【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.21】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23UT1217
利用課題名 / Title
マイクロ流路デバイスを用いた音響流による動的スピン流体発電の研究
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
マイクロ流路, 段差計, スピンコーター, スパッタリング, 光露光(マスクアライナ), 電子線描画(EB), プラズマエッチング, 接合・接着, ダイシング, プラズマ処理, ウェット処理、スピン流体発電,スパッタリング/ Sputtering,リソグラフィ/ Lithography,電子線リソグラフィ/ EB lithography,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,ダイシング/ Dicing,流路デバイス/ Fluidec Device,環境発電/ Energy Harvesting
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
髙橋 遼
所属名 / Affiliation
お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
荒井 麻希
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
天谷 諭
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-500:高速大面積電子線描画装置
UT-504:光リソグラフィ装置MA-6
UT-608:汎用NLDエッチング装置
UT-850:形状・膜厚・電気特性評価装置群
UT-906:ブレードダイサー
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
スピン流体発電とは、流動する液体金属の渦度分布に伴い、スピンー渦度相関を通して、伝導電子のスピン角運動量の流れ(スピン流)を誘起し、起電力として出力する現象である。本研究の主題は、この現象に対し音響振動による動的な制御性を与えることにある。目的遂行に当たり本利用課題では、実証実験を行うためのマイクロ流路デバイスの作製を実施した。高さ数µm程度の凹凸構造体(音響流の発生源)を底面に有する100×100 µm2程度の矩形流路を、PDMSと合成石英の接合により作製することを試みた。
実験 / Experimental
【利用した主な設備以外】UT-501 卓上アッシング装置、UT-506 枚葉式ZEP520自動現像装置、UT-507 スプレーコーター、UT-606 汎用平行平板RIE装置、UT-701 川崎ブランチスパッタリング装置、UT-800 クリーンドラフト潤沢超純水付、Actes AEP-3000S 小型エッチング装置.
【実施内容】合成石英基板のドライエッチングによる凹凸構造体を含む流路底面の作製、Si基板上の厚膜レジストによるPDMS成型用モールドの作製およびPDMS(流路側面・上面)の成型を実施した。
【プロセス概要】(括弧内は使用した設備ID)
① 電子ビーム露光によるフォトマスク作製。ZEP7000付フォトマスクブランクの電子ビーム露光(UT-500)、現像(UT-506)、アッシング(UT-501)、Crエッチング(AEP-3000S)を実施した。
② PDMS成型用モールドの作製。O2プラズマ洗浄(UT-606)したSi基板を、OAP処理、ベーク(110℃, 1分)し、SU-8 2100をスピンコート(UT-507)、Hard Bakeまで実施した。露光(UT-504)、現像(UT-800)などは、膜厚100 µm相当を作製する条件に則った[1]。
③ ドライエッチングによる凹凸構造体の作製。合成石英基板をウェット洗浄(UT-800; アセトン 3分, IPA 3分, 超純水 1分)した後、Crスパッタ(UT-701; 300 nm)、OAP処理、ベーク(110℃, 15分)、SU-8 3005のスピンコート・露光・現像をし、Crエッチング(UT-800)の後、Hard Bakeを実施した。膜厚5 µm相当の条件に則り作製し[2]、段差測定(UT-850)により6.0 µmの成膜が確認された。これをマスクとし合成石英のドライエッチング(UT-608; 1250秒, 1800 W, Ar 270.0 sccm, O2 10.0 sccm, C4F8 10 sccm, CHF3 10.0 sccm)を実施した。作製した構造にJSR 7790Gを保護膜(1.1 µm相当)としてコート、収縮による凹凸構造体の破損を懸念し、ベークは行わず室温で数時間置いた後、デバイスサイズにダイシング(UT-906)した。
④ PDMS成型。SYLGARD 184を主剤:硬化剤=10:1で混合、②のモールド全面に塗布し、真空脱泡(1時間)の後、80℃で硬化(2時間)させた。作製したPDMSをデバイスサイズに成型し、送液口などの加工を実施した。
以上により、合成石英を用いたデバイス底面(凹凸構造体を含む)、およびPDMSを用いた流路構造(側面・上面)が作製された。
結果と考察 / Results and Discussion
合成石英基板上に作製した凹凸構造体の顕微鏡(UT-850)像を図1に示す。凹凸構造体は流路外部からの音響振動を共振等により液体に伝搬させ、現実的な100 kHz帯の音響振動により、Rayleigh型の音響流を誘起させるという重要な役割を有する。本試作では、図1(a)にみられる3本の構造体を、流路軸方向に26列配置している。長手方向が流路軸方向である。3次元測定により、高さ9.4 µm、幅7.4 µm、長さ550 µm、構造体間隔201 µm(長手方向)、19.2 µm(短手方向)であることが測定された。凡そ設計通りであるが、幅が設計より細く作製されていた(設計値10 µm)。また、図2(b)(c)に示すように、構造体中心付近では設計通りエッジが矩形であるのに対し、構造体端では先細りし、欠けた構造になっていることが確認された。凹凸構造体作製に関して、今後更に条件出しが必要であることが示唆される。
次にPDMS成型に関して、厚膜レジストのモールド(プロセス概要②)を段差測定した結果、深さ104 µm、幅103 µmと測定され、流路として許容範囲のずれで設計通り作製されたことが確認された。
本試作では、作製した合成石英基板とPDMSを接合する計画であったが、位置合わせが困難であったため接合には至らなかった。今後、位置合わせが容易となるプロセス変更を計画しており、上記の条件出しも含めて接合まで実施し、マイクロ流路デバイスの作製を行い、本研究の主題であるスピン流体発電の音響流による動的制御性の実証実験へとつなげていく。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. 凹凸構造体の顕微鏡観察像. (a) 構造体1列分の俯瞰観察像. (b) 構造体中心付近の3次元観察像(aの白枠). (c) 構造体端の3次元観察像(aの黒枠).
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本利用課題を実施するにあたり、東京大学ARIM微細加工部門の天谷諭氏には技術相談、技術補助など多岐にわたりご尽力を賜りました。ここに深く感謝申し上げます。
【参考文献】
[1] “SU-8 2000 Permanent Epoxy Negative Photoresist PROCESSING GUIDELINES FOR: SU-8 2100 and SU-8 2150”, MicroChem Corp.
[2] “TECHNICAL DATA SHEET SU-8 3000 Permanent Negative Epoxy Photoresist”, KAYAKU Advanced Materials, Inc.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件