利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.01】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23HK0098

利用課題名 / Title

グラフェンナノサポートを利用した原子、分子の制御と計測

利用した実施機関 / Support Institute

北海道大学 / Hokkaido Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/ Electronic microscope,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,原子薄膜/ Atomic thin film,原子層薄膜/ Atomic layer thin film,ナノカーボン/ Nano carbon,ナノ粒子/ Nanoparticles


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

山崎 憲慈

所属名 / Affiliation

北海道大学大学院 工学研究院 応用物理学部門 ナノバイオ工学研究室

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

許 辰,吉岡智照

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

平井直美,森有子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

HK-401:収差補正走査型透過電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

孤立した金属単原子の分散体は“単原子触媒”として次世代の触媒材料として注目が集まっている。申請者はこれまでにプラズマスパッタリングによるグラフェン表面への白金(Pt)単原子の分散手法を報告している。さらに、スパッタリング中に窒素を添加することで、単原子の形成率が向上することを報告しており、大気雰囲気でのスパッタリング結果では直径2nm程度のPtナノ粒子が多く観察されたが、窒素雰囲気でのスパッタリングは大気雰囲気と比べ、スパッタ量は同じ程度であるが、スパッタされたPtの凝集が抑制され、より小さいクラスターと単原子が多く形成されることが分かった。スパッタリングにより、ターゲットから飛び出したPt単原子基板上に到達し、残った運動エネルギーにより基板表面に並進運動する。スパッタリングという実験手法では基板上のどこにPtが到達するのかはランダムと考えられ、スパッタリング量が同程度であればグラフェン表面への到達時点でPt同士が互いに凝集する確率は同程度であることが予測される。それにも関わらず大気中と窒素中のスパッタリングを比較して凝集のしやすさに差があるということは基板上にPt単原子が到達した後の振る舞いに差があるということが考えられる。本研究ではグラフェン上にドーピングされた窒素によるPt単原子の並進運動の抑制効果を明らかにすることが本研究の目的である。

実験 / Experimental

本研究室で独自に装置開発を行ったCVD装置を用いて銅箔上にグラフェンを成長させた。プラズマスパッタされたPt単原子をSTEMで観察し、連続して取得した画像を用いてグラフェン上に分散されたPt単原子が大気と窒素の両雰囲気の場合の移動距離を計算した。

結果と考察 / Results and Discussion

STEM(ARM200F)を用いて、大気、窒素雰囲気でグラフェン転写TEMグリッド表面上に3 sスパッタされたPtを観測した結果を示す。STEM観察の倍率20 M倍であり、各ピクセルの電子線照射時間は10 μs/pixelであり、画像のサイズは512 x 512 pixel2である。図1にSTEM観察中に取得した連続画像の1枚を示すが、観測開始から終了まで単原子状態を保ったものが8個あったので、その全ての単原子を追跡し、各フレーム間の移動距離をドリフト補正後の画像を使って算出した。図2に移動距離のデータを集めた結果を示す。横軸をPt単原子の位置の最大誤差である±0.3 Åを考慮し、0.6 Å刻みとし、移動距離の値を示し、縦軸は全体に対する割合である。0~1.8 Åの移動距離の区間において、窒素と大気両雰囲気スパッタリングの割合はそれぞれ86.6%及び56.9%である。両雰囲気スパッタリングにおいて、0~0.6 Åの移動距離区間での割合が最も高いことがわかった。また、0~0.6 Å及び0.7~1.2 Åの最も小さい二つの移動距離区間では窒素雰囲気スパッタリングの方が割合は高く、それ以降は逆転した。したがって、窒素雰囲気でスパッタされたPt単原子の移動距離の方が小さく、運動しにくいことがわかった。さらに、大気雰囲気と窒素雰囲気3 s及び1 sスパッタリングでのPt単原子の移動距離を比較した。大気雰囲気の方が長い移動距離の区間における割合が高いほか、ドーピングされたNの増加により、Pt単原子の運動はより妨げられることがわかった。しかし、Nによる影響の定量化とその役割を明らかにするには更なる研究及びスパッタリング時間の比較が必要である。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1. 窒素雰囲気においてスパッタされたPt単原子のSTEM像



図2. STEM観察において連続的に取得した実像(7秒間隔)を解析し得られたフレーム間のPt単原子移動距離


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 松下圭汰、内田努、山崎憲慈 ”収差補正STEM観察によるPt単原子の凝集、結晶化過程の解析” 令和5年度 日本顕微鏡学会 北海道支部学術講演会、北海道大学
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る