【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.03.01】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NU0258
利用課題名 / Title
ナノ・マイクロスケール材料や構造を用いた熱輸送・熱計測に関する研究
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
電子顕微鏡/ Electronic microscope,蒸着・成膜/ Vapor deposition/film formation,リソグラフィ/ Lithography,ナノカーボン/ Nano carbon
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
廣谷 潤
所属名 / Affiliation
京都大学大学院工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
カーボンナノチューブ(CNT)の電気伝導特性制御のために,p型およびn型の化学ドーピングによるキャリア濃度の制御は必要不可欠である.CNTそのものは500 °Cの高温でも安定である一方で,p型の化学ドーピングに用いる分子については100 °C程度までの安定なものしか存在していなかった.我々は最近,1,4,5,8,9,11ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル (HATCN)という分子が200 °Cの加熱にも耐えられる優れた温度耐性を有するp型ドーパントであることをCNT-TFTを用いて実証している(1).本研究では、高温でも安定なn型ドーパントとして水酸化カリウム (KOH)とクラウンエーテルの一種であるベンゾ-18-クラウン-6の複合塩(KOH/CE)を用いつつ,温度耐性に優れたCNTのpn接合ダイオードの作製プロセスを新たに構築することで,作製したpnダイオードの温度耐性を評価した.
実験 / Experimental
pn接合ダイオードの作製に必要な半導体CNTは、過去の我々の報告(2)を参考に水性二相抽出法によって得た.精製した半導体CNTからCNT-TFT構造のデバイスを作製するために,はじめにSiO2/Si基板をアッシングして表面を酸化させた後,ポリ-L-リジン水溶液に浸漬することで基板表面にアミノ基を修飾させた.アミノ基処理を施した基板は、半導体CNT分散液をドロップキャストすることによって半導体CNTが網目状になった薄膜を成膜した.その後,フォトリソグラフィーとリフトオフによって電極形成およびCNTパターニングを行い,CNT-TFTを作製した.図1にダイオードの作製プロセスを示す.作製したCNT-TFTは 50 mMのKOH/CEブタノール溶液をスピンコートすることでデバイス全体にn型ドーピングを施した後,大気中の酸素や水によるn型特性の劣化を防ぐため,デバイス全面をAl2O3膜で被覆した.続いて電極を含むデバイス半分のAl2O3膜をTMAOH水溶液でエッチングするとともにn型ドーパントを洗浄した後,3 mMのHATCNアセトニトリル溶液をスピンコートしてpn接合ダイオードを作製した.作製したデバイスは,HATCN溶液をスピンコートしたデバイスをすぐに測定することで加熱前のI-V特性を得た.その後200 °Cに加熱したホットプレート上でデバイスを30, 100, 300分加熱してデバイスのI-V特性を新たに測定した.なお,全ての電気測定評価はグローブボックス内の窒素雰囲気下にて行った.
結果と考察 / Results and Discussion
図2は作製したデバイスの加熱前後のIDS-VDS特性である.加熱前の特性では順方向バイアスのみで電流が流れる整流作用が確認でき,作製したデバイスが確かにダイオードとして動作していることが示された.作製したデバイスは200 °Cで加熱し続けてもその整流特性は維持されていることが分かった.加熱時間を伸ばした場合のVDS=10 Vにおける電流量推移を見ても,電気特性がほとんど変化していないことが分かる.このことから,作製したダイオードは200 °Cという高温環境にさらされても動作する優れた温度耐性を有していることが明らかになった.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 (a) pn接合ダイオードの作製プロセスの概略図 (b) 作製したデバイス構造の断面図
図2 HATCNとKOH/CEを用いてドープしたpn接合ダイオードの加熱前後のIDS-VDS特性.図中のグラフは,異なる加熱時間でのVDS = 10 V における電流量の推移.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
(1) Y. Matsunaga, J. Hirotani, and H. Omachi, “Highly temperature-tolerant p-type carbon nanotube transistor doped with 1,4,5,8,9,11- hexaazatriphenylenehexacarbonitrile”, AIP Advances 12, 045322 (2022).(2) H. Omachi, T. Komuro, K. Matsumoto, M. Nakajima, H. Watanabe, J. Hirotani, Y. Ohno, and H. Shinohara, “Aqueous two-phase extraction of semiconducting single-wall carbon nanotubes with isomaltodextrin and thin-film transistor applications”, Appl. Phys. Express 12, 097003 (2019).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 松永優希, 内山晴貴, 大町遼, 廣谷潤, “高温耐性p/n型ドーパントを用いたカーボンナノチューブ薄膜pn接合ダイオード”, 第14回マイクロ・ナノ工学シンポジウム(熊本), 令和5年11月6日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件