【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.28】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23HK0147
利用課題名 / Title
組織再生バリアフィルムの開発
利用した実施機関 / Support Institute
北海道大学 / Hokkaido Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
ポリ乳酸, アルカリ処理, ハイドロキシアパタイト, 骨再生, 足場材,電子分光/ Electron spectroscopy,細胞・組織再生誘導材料/ Materials for inducing cell and tissue regeneration
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
布施 恵
所属名 / Affiliation
日本大学 松戸歯学部教養学化学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
楠瀬隆生,小倉昭弘
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
鈴木啓太,吉田すずか,遠堂敬史
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ポリ乳酸(PLA),ポリグリコール酸(PGA),乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA)は,生分解性,生体適合性,機械的特性などの点で優れ,環境分野や組織工学の分野においても注目されている。歯科領域においてもこれらの脂肪族ポリエステルが,誘導組織再生や膜の誘導骨再生のための生分解性材料として広く使用されている。これらの材料は、歯周治療,インプラント治療,一時的な止血に重要な役割を果たしている。しかし,PLAを生体材料として応用するには,疎水性であり,不活性であるため,細胞の接着や足場と組織の相互作用を阻害してしまう。PLAのこのような短所を克服するため,プラズマスパッタリング,エッチング,機能性分子の物理的封入などの表面処理がされてきた。その中でも化学的な方法としてアルカリ処理は効果的で簡単な戦略の1つである。本研究では,生分解性ポリマーであるPLAに生理活性能を付与するため,水酸化カリウムによるアルカリ処理がPLA表面への改質の効果を検討する。 KOH 処理によりPLAフィルム表面にカルボキシ基を導入した。擬似体液(HBSS)中でのフィルム上へのアパタイトの形成能およびリン酸塩緩衝液(PBS)中でのフィルムの分解挙動について検討した。また,カルボキシ基を導入後の細胞接着タンパク質であるコラーゲン(Coll)の固定化について検討した。
実験 / Experimental
ポリ-L-乳酸(Purasorb®)の5 w%クロロホルム溶液を調整した。この溶液をスライドガラス上にキャストしてPLAフィルムを作製した。カルボキシ基の導入の方法は,PLAフィルムを0.5M KOH水溶液に1時間浸漬し,導入した(PLA-KOH)。カルボキシ基の導入は,X 線光電子分光分析 (XPS) によって測定した。その後,PLA-KOHをHBSSに浸漬後,走査電子顕微鏡(SEM)によりフィルム上へのアパタイトの形成挙動について検討した。アパタイトの解析は,X 線回折(XRD)により測定した。また,PLA-KOHをPBSに浸漬し,分解の程度を調べた。タンパク固定化の方法は,PLA-KOHを水溶性脱水縮合剤含有MESバッファーに24時間浸漬した。その後,0.05 wt% Coll含有MESバッファーに48時間浸漬して,PLAフィルム表面にCollを固定化した(PLA-KOH-Coll)。固定化の確認は接触角測定とX 線香電子分光(XPS)測定にて行なった。
結果と考察 / Results and Discussion
PLA, PLA-KOH, PLA-KOH-Coll表面に対する純水の接触角は,PLAに比較して, PLA-KOH, PLA-KOH-Collにおいて有意に低下していた(p < 0.05)(Table 1)。XPS によりフィルム上にカルボキシ基の導入を確認できた(Fig.1)。PBS浸漬実験では,浸漬91 日で,PLA-KOH はPLA より重量が低下した(p < 0.05) (Fig.2)。HBSSに浸漬したPLAとPLA-KOHでは,PLA-KOH は,浸漬1日では,すでに表面に多数の球状物が観察されたが,PLAではほとんど見られなかった。XRDによるPLAと PLA-KOHのハイドロキシアパタイト形成の分析は,PLAと PLA-KOHはともに,ハイドロキシアパタイトの主要なピークである002,210,112,211を確認した(Fig.3)。XPS測定では,窒素元素が観察され,Collの固定化が確認できた。KOHによるアルカリ処理はカルボキシ基を導入できる簡便な方法であり,PLA-KOHは顎骨再生の新規生体材料の候補として有用である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig1. Schematic of Hydrolysis on PLA films surface
Table 1. displays the contact angles of the PLA films before and KOH hydrolysis in relation to double-distilled water
Fig.2 Ilusrates the apparent water absorption of the PLA and PLA・KOH films in PBS
Fig.3 captured by SEM depict images of the surfaces of the PLA-KOH films after immersion in Hank's Balanced Salt Solution (HBSS), for duration of 1, 3, 7, 14, 21 and 28 days. Bar = 50 μm
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
技術専門職員 鈴木啓太氏にX線光電子分光装置 JPS-9200の技術代行を頂きまして進めることができました,感謝いたします。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Megumi Fuse, Effects of Adhesive or Non-adhesive Protein-immobilized Bioactive(Lactic Acid-ε-caprolactone)Films on Mouse Osteoblast-like Cells, International Journal of Oral-Medical Sciences, 22, 1-10(2023).
DOI: 10.5466/ijoms.22.1
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Kazunaka Endo, Interactions b/w Collagen and Polylactic-Acid Molecular Models Due to DFT Calculations, Journal of Biomedical Research & Environmental Sciences, 3, 537-546(2022).
DOI: 10.37871/jbres1476
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件