利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.27】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT0218

利用課題名 / Title

準結晶のフォノン-フェイゾン結合の実験的検出

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

アルミニウム基合金/ Aluminum-based alloys, 電子回折/ Electron diffraction, 透過型電子顕微鏡/ Transmission electron microscopy,電子顕微鏡/ Electronic microscope


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

上村 祥史

所属名 / Affiliation

東京大学 生産技術研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

押川浩之

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-007:高分解能分析電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

準結晶の構造は高次元空間の周期構造を実空間に射影した形であらわされる。この物質の弾性変形においては、通常の物質における実空間の歪(フォノン歪)に加え、高次元空間の座標軸方向の歪(フェイゾン歪)成分が存在する。実空間にフェイゾン歪と直接関連する応力場はないが、弾性論的にはフォノンとフェイゾンの結合項が存在し、実空間中に適当な弾性歪を与えることでフェイゾン歪を誘起することができる。これまでにX線回折(XRD)によりフォノンーフェイゾン結合定数の絶対値を求めることはできていた[1,2]が、その正負は明確に判断できていない。そこで本研究ではXRDより多くの情報が得られる電子線回折による結合定数評価を目的とし、東京大学マテリアル先端リサーチインフラの透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて実験を行った。

実験 / Experimental

ブリッジマン法によりAl-Ni-Co正10角形準結晶およびAl-Pd-Mn正20面体準結晶のセンチメートルサイズの単結晶を作製し、フェイゾン歪の導入に最適な方位に切り出し圧縮試験片とした。高温にて弾性圧縮することでフォノン-フェイゾン結合を通じて連続的なフェイゾン歪を導入し、急冷することでフェイゾン歪を凍結したまま試験片を回収した。この試験片を粉砕して実験試料とした。
電子線回折実験は東京大学マテリアル先端リサーチインフラ共同利用設備のTEM (JSTM-2010F)を用いて実施した。5回軸および10回軸に垂直な薄片に電子線を入射して得られた回折図形をシミュレーション計算と比較することでフォノン-フェイゾン結合定数を求めた。

結果と考察 / Results and Discussion

フェイゾン歪を導入したAl-Ni-Co正10角形準結晶の電子線回折ピークの強度分布よりスポット位置を精密に求め、無歪の場合からの移動量をプロットしてシミュレーションと比較した結果をFig.1に示す。横軸はフェイゾン運動量、縦軸はスポットの移動量である。ここでMはフォノン弾性定数とフォノン-フェイゾン結合定数を含むパラメータである。この比較により|M|≒0.02となり、結合定数の絶対値に関してはXRDとよく一致する結果が得られた。
実験で得られた回折スポットの位置をM=0の場合のシミュレーションと重ねて表示したものをFig. 2に示す。M値の正負によってスポットの移動する向きが逆転するはずであるが、スポットの移動量が非常に小さかったため正負の判別がつかなかった。これは本実験の条件では導入されたフェイゾン歪が小さく、また回折図形を得る際の誤差が排除できなかったためと考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1: 回折スポット移動量のシミュレーションとの比較



Fig. 2: 回折スポット位置の無歪状態との比較


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は大学院生の張晋嘉が中心となって計画した研究テーマの一部として実施したものである。設備利用にあたってご指導いただいた東京大学総合研究機構の押川氏に御礼申し上げる。
[1] J. Zhang, Y. Kamimura, Y. Tokumoto and K. Edagawa, "Direct experimental evidence of phonon–phason coupling in an Al-Pd-Mn icosahedral quasicrystal", Philos. Mag., 31 Mar (2022).
[2] J. Zhang, Y. Kamimura, Y. Tokumoto and K. Edagawa, "Evaluating the phonon-phason coupling strength of an Al-Ni-Co decagonal quasicrystal", J. Phys.: Conf. Ser. 2461 012005 (2023).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 張晋嘉,上村祥史,徳本有紀,枝川圭一,“電子回折による準結晶のフォノン-フェイゾン結合の評価”日本物理学会第78回年次大会(東北大学), 令和5年9月
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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