利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.29】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT0312

利用課題名 / Title

2次元材料におけるドーピング特性評価

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions

キーワード / Keywords

質量分析/ Mass spectrometry,高品質プロセス材料/技術/ High quality process materials/technique,先端半導体(超高集積回路)/ Advanced Semiconductor (Very Large Scale Integration),原子薄膜/ Atomic thin film


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

長汐 晃輔

所属名 / Affiliation

東京大学 大学院工学系研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

田中 一樹

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

竹内美由紀

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-306:超微量元素計測システム(SIMS)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

二次元層状物質であるMoS2はバンドギャップがMoのd軌道分裂由来であるため移動度こそ高くないものの,1 nm以下の厚さにおいて移動度が激減するSiと比較して移動度を維持できることから次世代半導体チャネル材料として期待されている.P/N制御された高性能・高信頼性デバイス動作を保証するためには,ばらつきのない不純物濃度の制御が必要不可欠である.典型的な不純物の導入法として知られる化学輸送法(CVT) 成長によるNb-doped p型MoS2の均一性は,バルク結晶のようなマクロなスケール及び原子レベルのミクロなスケールでは報告されている[1]が、単層剥離したフレークに対しては議論されていない.これはppmの検出感度において,単層薄さかつ数十μm程度の試料サイズにおける一般的な計測手法の適応が困難なためである. そこで,50 nm以下の1次イオンビーム径と高感度質量分析計を組み合わせたNano Secondary Ion Mass Spectrometry (Nano SIMS 50L) の原子層材料への適応性を検討した.本研究では,単層MoS2中の不純物濃度のフレーク単位での均一性を解明することを目的とし,SiO2/Si基板上の単層及びバルクのNb-doped MoS2転写膜に対しNb不純物置換量の分散を評価・解析した.

実験 / Experimental

公称濃度0.5%及び5%のNb-doped MoS2をAu転写法[2]でSiO2/Si基板上に転写した.Au-S間のチオール結合が層間ファンデルワールス力より強いため大面積の単層を剥離しやすく,100 μm2程度の単層及びバルクが多数得られた. Nb濃度の分布評価はPhotoluminescence (PL) 及びNano SIMS測定を用い,試料全体のNb濃度平均値は典型的な高濃度試料のバルクを標準試料としてX-ray Photoelectron Spectroscopy (XPS) を用いて校正した.またNano SIMSにおいて1次イオンはNb,Moが高感度であるO-を選択した.Nano SIMS測定におけるバルク結晶の面積依存性の評価から感度下限面積が1 μm2程度であること,スパッタクレーター深さのAFM測定より1計測当たり2層からの元素情報を得ていることが確認できたことから適応可能であると判断した.

結果と考察 / Results and Discussion

0.5%Nb置換MoS2結晶から得た単層MoS2のPL測定結果を図1に示す.同一結晶から剥離転写したにも関わらず,エキシトン由来のピークと低エネルギー側のNb不純物準位由来のピーク[3]強度比に試料間の違いが表れており,フレーク毎にNb濃度がばらついていることを示唆している. Nano SIMS測定については,まず5%Nb置換のバルク標準試料に対してMoとNbの信号強度が一定となる領域の信号強度比(0.03) とXPSにより見積もったNb濃度(4.4%) の関係を用いてNb濃度の校正を行った(図2).これに基づいて単層,バルクの各フレークに対して得られたNb濃度を図3に示す.単層ではNb濃度がより高いと見込まれた低エネルギー側のピーク強度が大きいフレークほどNano SIMSにおいても高いNb濃度が得られており,PLスペクトルがNb濃度を反映していると共に,その濃度にはバルクで1.7,単層では2.8倍程のバラつきが生じていることが明らかになった.バルクと比較して単層での分散が大きいことは,不純物濃度分布が特に面外方向の層依存性を有することを示唆している.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations



その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] Suh, J. et al., Nano. Lett., 2014, 14: 6976. [2] Desai, S.B. et al., Adv. Mater., 2016, 28: 4053. [3] Suh, J. et al., Nat. Commun., 2018, 9: 199.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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