【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.22】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NU0052
利用課題名 / Title
先端電子顕微鏡群によるナノ材料の物性解析及び可視化
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
オペランド計測,電子顕微鏡/ Electronic microscope,電子回折/ Electron diffraction,電子分光/ Electron spectroscopy,ナノ粒子/ Nanoparticles
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
田中 展望
所属名 / Affiliation
トヨタ自動車株式会社
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
武藤俊介(名古屋大学),樋口哲夫(日本電子)
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
荒井重勇
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NU-101:反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡システム
NU-102:高分解能電子状態計測走査透過型電子顕微鏡システム
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
環境保全のため排ガス浄化触媒の高性能化は益々重要になっており,NOx浄化反応時の触媒挙動の解明による開発促進が求められている.当研究グループでは,ガス環境セルを搭載した反応科学超高圧電子顕微鏡(JEM-1000K RS : NU-101)に四重極質量分析計(QMS)を連結し,ガス環境下における物質の構造変化の高分解能とともに生成される反応ガスを同時に検知・分析するシステムを開発し,セラミクス担持金属微粒子触媒による自動車排気ガス浄化反応のオペランド計測を進めている.本研究では,QMSデータおよびマクロ測定によるキネティクス解析とTEM観察によるミクロ構造変化の解析を比較・統合することによって触媒反応機構の温度依存性を明らかにすることを試みた.またこれまでQMSによって質量数の同じガス種の分離分析が困難であった欠点を解決するため,HVEM-QMSシステムに新たにガスクロマトグラフ(GC)を搭載するシステムにアップグレードした.
実験 / Experimental
ZrO2ナノ粒子担持Rh微粒子をタングステンヒータに直接塗布するRS-HVEM試料加熱ホルダーを使用した.真空中で試料を200℃まで加熱してRh還元処理した後,Ne希釈3mol%NOガス50 Pa下でヒータを通電加熱し,約700℃まで100℃ずつ階段状に昇温した.昇温中,QMSによって導入ガス及び反応生成ガスをモニターし,同時に各温度において反応に伴うRh微粒子の構造変化を高分解能観察した.
また今回新たに開発したHVEM-QMS-GCシステムを実際に本触媒実験で稼働させ,NOガスの不完全還元によって生じると予想されているN2O(CO2と同じ質量数を持つ)の検出・実証も試みた.また事後の触媒微粒子の元素分析には、JEM-ARM200F Cold (NU-102 )を用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
図1a, bに示したQMSチャートの温度依存性から,本反応はNOガス吸着反応律速であり,微粒子表面におけるガス吸着率が減少から増加に転じる500-600℃で,図2に示すように大きく反応速度が変化することが明らかになった.またビデオ画像の解析から統計的に導出された表面酸化物層の被覆率も同様の振る舞いをし,試料全体のXAFS測定による微粒子の平均酸化率の温度依存性とも一致した.
また図3に600℃でサンプリングしたTEM内ガスのGC-QMSチャートを示す.CO2とN2Oが明瞭に分離され,NOガスの不完全還元が確かに生じていることが検証された.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1a NOガス雰囲気中Rh触媒反応におけるQMSチャート(左)と200℃におけるRh微粒子の高分解能TEM像(右).
図1b NOガス雰囲気中Rh触媒反応におけるQMSチャート(左)と600℃におけるRh微粒子の高分解能TEM像(右).
図2 図1のデータ解析によって得られた反応定数の温度依存性.
図3 今回開発したHVEM-GC-QMSシステムによる図2の温度におけるGC-QMSチャート.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究の一部はトヨタ自動車との共同研究によって実施された.
参考文献
[1] H. Tanaka et al, Applied Catalysis A, General: 626 (2021) 118334.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Longshu Tang, Development of an integrated high-voltage electron microscope–gas chromatograph–quadrupole mass spectrometer system for the operando analysis of catalytic gas reactions, Microscopy, 73, 358-366(2024).
DOI: 10.1093/jmicro/dfae010
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 唐龍樹, 前出淳志, 石川裕之, 田中展望, 荒井重勇, 樋口哲夫, 武藤 俊介, "超高圧 TEM-QMS-GC による ZrO2担持 Rh 微 粒子触媒反応機構解析",日本顕微鏡学会第79回学術講演会, June 27, 2023
- S. Muto, S. Arai, T. Higuchi, "Development of ultra-high voltage S/TEM-GC-QMS for operando observation/measurement of catalytic gas reactions", The 20th International Microscopy Congress (IMC20), Sep. 10-15, 2023.
- L. Tang, A. Maede, H. Ishikawa, H. Tanaka, S. Arai, T. Higuchi, S. Muto, "Analysis of catalytic reaction mechanism of Rh nanoparticles using e-HVTEM-QMS-GC", The 20th International Microscopy Congress (IMC20), Sep. 10-15, 2023
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件