利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.27】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23QS0007

利用課題名 / Title

その場X線回折測定を用いた逆臨界膜厚エピタキシー過程の観察

利用した実施機関 / Support Institute

量子科学技術研究開発機構 / QST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

二次元物質,エレクトロデバイス/ Electronic device,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,蒸着・成膜/ Vapor deposition/film formation,X線回折/ X-ray diffraction,放射光/ Synchrotron radiation,原子薄膜/ Atomic thin film


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

成塚 重弥

所属名 / Affiliation

名城大学理工学部材料機能工学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

横井 稜也,長村 皓平,柳瀬 優太,河原 詩絵名,Harries James

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

佐々木 拓生,大和田 謙二,押目 典宏

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

QS-113:表面X線回折計


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本研究課題では、ヘテロエピタキシャル成長の際、臨界膜厚以下では転位が発生しないと言う事実に基づき、基板の厚さを予想される臨界膜厚以下に抑えることで、成長層には転位が発生しないヘテロエピタキシャル成長(逆臨界膜厚エピタキシー)をおこなうことを目指す。そのため、リモートエピタキシーによるGaN層をテンプレート基板として用いることを考えた。リモートエピタキシーよるGaN層はグラフェン上に直接成長しているので、GaN-グラフェン界面のスベリにより変形が可能であり、基板との間に発生する応力が緩和できる。この様に作製したGaNテンプレート基板上にInGaNをヘテロエピタキシャル成長することで逆臨界膜厚エピタキシーを実行し、X線回折測定によりその過程をその場観察する。

実験 / Experimental

ビームライン(BL11XU)に設置されている分子線結晶成長装置にサンプルを導入し、放射光による高強度X線を用い直接析出成長により成長するグラフェンの様子をX線回折測定によりその場観察する。具体的には、高輝度X線はBe窓を通し超高真空の分子線結晶成長装置の成長室に導入され、結晶成長している基板表面に照射され、試料からのX線回折光は反対側のBe窓を通し外部に再度取り出される。最終的に、X線信号は2次元X線測定器(Pilatus)により受光されX線回折パターンが観察される。リモートエピタキシーによる GaN超薄膜テンプレート基板はあらかじめ名城大学で作製する。サンプル構造としては、r面サファイア基板上に減圧CVDによりグラフェンが成長され、引き続き窒素ラジカルビーム分子線結晶成長装置により、20 nmの膜厚を持つGaNリモートエピタキシー層が成長される。その様に作製された超薄膜GaN層は上下方向に分子結合が無いグラフェンにより、基板と分離され、グラフェン上で自由にスベリ変形することが可能である。名城大学で作製したサンプル基板をスプリング8へ持ち込み、窒素ラジカル分子線結晶成長装置に導入する。放射光による高輝度X線光を用いてその場X線回折測定をおこないながら、サンプル上にInGaN層の成長をおこなう。

結果と考察 / Results and Discussion

成長中のInGaN層の(120)回折スポット付近の逆格子マッピングを図1に示す。本実験においては、グラフェン上に成長したGaNリモートエピタキシー層上にIn0.1Ga0.9Nを成長した。図1の赤線に相当する部分のX線回折強度のプロファイルの時間依存性を図2に示す。図より成長時間の経過にともない、図の右側方向、すなわち格子定数がInN組成の高い方向にそのピークがシフトしたことが分かる。このことは、InGaN成長にともない、リモートエピタキシーによりグラフェン上に成長したGaN超薄膜がInGaN側に引っ張られ弾性変形したことを物語っている。この場合、InGaN/GaN界面には転位が発生せず両者の格子定数の差は、GaN層が歪み変形を受けることで解消されている。もし、InGaN/GaN界面に転位が発生しミスフィット応力が緩和されたら、逆格子マップ中の回折点はそれぞれの格子定数を示す独立した二つの点に分離するはずである。実際は、本実験で観察された様にInGaN成長中に単一ピークが保たれ、かつ、それがInGaN側にシフトした。このことは、リモートエピタキシーによる超薄膜GaN層が基板の拘束から離れグラフェン上で滑り、逆臨界膜厚エピタキシーの過程が良好に実現されたことを物語る。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1.InGaN層成長その場X線回折測定による(120)回折スポット付近の逆格子マッピング



図2.図1中の赤線に沿った回折強度プロファイルの成長時間依存性


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究の一部は、JSPS科研費No.25000011, 26105002, 15H03559、文部科学省「ナノテクノロジープラットホーム」事業No. A-21-QS-0006,A-21-QS-0028, 「マテリアル先端リサーチインフラ事業」No.JPMXP1223QS0007の補助によっておこなわれたものである。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Shigeya Naritsuka, A-plane GaN microchannel epitaxy on r-plane sapphire substrate using patterned graphene mask, Journal of Crystal Growth, 630, 127593(2024).
    DOI: 10.1016/j.jcrysgro.2024.127593
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Yuta Yanase, Kohei Osamura, Takahiro Maruyama, Takuo Sasaki, Shigeya Naritsuka, "Study of growth mechanism of graphene on m-plane sapphire grown by low-pressure CVD", 16th International Symposium on Advanced Plasma Science and its Application for Nitrides and Nanomaterials, 17th International Conference on Plasma-Nano Technology & Science (Nagoya), 令和6年3月4日
  2. 柳瀬優太,長村皓平,丸山隆浩,成塚重弥,佐々木拓生、”r面サファイア基板上に減圧CVD成長したグラフェンの面内配向性”、第52回日本結晶成長学会国内会議(名古屋)、令和5年12月5日
  3. 横井稜也,栁瀬優太,狩野祥吾,丸山隆浩,成塚重弥,佐々木拓生、”グラフェンナノパターンマスクを用いたGaN-MCE上でのInGaN成長”、第52回日本結晶成長学会国内会議(名古屋)、令和5年12月6日
  4. Yuta Yanase, Ryoya Yokoi, Takahiro Maruyama, Shigeya Naritsuka,Takuo Sasaki, "Study of in-plane alignment of graphene grown on m-plane sapphire using low-pressure CVD", The 65th Fullerenes-Nanotubes-Graphene General Symposium (Fukuoka), 令和5年9月4日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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