【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.29】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23UT0014
利用課題名 / Title
Mg合金の構造解析
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
電子顕微鏡/ Electronic microscope,資源使用量低減技術/ Technologies for reducing resource usage,電子回折/ Electron diffraction,電子分光/ Electron spectroscopy,資源代替技術/ Resource alternative technology
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
江草 大佑
所属名 / Affiliation
東京大学 大学院工学系研究科マテリアル工学専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
雨宮 直輝,伊東 祐斗,遠藤 守琉,CHEN HAN,窪田 翔
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
森山 和彦
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-002:軽元素対応型超高分解能走査透過型電子顕微鏡(Cs-STEM)
UT-004:環境対応型超高分解能走査透過型電子顕微鏡
UT-007:高分解能分析電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
硬質/軟質層の積層からなるミルフィーユ構造を含む材料は、温間加工の適用により高強度を示すことが知られている。LPSO(Long period stacking/order)相を含むMg-Zn-Y合金はその一つであり、従来のMg合金と比べて顕著な高強度を示す[1]。LPSO相はhcp-Mgに対してZn/Yの濃化を伴うIntrinsic-Ⅱ型積層欠陥(SESF:Solute Enriched Stacking Fault)を周期的に導入した構造として理解でき、SESFが硬質層として働くと考えられている。SESFの力学的特性については、LPSO相単相材を用いたマクロな弾性挙動から硬質層としての弾性特性が推定されている[2]が、Zn/Yが希薄な系(ミルフィーユ構造Mg合金)においても同様に硬質層として機能しているかは明らかでない。本発表では同合金中転位のSTEM直接観察、第一原理計算による緩和構造との比較から、周辺環境がSESFの弾性特性に与える影響を調査した。
実験 / Experimental
Mg99.2Zn0.2Y0.6 (at.%)合金押出材(押出温度450 ℃、押出比10、押出速度2.5 mm/ s)を機械研磨およびイオンミリングにより薄片化し、電子顕微鏡観察に供した。観察には加速電圧を200kVとしたTEM(JEM-2010HC)およびSTEM(JEM-ARM200F)を用いた。また、積層欠陥及び部分転位を含むモデル構造(Mg1728原子)を構築し、VASPコードを用いて緩和構造を算出した。STEM像および緩和構造についてGPA(Geometrical Phase Analysis)を用いて[11-20]方向の垂直ひずみεxxを算出した。
結果と考察 / Results and Discussion
図(a)に [1-100]入射にて取得したHAADF-STEM像を示す。像強度の高い領域がSESFに相当し、SESF端の円で示す領域に部分転位が存在している。また、図(b)は第一原理計算による緩和構造の[1-100]投影像であり、円で示す領域に部分転位が、黄破線で示す位置に積層欠陥が存在する。図(c, d) に部分転位を中心とした円周上領域でのεxxの分布を黒点で示す。SESFを伴う場合にひずみ分布が非対称となっている。また、各分布のθ<0(像中左側)、θ>0(像中右側)に対して個別にmodified Peierls-Nabarroモデルによりフィッティングした結果をそれぞれ青線、赤線で示す。フィッティングより、いずれの像においてもθ>0の領域、すなわち積層欠陥領域が硬質であり、それぞれポアソン比として0.12、0.21と算出された(母相のポアソン比をMg単結晶の0.23と仮定)。Mg原子のみから求められる緩和構造と比較して、溶質濃化を伴うSESFにおいてポアソン比がより低く、Zn/Yの濃化が部分転位近傍のひずみの緩和挙動に影響していることが示唆される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図(a):[1-100]入射HAADF-STEM像、(b):第一原理計算による緩和構造の[1-100]投影像、(c,d):(a,b)の円周上領域における[11-20]方向の垂直ひずみεxx分布、およびθ<0(青線)とθ>0(赤線)に対するフィッティングカーブ
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
[1] Y. Kawamura, K. Hayashi, A. Inoue, T. Masumoto, Mater. Trans. 42, 1172-1176 (2001).[2] N. Tane, Y, Nagai, H. Kimizuka, K. Hagihara, Y. Kawamura, Acta Materialia, 61, 6338-6351 (2013).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Yutaka Urakawa, Anomalous Local Lattice Softening around Kink Boundaries in a Mille-Feuille Structured Dilute Mg–Zn–Y Alloy, MATERIALS TRANSACTIONS, 64, 1065-1071(2023).
DOI: 10.2320/matertrans.MT-MD2022021
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Yuto Ito, Non-Stoichiometric fcc-Base GdOx Precipitations in a Mg–Zn–Gd Alloy, MATERIALS TRANSACTIONS, 64, 2022-2025(2023).
DOI: 10.2320/matertrans.MT-M2023068
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 江草大佑、阿部英治、”ミルフィーユ型マグネシウム合金キンク変形組織における階層性解析”、軽金属学会第144回春季講演大会、令和5年5月13日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件