【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.07】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NM5065
利用課題名 / Title
固体イオニクスに基づく新材料・新機能の創製
利用した実施機関 / Support Institute
物質・材料研究機構 / NIMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies
キーワード / Keywords
イオニクス, AI, ニューラルネットワーク
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
鶴岡 徹
所属名 / Affiliation
物質・材料研究機構
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
MALLIK Samapika,MOHANTY Himadri Nandan,西室 碩人,PRADHAN Itishree,DEB Rajesh
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
大井暁彦,安福秀幸,池田直樹,添谷進,浦野絵里,簑原郁乃,藤井美智子,澤部由美子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NM-643:電子銃型蒸着装置 [UEP-3000BS]
NM-636:マスクレス露光装置 [DL-1000]
NM-635:電子ビーム描画装置 [ELS-BODEN100]
NM-202:硬X線光電子分光分析装置(HAX-PES/XPS)
NM-649:FE-SEM+EDX [SU8230]
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
固体内のイオン移動と電気化学反応により、人工知能(AI)機能をハードウェアで実現しようとするのが本研究の目的である。そのために、生物のシナプスの振る舞いを模倣する2端子素子や3端子素子(トランジスタ)を開発する。
実験 / Experimental
マスクレス露光装置と多連電子ビーム蒸着装置を用いて、2端子・3端子素子の電極を形成した。また、プロトン伝導体のナフィオンスピンコート膜に、電子線描画装置を用いて直接パターンニングする手法を開発した。
結果と考察 / Results and Discussion
マスクレス露光装置と電子線描画装置を組み合わせて、プロトン移動型シナプストランジスタを作製した(図1)。ゲート電極に電圧パルス列を印加すると、酸化インジウムガリウム(IZO)チャネルの電流(コンダクタンス)がシナプスの長期可塑性の振る舞いを再現することを見出した。得られた長期増強・抑制(LTP/LTD)特性とニューラルネットワーク(NN)モデルを用いて計算した手書き文字画像の識別精度は84%であった。本トランジスタはシナプスの短期可塑性であるペアパルス増強・抑制(PPF/PPD)とスパイクタイミング依存可塑性(STDP)も再現した。また、このトランジスタで構成したアレイの各ゲートに文字画像に対応する電圧パルスを入力すると、パルス条件に応じて入力画像情報がアレイ内に記憶されることを実証した。Liイオン移動型トランジスタのコバルト酸リチウムチャネルにMgをドープすると、シナプス特性が向上することを見出した(図2)。NNモデルによる手書き文字画像の識別精度はノンドープチャネルで65%に対して、Mgドープチャネルは79%に向上した。この結果は、イオン移動型トランジスタのシナプス特性はドーピングなどの構成材料の改質により大幅に向上できることを示唆する。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 (a)プロトン移動型トランジスタの作製工程. (b)作製したトランジスタの光学顕微鏡像. (c)トランジスタ断面図と計測方法. (d)生物のシナプスの対応図. (e)チャネルの出力曲線と(f)ゲート電圧印加時のトランスファー曲線.
図2 (a)Liイオン移動型トランジスタのLTP/LTD特性と(b)チャネルへのMgドーピングによるチャネルコンダクタンスの線形性の向上. (c)手書き文字画像の識別精度計算に用いたNNモデル. (d)ノンドープチャネルと(e)ドープチャネルのLiイオン移動型トランジスタによる文字画像識別精度の計算結果.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究を遂行するに当たって支援頂きました微細加工ユニットの大井さん、池田さん、表面・バルク分析ユニットの安福さんをはじめとする多くの技術スタッフに感謝します。【参考文献】10.1002/anie.202217203
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Himadri Nandan Mohanty, Proton-Gated Synaptic Transistors, Based on an Electron-Beam Patterned Nafion Electrolyte, ACS Applied Materials & Interfaces, 15, 19279-19289(2023).
DOI: 10.1021/acsami.3c00756
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Samapika Mallik, Effects of Mg Doping to a LiCoO2 Channel on the Synaptic Plasticity of Li Ion-Gated Transistors, ACS Applied Materials & Interfaces, 15, 47184-47195(2023).
DOI: 10.1021/acsami.3c07833
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 鶴岡徹、寺部一弥、”イオン伝導体超薄膜の開発とイオニクス神経情報処理素子の創製”、第85回固体イオニクス研究会、令和5年7月21日
- MALLIK Samapika, TSURUOKA Tohru, TSUCHIYA Takashi, TERABE Kazuya, “Effect of Mg doping on the synaptic behavior of Li ion-gated transistor for neuromorphic computing”, SSDM2023, 2023.9.8
- MOHANTY Himadri Nandan, TSURUOKA Tohru, MOHANTY Jyoti Ranjan, TERABE Kazuya, “Proton-dated synaptic transistors, based on an EBL patterned Nafion electrolyte”, MEMRISYS2023, 2023.11.6
- MALLIK Samapika, TSURUOKA Tohru, MOHANTY Himadri Nandan, TERABE Kazuya, “Lateral inhibition for edge enhancement in signal processing, emulated by a proton-based multi-channel device”, MNC2023, 2023.12.17
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件