【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.09】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NI0109
利用課題名 / Title
ホウ素金属膜の結晶構造および密度評価
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋工業大学 / Nagoya Tech.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials
キーワード / Keywords
電子顕微鏡/ Electronic microscope,バイオアダプティブ材料/ Bioadaptive materials,高度素材識別技術/ Advanced material identification technology,分離・精製技術/ Separation/purification technology
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
松本 貴裕
所属名 / Affiliation
名古屋市立大学 芸術工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
木村充宏
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
浅香 透
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
がん治療に用いられる陽子線の生物学的効果比はX線の1.1倍にとどまり,放射線抵抗性腫瘍の治療効果は必ずしも高いとはいえない。近年,ホウ素11と陽子の核反応により生じるアルファ粒子を用いて細胞殺傷効果を向上させるホウ素陽子捕捉療法(PBCT)の研究が進められており[1],細胞実験において良好な結果が得られている。しかし,その作用機序に関しては未だ不明な点が多く,混迷を極めている[2]。この理由の1つに,種々のホウ素化合物(有機化合物)を利用してアルファ粒子の発生をおこなっているため,ホウ素元素単独からの作用機序が定量的に評価しにくい点にある。本研究では,名古屋市立大学に存在するホウ素膜作製装置(スパッター装置)にて純粋にホウ素元素から成る稠密金属ホウ素膜を作製し,その膜がどのような結晶構造を有しまた不純物を含むか,に重点を置いて原子分解能分析電子顕微鏡観察を実施した。今後は,本結果に基づきホウ素陽子捕捉効果の定量的解明を目指す。
実験 / Experimental
ホウ素膜成膜実験:
ホウ素膜は,ホウ素スパッターターゲット(高純度化学)を装着したマグネトロンスパッター装置(Chivac製)を用いておこなわれた。成膜条件は,RF Power: 200 W, Ar ガス圧力: 0.2 Pa, 成膜レート:0.2 A/s, 基板:スライドガラス,石英基板,カプトンフィルム(7.5 micron厚),スパッター時間:5-300時間,である。
原子分解能分析電子顕微鏡解析実験:
実験実施日:2023年11月13日,測定装置:JEM-ARM200F (加速電圧: 200 kV),試料調整:ガラス基板からカミソリで剥離,マイクログリッドにマウント,測定手法:TEM, ED, EELS,を用いて行われた。
結果と考察 / Results and Discussion
原子分解能分析電子顕微鏡解析結果:
・図1の制限視野電子回折パターンに示すように,剥離したホウ素薄膜のフラグメントは,大局的にはアモルファスであると考えられる。
・図2に示すように,局所的にナノドメインと表されるような暗いコンストラストの部分が分散している様子が観察された。このドメイン領域においても明確な格子縞は観察されなかった。
・図3に示すように,EELSで調査した結果, π*ピークとσ*ピークが明瞭に分離したスペクトルとそうでないスペクトルが得られた。明瞭に分離したスペクトル部分では同時に酸素が若干検出されていることから一部酸化(表面)しているものと考えられる。また,上記のナノドメインが多いところでスペクトルの分離と酸素の検出がなされていることから,両者に相関がある可能性があるが,詳細を知るにはEELSマッピングなどが有効であると考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. マグネトロンスパッター法で作製したホウ素薄膜が示す制限視野電子回折パターン.
図2. マグネトロンスパッター法で作製したホウ素薄膜が示す局所的ナノドメイン構造.
図3. マグネトロンスパッター法で作製したホウ素薄膜が示す電子エネルギー損失分光(EELS)スペクトル.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
謝辞:
原子分解能分析電子顕微鏡観察結果につきまして,浅香透先生には今後の研究の参考となる有意義なコメントを頂きました。ここに感謝の意を表します。
参考文献:
[1] G.A.P. Cirrone, et al. First experimental proof of Proton Boron Capture Therapy (PBCT) to enhance protontherapy effectiveness. Sci Rep 8, 1141 (2018).
[2] M. Hosobuchi, et al. Experimental verification of efficacy of pBCT in terms of physical and biological aspects. Nuclear Instruments and Methods in Physics Research - section A, 1045, 167537 (2023).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件