【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23TT0010
利用課題名 / Title
水溶性ポリマーを用いた微細加工応用の高度化
利用した実施機関 / Support Institute
豊田工業大学 / Toyota Tech.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
立体フォトリソグラフィ,MEMS/NEMSデバイス/ MEMS/NEMS device,高品質プロセス材料/技術/ High quality process materials/technique,光リソグラフィ/ Photolithgraphy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
斉藤 誠法
所属名 / Affiliation
株式会社アイセロ
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
佐々木実,石井清,花木美香,中山幸子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
TT-006:マスクアライナ装置
TT-008:洗浄ドラフト一式
TT-011:Deep Reactive Ion Etching装置(Boschプロセス)
TT-013:ダイシング装置
TT-015:デジタルマイクロスコープ群
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
デバイスを試作する研究分野では、高価な基材を利用することが多い。例えば、相乗りサービスで用意したICチップに追加工を施す試作、GaNなどの新材料単結晶ウエハ基板を使う試作である。このようなウエハ1枚は高価なため、円板ウエハのままでは使わず、多数の小片に切り分けて、試作条件を様々に変更して研究に利用される。多くは10~20mm角程度の小片チップになる。この小片基板にパターン転写を行うには、フォトレジストを成膜する必要が生じるが、円板用のスピン成膜では均一な膜が得られない。小片を回転したときの風の当たり方や、レジスト材料に働く遠心力が円板に比べて変わる。背面にレジスト膜が回り込むことも多い。特に、小片端では、レジスト材料が端に集まる。全体の約2割の面積は、膜厚が不均一であり、パターニングは適正露光とはならない。加えて端部にはエッジバンプと呼ばれる、高い丘が生じる。これがパターン転写時に、フォトマスクと基板上レジスト膜との間に広いギャップを発生させるため、回折ぼけが入り、微細で良質なパターンは得られなくなる。このような短所があるにも関わらず、太いパターンがそれなりに得られるため、目減りした領域で研究が行われている。すなわち、高価な基板の目減り領域は有効活用されず、基板全面で得られる質の劣るパターンで最先端の研究が進められている。 そこで、スピン成膜したレジスト膜にパターン転写の潜像を形成してしまってから、固体膜を小片基板に貼る方法を提案する。基板サイズよりも広い面積でレジスト膜を用意し、膜厚が均一な領域のみを貼り付けることで、基板に均一な膜を用意する。比較的広い面積のパターン全体に欠陥が無いことが求められるデバイスにて、提案プロセスを検証した。
実験 / Experimental
質が求められるパターンとして、MEMS静電アクチュエータを取り上げる。向かい合う櫛歯電極は、細かなパターンが連続し、かつ広域パターンが必要となる。マスクとウエハ間にギャップが生じると,回折広がりによって,アクチュエータ特性が大きく劣化するパターンに変ってしまう。ギャップを最小限にするためにマスクに(Si基板などのサンプルではなく)レジスト膜を成膜して露光を済ませ,得られた潜像付きレジスト膜をマスクから剥がして真空圧着を行うことで、ウエハにレジスト膜を貼り付け・現像する方法を適用した。図1に製作方法を示す。①設計パターン付きフォトマスクのクロム面に弊社で開発中のポリビニルアルコール(PVA)水溶液をスピン成膜してベークし、乾燥する。PVA膜厚は約1µmである。②その上にレジスト(AZ1500, 38cP)を塗布し乾燥させる。③水銀ランプ(i線フィルタ付き)を用いてマスクのガラス側から露光し、レジスト膜に潜像を転写する。このとき、マスクパターン-フォトレジスト間距離がPVA膜厚となり、広域で安定して狭くできる。次に、サンプルとなるSOI (Silicon on Insulator)基板を用意する。高価なため、17mm角の小片とした。④フォトマスクから潜像付きのレジスト膜を剥がし、⑤レジスト面をSOI基板に貼り付ける。⑥PVA膜を水で溶解する。これ以降は通常のSOI-MEMSプロセスと同じである。⑦残ったレジスト膜を現像する。⑧得られたパターンを用いて、Siの垂直エッチングを行う。⑨酸素プラズマによりレジストを除去し、⑩気相HFによりSiO2犠牲層エッチングを行う。
結果と考察 / Results and Discussion
図 2に得られたレジストパターンを示す(図1⑦の状態)。レジスト膜をマスクから剥がしてウエハに貼り付けたパターンである。向かい合う櫛歯の側面同士が最も狭い幅1µmの狭ギャップである。数十µmの広ギャップも一緒に得られた。櫛歯間ギャップにおいても、広域でレジスト残渣が無かった。ギャップやサスペンションはデザイン通り真っ直ぐな直線である。レジストパターンの歪みは気にならない程度である。図3にエッチング後のSi構造を示す(図 1⑨の状態)。コントラストが明確に得られているため、Siエッチングが埋め込み酸化膜に到達していると考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1:水溶性ポリマーを応用したデバイス製作プロセス
図 2:得られた櫛歯状レジストパターン
図3:パターン状に垂直エッチングしたSi構造
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 片山徹哉, 斉藤誠法, 佐々木実「静電アクチュエータのための狭ギャップ構造形成」電気学会センサ・マイクロマシン部門総合研究会 MSS-23-028 (2023.6.30)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件