【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.22】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23BA0038
利用課題名 / Title
ピラミッドテクスチャSi表面に形成した超極薄AlドープSiOx膜の表面電位測定
利用した実施機関 / Support Institute
筑波大学 / Tsukuba Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
結晶Si太陽電池,太陽電池/ Solar cell
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
中島 寛記
所属名 / Affiliation
北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
岡野 彩子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究では、Si基板を硝酸アルミニウム水溶液に浸漬処理して形成した超極薄AlドープSiOx膜がSi表面に誘起するp+反転層を利用することで、低コスト・高効率のn型結晶Si太陽電池を開発する。一般に、結晶Si太陽電池の表面には光の低反射化を目的にピラミッドテクスチャ構造が形成されているが、その頂点や稜線部に局所的にホールが蓄積されることで、Siのバンド曲がりが増大している可能性がある。Siのバンド曲がりが大きいほど、Si表面のパッシベーション性能やホール選択性が向上するため、本研究の太陽電池構造においては、ピラミッドテクスチャが有効となる。そこで、本依頼では、ピラミッドテクスチャ構造を有するSi表面と、ピラミッドテクスチャ構造を有しないSi表面にそれぞれ形成した超極薄AlドープSiOx膜表面の表面電位を測定することで、Siの表面形状と表面電位との関係を調査し、Siのバンド曲がりにピラミッドテクスチャ構造が有効であるかどうかを検証する。
実験 / Experimental
1. ピラミッドテクスチャ表面の形成 (北陸先端大)
抵抗率2.5 Ωcm、厚さ280 µmの両面研磨n型Si(100)基板を80 ℃に加熱したアルカリ水溶液 (2 wt.% KOH + 0.3 wt.% TP101) に15 min浸漬することで、基板表面にサイズ < 2 µmのピラミッドテクスチャ構造を形成した。
2. 超極薄AlドープSiOx膜の形成 (北陸先端大)
RCA洗浄およびHF処理後に、試料を沸騰させたAl(NO3)3水溶液 (0.25
mol/L) に12.5 min浸漬することで、試料表面に膜厚~1
nmの超極薄AlドープSiOx膜を形成した。
3. 表面電位測定 (筑波大学)
走査プローブ顕微鏡
(Bruker社Dimension Icon) を用いて、ピラミッドテクスチャ表面を有するn-Si、両面研磨n-Si基板それぞれの表面形状 (高さ) と、それに対応した表面電位を測定した。カンチレバーには、Pt-Ir合金をコーティングしたSb高ドープSi (Bruker SCM-PIT) を用い、タッピングモードで高さ測定および表面電位測定を実施した。研磨表面では、1×1 µmの範囲で測定したが、ピラミッドテクスチャ表面の測定については、カンチレバーに損傷を与えないよう測定範囲を絞り、ピラミッドテクスチャの底部では、350×350 nm、頂点部では、100×100 nmの範囲でデータを取得した。
結果と考察 / Results and Discussion
図1(a)、(b)、(c)に研磨表面、ピラミッドテクスチャ底部、ピラミッドテクスチャ頂点部それぞれの高さマッピング像を、図1(d)、(e)、(f)に研磨表面、ピラミッドテクスチャ底部、ピラミッドテクスチャ頂点部それぞれの表面電位マッピング像を示す。研磨表面とピラミッドテクスチャ底部の表面電位の面内平均値は、それぞれ−0.72 V、−0.75 Vとほぼ同等の値であったが、ピラミッドテクスチャ頂点部では、−0.98 Vと、表面電位に顕著な減少が確認された。今回用いたプローブの仕事関数が4.86 eV [1] であり、これがSi基板の価電子帯上端 (5.15 eV) に近いことを考慮すると、大きな負の表面電位は、超極薄AlドープSiOx/n-Si界面の上方への大きなバンドベンディングを示す。つまり、より大きな負の表面電位を示したピラミッドテクスチャ頂点部では、上方へのより大きなバンドベンディングが誘起されていると考えられる。これは、ナノ形状を有するピラミッドテクスチャの頂点部では、AlドープSiOx膜中に存在する負の固定電荷に起因した空間電荷領域の圧縮効果によって、ナノ形状内のホール密度が高まった結果であると考察される。したがって、超極薄AlドープSiOx/Si界面のバンド曲がりにピラミッドテクスチャ構造が有効であることが明らかになった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 (a), (b), and (c): height mapping and (d), (e), and (f): surface potential for the planar, valley region of pyramidal texture, and tip region of pyramidal texture, respectively.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献: [1] J. J. Kopanski, M. Y. Afridi, S. Jeliazkov, W. Jiang, and T. R. Walker, “Scanning kelvin force microscopy for characterizing nanostructures in atmosphere,” AIP Conf. Proc. 931, 530 (2007).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Hiroki Nakajima, Doctoral Dissertation, "Novel Si-based Solar Cells with an Al-induced Charged Oxide Inversion Layer Formed by a Wet Chemically Grown Ultrathin Al-doped SiOx," March, 2024.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件