利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.04】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23TU0011

利用課題名 / Title

金属・誘電体ハイブリッドナノ構造を用いた光学キラリティ増強空間デザイン

利用した実施機関 / Support Institute

東北大学 / Tohoku Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

ナノインプリント,蒸着・成膜/ Vapor deposition/film formation,CVD,スパッタリング/ Sputtering,リソグラフィ/ Lithography,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,エリプソメトリ/ Ellipsometry,フォトニクスデバイス/ Nanophotonics device,光デバイス/ Optical Device,メタマテリアル/ Metamaterial


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

新家 寛正

所属名 / Affiliation

東北大学多元物質科学研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

篠海智,稲川亮太,高野修綺,長谷川友子,大沼晶子,中川勝

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

戸津健太郎,森山雅昭,菊田利行,庄子征希,龍田正隆,邉見政浩,松本行示,八重樫光志朗

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

TU-201:DeepRIE装置#1
TU-203:DeepRIE装置#3
TU-215:イオンミリング装置
TU-151:LPCVD
TU-211:プラズマクリーナー


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

キラルな光-物質相互作⽤における鏡像異性体体選択性は、キラル物質の検出や制御の根幹であり、計測科学・物質科学・光学・創薬など様々な分野で重要である。キラルな光として円偏光が従来⽤いられてきたものの、その鏡像体選択性は⼀般に⼩さいため、光によるキラル物質の⾼感度検出や⾼効率制御の技術発展が遅れてきた。近年、円偏光のような伝搬波ではなく、ナノ構造体への光照射により励振する近接場において、電磁場のキラリティの尺度である光学キラリティが円偏光より著しく増強することが見出され、光―物質相互作用における鏡像体選択性が増強することが知られるようになった。光学キラリティは位相が90o異なる電場・磁場ベクトルの内積に⽐例し、光の電場のみではなく磁場も光学キラリティ増強に同等に寄与する。また、鏡像体選択性は、光学キラリティに比例し、電磁エネルギーに反比例する。そのため、電場と磁場の強度のバランスが重要となる。本研究では、金属ナノ構造体への光照射に伴い励振する表面プラズモン共鳴による近接場における電場増強と誘電体ナノ構造体への光照射に伴い励振するMie共鳴の近接場における磁場増強の双方を活用することにより光学キラリティ及び非対称性が効率的に増強された光場を創成することを見据え、電気双極子共鳴と磁気双極子共鳴を同時に励振可能な誘電体Siナノ構造体をナノインプリントリソグラフィにより作製し、その光学キラリティ増強を調査することを目的とした。

実験 / Experimental

【利用した主な装置】DeepRIE装置#1 (TU-201),イオンミリング装置 (TU-215), LPCVD (TU-151)【実験方法】ナノ孔周期構造体をパターニングした合成石英モールドを用いたUVナノインプリントにより、低圧化学気相堆積法(LPCVD)により多結晶Si薄膜を成膜した合成石英基板にスピンコートした紫外線硬化性液体へナノディスク周期構造体を転写した。転写後、酸素反応性イオンエッチングと、SF6及びC4F8を用いた誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングにより、それぞれ光硬化残膜と余剰Si薄膜を除去することでSiナノディスク配列体を作製した。作製したSiナノ構造体を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)および暗視野顕微鏡により観察した。暗視野顕微鏡を用いてナノ構造体の散乱スペクトルを測定した。時間領域差分法(FDTD法)を用いて、Siナノ構造体の高さをパラメータとして反射スペクトル変化を調査し、測定された散乱スペクトルの特徴を再現する高さの構造体の共鳴モード及び近接場における光学キラリティを解析した。

結果と考察 / Results and Discussion

FESEM像からSiナノディスク構造体が作製されたことが確認され(Fig. 1 (a))、暗視野顕微鏡像及び散乱スペクトルから530 nm近傍の波長領域の散乱増強が確認されたことからMie共鳴励振が確認された(Fig. 1 (b) (c))。FDTD解析から構造体高さが90 nmの場合に、散乱スペクトルの特徴が再現されることが分かった(Fig. 1 (c) (d))。一方で、高さ110 nmのスペクトルでは電気双極子共鳴および磁気双子極子共鳴に帰属される散乱強度ピークが分裂するのに対し、高さを90 nmに近づけると上記二つのピークが同程度の波長領域で重なるようにスペクトルが変化することが分かった。このことは、90 nmの高さのSiナノ構造体では同じ励振波長で電気および磁気双極子共鳴が同時に励振されることを示している。Fig. 1 (e) に532 nmの円偏光照射によりMie共鳴の励振された高さ90 nmのSiナノ構造体表面近傍の近接場における光学キラリティの解析結果を示す。この解析結果から、近接場において光学キラリティは円偏光の利き手に応じて空間的に一様に符号を変え、円偏光よりもおよそ7倍増強されることが明らかとなった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 (a) FE-SEM image, (b) dark-field optical micrograph and (c) scattering spectrum of the fabricated Si nanostructure. (d) Reflection spectrum and (e) optical chirality distribution of Si nanostructure simulated by FDTD analysis. 


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献:M. L. Solomon et al., Acc. Chem. Res. 53, (2020) 588.本研究は、JSPS-科研費 学術変革領域研究(A) 公募研究「電場・磁場が協創する超螺旋光メタ空間でのキラル核形成」の助成の元行われた。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Hiromasa Niinomi, Mie-Resonant Nanophotonic-Enhancement of Asymmetry in Sodium Chlorate Chiral Crystallization, The Journal of Physical Chemistry Letters, 15, 1564-1571(2024).
    DOI: 10.1021/acs.jpclett.3c03303
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 新家寛正, 後藤和泰, 高野修綺, 田川美穂, 吉川洋史, 川村隆三, 押切友也, 中川勝 “円偏光によりMie共鳴の励振されたSiナノディスクからの塩素酸ナトリウムキラル結晶化における結晶鏡像異性体過剰” 第52回日本結晶成長学会国内会議,ウィンクあいち,令和5年12月4日~6日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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