【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.19】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NM0087
利用課題名 / Title
2次元物質積層ヘテロ構造デバイスの研究
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
蒸着・成膜/ Vapor deposition/film formation,リソグラフィ/ Lithography,電子線リソグラフィ/ EB lithography,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,ダイシング/ Dicing,原子薄膜/ Atomic thin film,量子効果/ Quantum effect
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
Hatano Tsuyoshi
所属名 / Affiliation
日本大学 工学部
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
渡辺 英一郎
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NM-601:電子ビーム描画装置 [ELS-F125]
NM-604:マスクレス露光装置 [DL-1000/NC2P]
NM-609:電子銃型蒸着装置 [ADS-E86]
NM-610:電子銃型蒸着装置 [RDEB-1206K]
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
近年、原子1個の厚さの2次元結晶を用いた新しい電子デバイスの研究が盛んに行われている。その中でも特に、炭素原子の六員環構造を有するグラフェンは、現在の大規模集積回路の原材料であるシリコンに替わる新しい半導体材料として期待されている。また、電子間のクーロン斥力により、電流を電子1個単位で制御できる量子ドットデバイスも新しい電子デバイスとして期待されている。そのため、グラフェンを用いた量子ドットは新しい電子デバイスとして注目されている。グラフェン量子ドットにおいては、電子スピンの緩和時間が十分長いため、電子スピンを利用した量子コンピュータへの応用も期待されている。したがって本研究の目的はは、グラフェン量子ドットを実現し、その電気特性を明らかにすることである。
実験 / Experimental
グラフェンは原子の大きさ程度の厚さしか有していないため、通常SiO2上に機械的剥離法で転写される。また、SiO2には原子スケールにおいては凹凸があり、また未結合手による電気的な影響もあるため、グラフェン量子ドットを作製するためには、六方晶窒化ホウ素(hBN)でグラフェンを挟んだヘテロ構造を作製する必要がある。また、バックゲートとしては、グラファイトを用いるため、hBN/グラフェン/hBN/グラファイトヘテロ構造を作製する必要がある。このようなヘテロ構造は、通常のリソグラフィー技術で作製される電子デバイスとは異なり、グラフェンなどの転写位置を自由に制御することは不可能である。そのため、グラフェンなどの転写用基板を作製する必要がある。そのため、この転写用基板の作製を技術代行で行った。この転写用基板は、まずプラズマ洗浄装置[AQ-500]で基板表面を洗浄する。その後、基板上のマーク作製のため、マスクレス露光装置[MLA150]で描画後、電子銃型蒸着装置[ADS-E86]を用いてTi/Auを蒸着する。次に、ダイシングソー[DAD322]で20mm角にカットすることによって作製される。この作製された基板を用いて、自機関において、hBN/グラフェン/hBN/グラファイトヘテロ構造を作製した。グラフェンを用いて量子ドットデバイスを作製するためには、グラフェンを2層構造にする必要がある。そのため、我々はラマン分光で測定を行った。ラマン測定において測定された2Dピークに対して、フィッティングを行った。グラフェンが2層であることを確認後、この2層グラフェン及び機械的剥離法を用いて作製したhBN及びグラファイトを用いて、hBN/グラフェン/hBN/グラファイトヘテロ構造を作製した。次にこのヘテロ構造を用いて、NIMS岩崎拓哉博士と共同で、量子細線構造を作製した。この作製には、まず電子ビーム描画装置[ELS-F125]及びエッチング装置[RIE-200NL]を用いて上部hBNにコンタクトホールを作製した。その後、電子銃型蒸着装置を用いてCr/Auを蒸着した。その後、ボンディングパッドを電子線描画装置と電子銃型蒸着装置を用いて作製した。最後に、電子線描画装置と電子銃型蒸着装置を用いてトップゲートを作製した。
結果と考察 / Results and Discussion
我々は転写したグラフェンのラマン分光測定を行い、ラマン測定において測定された2Dピークに対して、フィッティングを行った。その結果を図1に示す。図より、2Dピークが4つのローレンツビークでフィッティングできることから、グラフェンが2層であることを確認した。この2層グラフェン及び機械的剥離法を用いて作製したhBN及びグラファイトを用いて、図2のようなhBN/グラフェン/hBN/グラファイトヘテロ構造を作製した[1]。赤線、黒線、青線、橙線で囲まれた領域がそれぞれ上部hBN、2層グラフェン、下部hBN、グラファイトを示している。したがって、黒で囲まれた領域でhBN/グラフェン/hBN/グラファイトヘテロ構造が実現している。このhBN/グラフェン/hBN/グラファイトヘテロ構造を使って、スプリットゲートによるグラフェン量子細線を作製した。その光学顕微鏡写真を図3に示す。図のように、スプリットゲートが形成され、量子細線が実現していることがわかる。今後、この量子細線の電気伝導特性を測定し、量子細線が電気的に実現しているかどうかを確認する予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 グラフェンのラマン分光スペクトル
図2 hBN/2層グラフェン/hBN/グラファイトヘテロ構造の光学顕微鏡写真。赤線、黒線、青線、橙線で囲まれた領域がそれぞれ上部hBN、2層グラフェン、下部hBN、グラファイトを示している。
図3 スプリットゲート作製後の光学顕微鏡写真。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
[1] T. Iwasaki, et al.,
ACS Appl. Mater. Interfaces 12, 8533(2020).
謝辞本研究を行うため、ご協力いただいた物質・材料研究機構の岩崎拓哉博士、渡邊賢司博士、谷口尚博士に感謝いたします。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 福井 雄大, 山内 皓太, 岩﨑 拓哉, 渡邊 賢司, 谷口尚, 羽田野剛司, hBN/グラフェン /hBN ヘテロ構造量子ドットの作製, 第66回日本大学工学部学術研究報告会(福島), 令和5年12月2日
- 山内 皓太, 福井 雄大, 岩﨑 拓哉, 渡邊 賢司, 谷口尚, 池本 大輝, 津島 弘季, 沼田 靖, 羽田野剛司, グラフェン量子ドット作製に向けた作製技術, 第66回日本大学工学部学術研究報告会(福島) 令和5年12月2日
- 福井 雄大, 山内 皓太, 岩﨑 拓哉, 渡邊 賢司, 谷口尚, 羽田野剛司, hBN/2層グラフェン /hBN ヘテロ構造量子ドットの作製, 第78回応用物理学会東北支部学術講演会(宮城), 令和5年12月6日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件