粒度分布はACOM-TEMによって得られた。HfドーピングはNb3Sn層に微細化効果をもたらしたが、その程度はTi-Hfでは比較的小さかった。走査型電子顕微鏡-電子後方散乱回折法(SEM-EBSD)によるカーネル平均方位ずれ(KAM)分析では、Ti-HfとTa-HfのNb合金母相の内部ひずみ状態に顕著な違いは見られなかった。STEM/EDSによって新たに発見された注目すべき点は、Nb3Sn層中にCu-Hf化合物相が存在することであった。Cu-Hf化合物は、Cuマトリックスを持つNb-47Tiが熱処理されたときに形成されるCu-Ti化合物に類似している。STEM/EDSマップから、粒界に沿ってCu-Sn側から多量のCuが流れ込んでいることがわかった。粒界にCuが多く析出することで、Nb3Snの粒成長が促進される可能性がある。これらの知見は、Hfドーピングを介したNb3Sn相形成に関する深い洞察を提供するものであり、文献に新たな貢献をするものである。
実験 / Experimental
本論文では、Ti-HfおよびTa-HfドープNb3Sn層の結晶形態を、走査型透過電子顕微鏡(STEM)およびTEMベースの自動結晶方位マッピング(ACOM-TEM)によって明らかにした。STEM/エネルギー分散型X線分光法(EDS)により、試料中の酸化物析出を調査した。粒度分布はACOM-TEMによって得られた。走査型電子顕微鏡-電子後方散乱回折法(SEM-EBSD)によりカーネル平均方位ずれ(KAM)を分析した。STEM/EDSマッピングにより、元素分布を測定した。
結果と考察 / Results and Discussion
STEM/エネルギー分散型X線分光法(EDS)分析から、試料中に顕著な酸化物析出は見られないことが明らかとなった。ACOM-TEMによって得られた粒度分布から、HfドーピングはNb3Sn層に微細化効果をもたらすことが確認された。酸化物析出がないことから、結晶組織微細化は純粋なHf添加効果であることを明らかにした。また、微細化の程度はTa-Hf添加に比べてTi-Hfでは比較的小さかった。SEM-EBSDによるKAM分析では、Ti-HfとTa-HfのNb合金母相の内部ひずみ状態に顕著な違いは見られなかった。STEM/EDSによって新たに発見された注目すべき点は、Nb3Sn層中にCu-Hf化合物相が存在することであった。Cu-Hf化合物は、Cuマトリックスを持つNb-47Tiが熱処理されたときに形成されるCu-Ti化合物に類似している。STEM/EDSマップから、粒界に沿ってCu-Sn側から多量のCuが流れ込んでいることがわかった。粒界にCuが多く析出することで、Nb3Snの粒成長が促進される可能性がある。これらの知見は、Hfドーピングを介したNb3Sn相形成に関する深い洞察を提供するものであり、当該分野に新たな貢献をするものである。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Graphical abstract
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
電子顕微鏡ユニット 主任エンジニアの諸永拓氏、微細組織解析グループ グループリーダーの原 徹氏には、現象解明につながる最良の組織観察法のご助言ならびに実施をしていただき、深謝いたします。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Nobuya Banno, In-depth S/TEM observation of Ti–Hf and Ta–Hf-doped Nb3Sn layers, Superconductor Science and Technology, 37, 035019(2024).
DOI: 10.1088/1361-6668/ad2982
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 伴野信哉, 諸永 拓, 原 徹, 浅井航希, 谷貝 剛, "Nb3Sn層形成に与えるHf–TaとHf–Tiの添加効果", 2023年度春季低温工学・超電導学会, 東京
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件