利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT1105

利用課題名 / Title

高抵抗Siウエハを用いたテラヘルツバンドフィルタの作製

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者)/Internal Use (by ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

光デバイス/ Optical Device,蒸着・成膜/ Vapor deposition/film formation,光学顕微鏡/ Optical microscope,リソグラフィ/ Lithography,膜加工・エッチング/ Film processing/etching,光リソグラフィ/ Photolithgraphy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

中村 祥子

所属名 / Affiliation

九州大学理学研究院物理学部門

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

水島彩子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-505:レーザー直接描画装置 DWL66+2018
UT-604:高速シリコン深掘りエッチング装置
UT-700:4インチ高真空EB蒸着装置
UT-800:クリーンドラフト潤沢超純水付
UT-850:形状・膜厚・電気特性評価装置群


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

狭帯域テラヘルツ波パルスを用いた物性研究において、特定のモードを選択的に励起・検出したり、モード間の相互作用を調べたりするには、パルスの中心周波数とバンド幅(パルスの長さ)を、研究対象の物質や光学応答に合わせて自在に制御することが必要である。近年、高抵抗シリコンウエハの表面を微細加工すると、高効率で制御性の高いテラヘルツバンドパスフィルタが作製でき、かつ、その特性は数値計算で予測できることが報告された[1]。そこで、論文で報告されていた構造を模したバンドパスフィルタを実際に作製し、その光学特性を評価した。さらに、加工後の構造を計測し、パラメータを用いた数値計算と比較することで、設計時の光学特性と実際の光学特性の乖離を説明できることを確認した。

実験 / Experimental

(1) 2インチシリコンウエハ表面にレジスト(HMDS, ZPN1150)を塗布し、プリベイク(90℃、60 s)
(2) レーザー直接描画装置(DWL66+)を用いてパターンを光露光し、反転ベイク(110℃、60 s)
(3) 現像(NMD-W, 60 s)してポストベイク(110℃、5 min)
(4) 酸化膜付き4インチシリコンウエハにグリスで固定し、高速シリコン深掘りエッチング装置(MUC-21 ASE-Pegasus)を用いてボッシュプロセスでエッチングを行い、酸素プラズマでレジストを除去
(5) ヘキサンを用いてグリスを洗浄し、アセトン、エタノールでリンス
(6) 表面にレジスト(AZP4620)を塗布してベイクした後、裏返して、(1)から(5)を繰り返す
(7) 残存したレジストをピラニアで除去
(8) 4インチシリコンウエハにカプトンテープで貼り付け、4インチ高真空EB蒸着装置(NSP II)でTi(10 nm)/Au(200 nm)を片面ずつ蒸着
(9) レーザー顕微鏡で構造観察
(1)~(9)によって作製した素子を所属機関に持ち帰り、テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)を用いて評価して数値計算と比較した。

結果と考察 / Results and Discussion

作製した素子に広帯域のテラヘルツ波パルスを透過させると、透過波は図1に示したようなマルチサイクルパルスとなり、インセットに示したように、バンドパスフィルタとしての透過特性を示した。バンド幅や透過率はおおむね期待どおりだったが、一方、中心周波数は設計周波数より10~20%ほど高く、2つの素子間でも差があった。そのため、黒線で示したように、2枚を重ねたときの透過率は期待より下がってしまった。
レーザー顕微鏡によって構造を評価すると、(1) 柱の直径が設計より3~8%小さい 、(2) エッチング深さが0.3 µm程度ばらついた、(3) 柱の周りが完全に平坦ではない、(4) 表面に黒っぽい汚れが付いていることがわかった。そこで、(1)を反映させた数値計算を行うと、中心周波数のズレがほぼ完全に説明できることがわかった。これは、(2)~(4)の影響は、テラヘルツ特性においては、あまり気にしなくてよいことも示唆している。
設計より柱が細くなってしまったのは、使用したZPN1150が、図2に示すように、反転ベイクによって逆テーパーを形成するリフトオフ用レジストであることが原因と考えられる。逆テーパーの程度は反転ベイクの条件に大きく依存するため、ばらつきも大きかったと考えられる。この問題は、描画ファイルの露光部分を反転させてポジレジスト(JSR 7790G)を用いるか、反転ベイク時の温度を、例えば120℃に上昇させテーパーを減少させることで回避できると期待される。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 Siウエハと、設計周波数0.8 THzの素子1,素子2,2素子を重ねたものを通過したテラヘルツ波の波形と透過特性(インセット)。



図2 リフトオフ用レジストを用いたボッシュプロセスによるエッチングの概念図。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] C.-C. Chang, L. Huang, J. Nogan, and H.-T. Chen, APL Photonics 3, 051602 (2018).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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