【公開日:2025.03.14】【最終更新日:2025.03.13】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23HK0104
利用課題名 / Title
グラフェン溶液セルの高効率な作製手法の開発
利用した実施機関 / Support Institute
北海道大学 / Hokkaido Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
ナノシート、ナノリボン/ Nanosheets and nanoribbons, 薄膜/ Thin films, ナノ結晶・相分離系材料/ Nanocrystals and Phase separated materials, 表面・界面/ Surface and Interface,電子顕微鏡/ Electronic microscope,ALD,電子分光/ Electron spectroscopy,原子層薄膜/ Atomic layer thin film,ナノシート/ Nanosheet
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
山﨑 智也
所属名 / Affiliation
北海道大学 低温科学研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
屋嶋悠河
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
佐々木仁,浮田桂子,山﨑郁乃
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
HK-616:原子層堆積装置
HK-626:光学干渉式膜厚計
HK-406:X線光電子分光装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
グラフェンは単原子レベルの厚みしかない薄膜にも関わらず機械的強度が非常に高い素材である。この特性を活かし、2枚のグラフェン間に溶液を挟み込んで、溶液と高真空環境と隔離した状態で保持する溶液セル(グラフェンセル)が開発され、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy, TEM)で溶液の観察ができるようになった。グラフェンセルは、溶液の厚みを非常に薄くすることができるため、TEMによる高い空間分解能での観察に期待できる。一方、グラフェンセルに内包された溶液から水が抜けていることが指摘されており[Crook et al., JACS 145,6648, 2023]、信頼性と再現性の高いグラフェンセルの作製方法が確立されていない。本研究では、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition, ALD)や薄膜の評価が行える支援機関の装置を利用し、グラフェンに生成している欠陥に酸化物を優先的に堆積させることで、グラフェンの欠陥を塞ぎ、高効率なグラフェンセルの作製方法について検討する。
実験 / Experimental
銅薄膜上に成長させたグラフェンを試料として用いた。試料に原子層堆積装置(Picosun/SUNALE-R, AP-200010)を用いて、グラフェンに酸化物を堆積させた。堆積させた酸化物は、アルミナ、チタニア、ハフニアである。堆積後の試料は、光学干渉式膜厚計(フィルメトリクス/F20-UV, AP-200077)、X線光電子分光装置(X-ray Photoelectron Spectroscope, XPS, 日本電子/JPS-9200XPS,AP-100238)、TEM(日本電子/JEM-2100F, 低温科学研究所木村研究室所持)で分析した。
結果と考察 / Results and Discussion
アルミナとチタニアの堆積はそれぞれ200, 40サイクルで行った。ALDでグラフェンにアルミナを堆積させたもののTEMで観察すると、アルミナの粒子がグラフェン上に堆積しており、その分布が不均質であることが分かった。これは、グラフェンの欠陥に優先的にアルミナが堆積していることを示唆している。一方、ALDでグラフェンに40サイクルでチタニアを堆積させたものは、TEMによる分析ではチタニアを検出することができなかった。これはサイクル数が少なかったために有効な堆積が行われなかったことが推測される。ハフニアを用いたALDは、40、200、815サイクルで堆積を行った。40サイクルでは、TEMによる分析ではハフニアを検出することができなかった。一方、200、815サイクルでは、TEM、およびXPSによる分析でハフニウム、および、酸素のシグナルを検出することができた。フィルメトリクスによる測定では、815サイクルでの膜厚は82 nmであった。グラフェンセルで用いる酸化物を堆積させたグラフェンは、欠陥の存在する箇所にのみ、酸化物を堆積させることが理想である。40サイクルでは、ハフニアを検出することができなかったが、200サイクルでは、グラフェン全体にハフニアが成膜されているように観察された。また、ハフニアを堆積させたグラフェンを用いてグラフェンセルを作製したところ、薄膜に亀裂が入った様子が観察された。これは成膜されたハフニアがグラフェンセルを作製するには厚すぎたためと考えられる。ハフニアの最適な堆積量を実現できるサイクル数(40~200サイクルの間)を導き出すことで、グラフェンの欠陥が塞がれたグラフェンを作製することが出来るであろう。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本課題の遂行にあたり、ナノテク連携推進室の佐々木仁氏にはALD装置の使用講習をはじめ、装置の操作、実験の条件の検討など多岐にわたりご支援をいただきました。浮田桂子氏にはクリーンルームの使用に関する講習をしていただきました。山﨑郁乃氏には、XPS装置の使用講習をしていただきました。深く感謝申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 屋嶋悠河, 山﨑智也, 木村勇気, 日本顕微鏡学会第79回学術講演会(島根), 令和5年6月26日
- Y. Yashima, T. Yamazaki, Y. Kimura, IAMNano 2023 (Shimane), June 28, 2023.
- 屋嶋悠河, 山﨑智也, 木村勇気, 第52回結晶成長国内会議(愛知), 令和5年12月5日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件