【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.13】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23UT0060
利用課題名 / Title
Snベース超伝導体/トポロジカル半金属ヘテロ接合の作製と評価
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
集束イオンビーム, 電気伝導特性, PPMS,トポロジカル量子物質/ Topological quantum matter,リソグラフィ/ Lithography,超伝導/ Superconductivity
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
石原 奎太
所属名 / Affiliation
東京大学 大学院工学系研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
佐伯崇寛
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
太田悦子,水島彩子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-607:集積回路パターン微細加工(FIB)装置
UT-304:極限環境下電磁物性計測装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
超伝導体/トポロジカルディラック半金属(TDS)ヘテロ構造は、マヨラナ束縛状 態を実現し得るトポロジカル超伝導状態のプラットフォームとして期待されている。 我々の研究室では現在3種しか報告されていないTDSの1種であるα-Snの高品質薄 膜の成長が可能である。超伝導体/TDSヘテロ構造の微細加工には複雑な加工プロ セスが必要であったり、加工中における超伝導体/TDS界面の汚染が生じるなどの 問題点があった。したがって本研究ではこれらの課題を解決する、「容易な加工手 法」かつ「きれいな超伝導体/TDS界面」を実現し得る微細加工手法の確立を目指 し、TDSのα-Snへの集束イオンビーム(FIB)の照射を行った。
実験 / Experimental
FIB照射にはGaイオンビームの衝突によるスパッタリング作用に加え、副次的効果 として局所的な加熱が生じる。α-Snは加熱により超伝導体金属であるβ-Snに相転 移するという性質があるため、この性質を利用し超伝導体/TDSヘテロ構造の作製 を目指した。InSb基板上にエピタキシャル成長したα-Sn薄膜上に加速電圧30kV、 電流値7.7pA、ビーム照射幅10nmのFIB照射を行い、照射領域の顕微鏡観察と極低 温における電気伝導特性の評価を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
結果は大きく分けて①FIB照射領域の超伝導転移およびその基本的な超伝導特性の 評価、②β-Sn領域の微細加工、③α-Sn中に埋め込まれたβ-Snナノワイヤにおけ る巨大な超伝導ダイオード効果の3つに分けられる。①FIB照射領域の超伝導転移 およびその基本的な超伝導特性の評価FIB照射領域を光学顕微鏡観察したところ、 反射率が変化し白色に変更していることが確認された。この領域を2Kまで冷却しな がら抵抗値の温度依存性を測定したところ、3.7K以下で抵抗値がゼロになり超伝導 転移することが確認された。またα-Sn領域とFIB照射領域をXPS測定したとこ ろ、Gaイオンビーム由来のGaやInSbバッファ層から拡散し得るInはほとんど存在 せず、この超伝導性はβ-Snから生じることが確認された。またSQUIDを用いてβ-Snの磁化の温度依存性を測定し、FCとZFCでM-Tカーブが一致した。この結果か らFIB照射によるβ-Snは非超伝導領域の存在しない均一な第1種超伝導体であるこ とが確認された。②β-Sn領域の微細加工FIB照射により可能な限り細いβ-Snナノ ワイヤとβ-Sn/α-Sn/β-Sn型ジョセフソン接合の加工を行った。FIB照射では熱の 拡散により、照射領域よりもβ-Sn領域が広がる傾向がある。条件出しを行い、最 小幅180nmのナノワイヤ構造と最小幅70nmのジョセフソン接合構造の加工に成功 した。これらの結果から電子線リソグラフィ技術のような手法を用いずにFIBを照 射するだけで微細な超伝導デバイスの加工が可能であることが分かった。③α-Sn 中に埋め込まれたβ-Snナノワイヤにおける巨大な超伝導ダイオード効果幅500nm のβ-Snナノワイヤ構造と平行に磁場を印加することで巨大な超伝導ダイオード効 果が生じることが確認された。近年、極低温における電子回路の素子や超伝導の基 礎研究として超伝導ダイオード効果(SDE)が多く研究されているが、先行研究に おいては電流と磁場が垂直な場合のみにSDEが観測されていたが、我々の系では電 流と磁場が平行な場合にSDEが生じた。磁場の角度依存性や断面構造の解析から、 このSDEはTDSのα-Snのカイラルアノマリーが関係していると考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Kohdai Inagaki, Allotropic transition of Dirac semimetal α-Sn to superconductor β-Sn induced by focused-ion-beam irradiation, Applied Physics Letters, 124, (2024).
DOI: http://dx.doi.org/10.1063/5.0177343
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件