【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22MS1062
利用課題名 / Title
金およびSiナノ粒子集合体の光学特性の解明
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
ナノ粒子,非線形発光,Mie共鳴
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
井村 考平
所属名 / Affiliation
早稲田大学院理工学術院 先進理工学部化学・生命化学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
吉岡 優作
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
石山 修
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
金属や半導体ナノ粒子は,それぞれプラズモン共鳴やMie共鳴により,光と強く相互作用し,特異な光学特性を示す。これらの粒子の集合体やハイブリット構造の光学特性は,それを構成するナノ粒子の形状やサイズに依存して大きく変化する。したがって,これらのナノ粒子の光学特性を理解するためには,粒子形状を精密に評価しつつ単一粒子レベルでの顕微分光計測が不可欠である。本研究では,ガラス基板上のナノ粒子の観測が可能な走査型電子顕微鏡を用いて,金およびSiナノ粒子の形状評価を行なった。また,その非線形光学特性評価を単一粒子レベルの顕微分光計測により行なった。Siナノ粒子の非線形発光スペクトルには,第二高調波発生とMie共鳴に起因する発光ピークが観測されることが明らかとなった。
実験 / Experimental
申請者所属機関において金およびSiナノ粒子集合体を調製し,これをガラス基板に分散させ測定試料とした。支援機関設置の低真空分析走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ SU6600)を用いて,粒子の形状評価を行なった。形状評価後の試料の光学特性を,申請者所属機関設置の暗視野光学顕微鏡と共焦点光学顕微鏡を用いて評価した。発光の励起には,連続発振レーザーとモードロックチタンサファイヤレーザーを光源として用いた。また,電磁気学シミュレーションを用いて,試料の光学特性を評価した。
結果と考察 / Results and Discussion
ガラス基板上に分散させた試料の形状を決定するため,走査型電子顕微鏡を用いて試料を観測した。金ナノロッドを試料として観測を行なった場合,ロッド形状を明瞭に可視化できる一方,形状の精密評価のため,拡大観察すると観測中にロッドが消失することがあきらかとなった。集束した電子線をロッドに照射すると,ロッドが加熱され,金が蒸発したものと推測される。金ナノロットの光学測定から,光照射によりロッドが加熱され,ロッド形状が変化することが明らかとなった。これまでの研究から,バルク固体よりも低温で形状変化が起こることがわかっており,集束した電子線をロッドに照射することでも類似の変化が起こると推定される。光励起前後の金ナノロッドの形状評価には,走査型電子顕微鏡の観測条件のさらなる検討が必要である。Siナノ粒子集合体についても電子顕微鏡を用いて形状評価を行なった。金ナノロッドほどではないが,観測中にナノ粒子が消失する場合があった。条件を整えて観測したSiナノ粒子二量体の走査電子顕微鏡像を図1(a)に示す。図から,二量体を構成するナノ粒子の直径が約210-260 nmであることがわかる。この試料の非線形発光を計測した結果を図1(b)に示す。励起波長は,約820 nmである。入射偏光は,二量体の長軸方向とそれに直交する短軸方向である。発光強度の励起光強度依存性から,発光が非線形過程を経て励起されることが明らかとなっている。発光スペクトルには,波長410 nm,520 nm,620 nmにピークが観測される。波長410 nmのピークは,第二高調波発生に帰属される。波長520 nmと620 nmのピークは,暗視野散乱スペクトルにも観測され,それぞれシリコンナノ粒子の電気四極子共鳴と電気四極子共鳴に起因するピークに帰属される。図から,入射偏光が二量体の長軸方向と平行な場合に,発光が増強することがわかる。この結果は,電磁気学計算の結果と一致する。同様の計測を複数のSiナノ粒子集合体について行なったところ,励起光強度を増大させると発光強度が低下する場合があることがわかった。この結果は,光照射により粒子の形状やギャップ距離が変化していることを示唆している。現在,光照射した際の粒子の温度評価を検討している。これにより,粒子の形状変化と発光スペエクトルの相関が明らかになると考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1.Siナノ粒子二量体の(a)走査電子顕微鏡像と(b)非線形発光スペクトル。スケールバー:200 nm。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 1.四方田真輝,長谷川誠樹,井村考平,“Siナノ粒子―Auナノラインハイブリッド構造における非線形光学特性”第83回応用物理学会秋季学術講演会,ポスター発表,2022年9月,仙台。
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件