【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.02】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23HK0115
利用課題名 / Title
中性水溶液中で活性な複合酸化物酸素発生触媒の反応時における構造・組成変化の追跡
利用した実施機関 / Support Institute
北海道大学 / Hokkaido Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
複合酸化物, 酸素発生反応, アノード触媒,電子顕微鏡/ Electronic microscope,電子分光/ Electron spectroscopy,ナノ粒子/ Nanoparticles
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
辻 悦司
所属名 / Affiliation
鳥取大学工学部化学バイオ系学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
大多 亮
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
中性水溶液中での酸素発生反応は二酸化炭素の電解還元や環境負荷の小さいグリーン水素生成の対反応であり、優れた電極触媒の開発が求められている。現状、安価で資源が豊富な遷移金属から成る酸素発生触媒は中性域で不安定であり、そのほとんどが数時間程度で失活する。一方、申請者らは最近、酸化コバルトに対して、コバルトの一部を鉄に置換すると活性はほぼ維持したまま、耐久性が飛躍的に向上することを見出した。そこで本研究では、この要因を明らかにすることを目指し、さまざまな鉄/コバルト比の複合酸化物について各反応時間での結晶構造および化学組成を評価した。いずれの鉄/コバルト比においても反応前後で結晶構造は変化しなかった。一方、耐久性が高かった試料では、粒子表面に鉄が濃縮している層が形成されていることがわかった。
実験 / Experimental
既報1を参考に、液相ゲル化法でスピネル型FexCo3-xO4(0 ≤ x ≤ 2)を合成、450 ℃焼成、酸処理アセチレンブラック、中和5% Nafion分散液とともにエタノールに分散させたものをカーボンシート電極に塗布しアノードとした(触媒量:0.2 mg cm-2)。Pt板を対極、Ag/AgCl/KCl (satd.)を参照電極として、三電極式セルでサイクリックボルタンメトリー(CV)および1.9 V vs. RHEでの定電圧測定を行った。電解液には0.6 M Na2SO4 aq.と0.4 M NaH2PO4 aq.を混合しNaOHをpHが7になるまで添加したものを用いた。反応前後の電極上の触媒を剥がし、HR-TEMおよびEDSで分析した。
結果と考察 / Results and Discussion
XRDより、0 ≤ x ≤ 2のすべての試料はスピネル型FexCo3-xO4の単相であった。Fe量に対して面間隔は直線的に増加したことから、Feがすべて骨格内のCoを置換したと推測される。SEMより、粒子径は10 ~ 30 nm程度であった。電気化学測定より、初期活性はx ≤ 1で高く、x > 1で低下したことがわかる。定電圧でx = 0、2は200 C cm-2までに電流密度が大きく低下し、失活した。0.5 ≤ x ≤ 1.5では600 C cm-2以上通電しても初期活性をほぼ維持し、x = 1では1000 C cm-2通電しても初期の50%以上の電流密度を示した。以上より、x = 1で高活性・高耐久性を示すことがわかった。失活した試料も活性を維持した試料も、24 h定電圧測定前後のXRD、SEM、XPSを比べるとバルクの結晶構造や粒子形態、表面のCo価数に大きな変化はなかった。またHR-TEMより、いずれの試料も反応後に表面のアモルファス化は起こっておらず結晶構造は維持されていた。一方、STEM-EDSより各粒子の化学組成を分析すると、活性を維持した試料では表面に鉄の濃縮層が形成(一例としてFig. 1にx = 1の反応前のSTEM-EDS像を示す)しており、これにより耐久性が向上したと推察される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 STEM-EDS mapping image of x = 1 before reaction.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献(1) H. Okada et al., Sustain. Energy Fuels.,
6, 2709 (2022).
謝辞本研究の一部は、科研費(22H02169)、(公財)JKA補助事業(2023M-416)、触媒化学計測共同研究拠点共同利用・共同研究(20DS0350)および鳥取大学国際乾燥地研究教育機構プロジェクトの助成を受けておこなった。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 品川雄紀、岡田拓之、辻悦司、菅沼学史、片田直伸、 中性での水電解に活性なスピネル型酸化コバルトアノードの鉄置換による耐久性向上と失活挙動の解析、2023電気化学秋季大会、G1G2_1_12、九州大学、2023年9月
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件