利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.03】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23TT0044

利用課題名 / Title

天文学観測用Trapezoid grating熱処理における水蒸気の影響評価

利用した実施機関 / Support Institute

豊田工業大学 / Toyota Tech.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

純水バブリング付き電気炉


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

海老塚 昇

所属名 / Affiliation

国立研究開発法人理化学研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

佐々木 実 教授

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

TT-009:シリコン専用の各種熱処理(酸化、拡散)装置一式


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

太陽系探査機や天文学、地球観測衛星等の次世代観測装置に搭載するホウ珪酸系ガラスのVolume Binary (VB) gratingを開発する。ホウ珪酸系ガラスが変色せず、シリコンが酸化 しない温度(1000℃近傍)において、水蒸気の存在によりホウ珪酸系ガラスの粘性が低下し、熱間等方加圧加工によってシリコンを鋳型に鋳込むことができるか調査する。

実験 / Experimental

i線ステッパーにより2μm周期のラインアンドスペースの格子がパターンニングされたシリコンウエハにBoschプロセスとシリコン酸化・酸化膜除去により、深い溝の格子のVB gratingのシリコン鋳型を製作する (図1)。VB gratingのシリコン鋳型とテンパックスガラスを真空陽極接合し、到達温度1,100℃の電気炉で1時間温度を保持すると、大気圧によってテンパックスガラスをシリコン鋳型の溝の底まで鋳込むことができた (図1)。このサンプルを研磨してシリコンを除去したところ (図1)、ホウ珪酸系ガラスが変色し、シリコン鋳型の先端が酸化してSiOあるいはSi2O3に変質していることがわかった (図2)。水蒸気の存在によりホウ珪酸系ガラスの粘性が低下することが知られていたので、より低温での処理にすることで、上記変質は抑えられるが、ガラスが十分流動しない懸念があった。そこでシリコン鋳型とテンパックスガラスを真空陽極接合したサンプルを横置き電気炉に入れて純水のバブリング装置を経由したアルゴンを流した場合と乾燥したアルゴンを流した場合について1,025℃を1時間保持する比較実験を行った (図3)。

結果と考察 / Results and Discussion

結果として、純水のバブリングの有無による差異は見られなかった (図4)。1000℃以下、数時間でシリコン鋳型にテンパックスガラスを鋳込むため、到達温度において数MPaで加圧できる装置を探して、熱間等方加圧の実験を行う計画である。また、シリコンと線膨張係数が等しい液状や粉末のガラス素材をシリコン鋳型に鋳込む実験も検討している。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 シリコンを鋳型にしたテンパックスガラスのVB/Trapezoid grating製作方法。



図2 Trapezoid gratingのシリコン鋳型の酸化とテンパックスガラスの着色。



図3 豊田工業大学の純粋バブリング装置付き電気炉と熱間等方加圧加工実験。



図4 等方加圧加熱後のTrapezoid gratingのシリコン鋳型とテンパックスガラスの断面のSEM写真。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

佐々木教授には新しい手法によるテンパックスガラスのVB gratingおよびTrapezoid gratingの製作方法を提案していただいた。本研究の回折格子の試作や測定は主に豊田工業大学マテリアル先端リサーチインフラ事業(ARIM)および 東北大学ナノテク融合技術支援センター、国立天文台先端技術センター等の設備を利用させていただいている。テンパックスガラスのVB gratingの開発は宇宙航空開発研究機構の搭載機器基礎開発研究費の支援により推進された。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 海老塚 昇, 他, “天文学観測および宇宙探査用の新しい透過型回折格子 II,” 第28回 天体スペクトル研究会集録, p74-77, 2023年6月.
  2. 海老塚 昇, 他, “次世代天文学および月・惑星探査機の観測装置用の新しい透過型回折格子,” 第48回光学シンポジウム予稿集, p72-77, 2023年6月.
  3. 海老塚 昇, 他, “次世代天文学および月・惑星探査機の観測装置用の新しい透過型回折格子,” 第48回光学シンポジウム, 2023年6月22, 23日, 東京大学生産研究所, 口頭発表.
  4. 海老塚昇, 他, “新しい高分散・高効率・広帯域透過型回折格子,” 日本天文学会2023年秋季年会, 2023年9月20-22日, 名古屋大学, ポスター発表.
  5. N. Ebizuka, et al.,"Novel Transmission Gratings with High-dispersion, High-efficiency and Wide Bandwidth," Subaru Users Meeting FY2023, 2024年1月23~24日, ポスター発表.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:1件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る